朝日新聞という病。植村隆×山田厚史×本多勝一

 昨日(2015年1月9日)の植村隆 元朝日新聞記者の記者会見を、ニコ生で怒りに震えつつ見ていました。怒りとは「卑怯」。昭和時代の日本人がもっとも侮蔑した生き様ですが今は昔なのでしょうか。

 法廷闘争に持ち込み、さらに170人の弁護団という数を頼りとして宣戦を布告するその手口を「卑怯」という以外の表現を私は持ちません。

 捏造していないという主張が真実であるなら、自らの筆を持って証明できること。なぜか? 小学生を叱ることを思えば簡単なこと。

「記述漏れがありました。誤解を生む表現しました。そしてそれを続けました。また、訂正もしませんでした」

 間違えたら謝ること。気がついたときに訂正すること。小学生レベルの話しです。 

 あるいは、訂正を阻んだ何かが、朝日新聞社内にあったのならそう正直に語れば「結果的な捏造」の事実は残るものの、「故意としての捏造」の疑いは晴れ、記者としての資質と経歴は地に落ちても、少なくとも人格攻撃は相当程度収まることでしょう。あるいは

「言論機関としての朝日新聞の構造的問題」

 を告発したのなら、池上彰コラムの掲載拒否に声を上げた現役記者、すなわち後輩記者の援護射撃となったことでしょうにと、これは夢想。その理由が本稿のテーマ。

 立場の強い政府や大企業が、法廷闘争に持ち込み、あるいはそれを匂わせ、対立する相手を萎縮させ、言論を封じることを「スラップ訴訟」と呼びます。言論機関が言論を持って対峙せずとは、昨年の朝日新聞が、これまた「捏造級」の「吉田調書」報道に異議を表明した作家の門田隆将氏に対して、

“(朝日新聞は)「謝罪と訂正記事の掲載」を要求し、それをしない場合は、「法的措置を検討する」という脅しの抗議書を送ってきた。

門田隆将オフィシャルサイトより(括弧内筆者)
http://www.kadotaryusho.com/blog/

 と、植村隆氏の「手口」は、まさしく朝日新聞と同じです。

 個人の植村隆氏は強者ではないとは詭弁。170人の弁護団を背にして挑む法廷闘争です。雑な参考数値ですが、初回の法律相談は30分5000円(税別)で計算すれば、弁護団が一斉に動いた刹那、時間当たりの経費は170万円。仮に8時間労働とすれば日給1360万円。月20日稼働で2億7200万円が必要で、弁護団が無給の手弁当としても、月額数億円規模の弁護士費用相当を背景に戦えるということです。ゆえに「スラップ訴訟」なのです。

 余談ながら、こうした裁判に参加する弁護士が170名もいるという現実を見るに、司法修習生の給費制廃止は実に正しかったと胸をなで下ろします。弁護活動というより、イデオロギー闘争への参戦ですからね。活動を否定しませんが、ならば、その職に就くための費用は自費が当然でしょう。むろん「迷惑」と思う後輩もいることでしょうが。

 記者会見で「“強制連行”とは書いていない(発言要旨)」という植村隆氏の主張は、月刊WiLL 2015年2月号「朝日問題で問われる日本のジャーナリズム」と題した、櫻井よしこ氏と、元朝日新聞編集委員 山田厚史氏の対談で登場します。

 櫻井よしこ氏が朝日新聞の、福島第一原子力発電所における「吉田調書」の記事を引用し、「逃げた」という印象操作を指摘するとこう返します。

山田「逃げた」なんて書いていないじゃないですか。
  この記事のどこにそう書いてあるんですか。

 つまり、「文脈」は一切無視して、一言一句の文字の所在の有無を争点にするのです。

 同じく朝日新聞の大先輩である、本多勝一氏にもご登場願いましょう。

 植村隆氏に訴えられた「週刊文春」は2014年9月4日号(8月28日発売)で、本多勝一氏を「南京大虐殺30万人説」を流布させた人物として紹介し、朝日新聞で連載した「中国の旅」の一節を紹介します。

“歴史上まれに見る惨劇が翌年二月上旬まで二ヶ月ほどつづけられ、約三十万人が殺された”

 これに対して、この問題を追及し続けている拓殖大学客員教授の藤岡信勝氏が

 において、「南京大虐殺」が流布されるに重要な役割を果たした「中国への旅」

“この記事は本多氏が中国共産党の案内で取材し、裏付けもなく執筆したもので、犠牲者三十万人などは、まったくのデタラメです”

 と断じ、コメントを求めた「週刊文春」に対して、本多勝一氏は

“私自身による調査結果としての数字を書いたことはありません”

 と回答を寄せます。つまり、

「“本多勝一調べ”、と表記していないのだから、三十万人という数字を報じたことに責任はない」

 ということでしょう。植村隆氏と同じく、複数の情報源から確認する「裏とり」をしていない、それが朝日新聞クオリティーだという告白です。

 また、昨日の記者会見が浮き彫りにしたように、外国人を集め海外にまず発信し、外圧により国内世論を動かそうという手法は、いわゆる「従軍慰安婦」を世界的に広めた手法そのままですし、そこに賛同者や、考えの近い「日本人」をいれこみアリバイ作りするのも同じです。

 さらに、「強制性」が否定されたら「広義」に拡大し、その旗色も悪くなると「女性の人権問題」にすり替えた構造も全く同じ。問題は捏造の有無にあり、捏造の意図がないのであれば、先に述べた「小学生レベル」の話しに過ぎません。ところがこれを「人権問題」にすり替えようと目論みます。

 一方、捏造の有無を脇においても「性奴隷の国、日本」という印象に加担したことで、傷つけてしまった日本人の人権への想像などありはしません。

 そしてもうひとつ。

 これまた「週刊文春」が報じていたことですが、朝日新聞の前社長 木村伊量氏はもとより、朝日新聞を擁護する進歩的文化人の数々が、朝日新聞の朝日新聞による捏造的誤報事件の発覚を受けての批判に

「バッシング」

 と、まるで被害者面をしていた姿は、昨日の植村隆氏に集約されます。

 昨日の記者会見まで、「多様な言論」を尊ぶ立場から、朝日新聞には改めるは改めた上での再出発を期待していました。しかし、卑怯者の前に、わずかな憐憫すら罪になると思い知らされました。

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