いま話題の加計学園を巡る「官邸の最高レベルが言っている」の前段にあたるのが、平成27年6月8日(月)18:34~19:12に開催された《国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング》。議事要旨は官邸のサイトにあります。
これを読めば、官邸の最高レベルの求めるところと、文科省がどう抗ったかが一目瞭然。
ところがマスコミはこれに準じて報道をしません。「報道しない自由」の行使です。
もしかしたら読解する力がないのかもしれません。口語体でまとめられた要旨であり、単語を繰り返す役人流の答弁は難解というか、相手の理解を求めるのではなく、思考停止を目論むようでもあるからです。
そこで「超訳」をお届けします。
登場する人物その他の、実際の品性、話し方とは無関係。
発言右側を国家戦略特区を推進する「ワーキンググループ委員」、左側を抵抗勢力・・・もとい関係省庁である文科省と農水省とします。
原英史WG委員
文科省から説明ヨロシコ
1:獣医師は足りている
2:愛媛県、今治市から新しい獣医師構想の提案があったとしても全国レベルで検討するよ
3:全国で対応しているから、そもそも「国家戦略特区」に馴染まんのよ
本間正義WG委員(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
今治市が主張する「国際水準ないしは新しいタイプの獣医学教育」については触れていないじゃん。食の安全、人獣共通感染症、越境国際感染症への対応は、いままでの仕組みでは対応しきれていなくない?
動物由来新感染症の統御、食品の安全、ライフサイエンス、疫学のすべてで「モデルコアカリキュラム」で対応済みだよん。
WG本間
新感染症やバイオテロで危機は増大しているんちゃう? 獣医師の数は足りてんの?
また、水産関係の獣医対応はどうなん?
水産にしても「モデルコアカリキュラム」でおk。漁業は水産学部のテリトリー。養殖での医薬品使用には獣医師マターだけど需要はないらしいよ。
獣医師数については農林水産省との話し合いだね。
水産学科と獣医がコラボっているから間に合っている。
ペットは減ってるし、畜産業も衰退しているから獣医師は足りているん。
WG本間
だから、新しい分野は足りているのかって聞いている。
新しい分野って?
WG本間
バイオテロとか越境感染とか。
家畜保健衛生所と農水省で対応している
WG本間
獣医師いらんの?
じゃなくて、足りてるってこと
WG本間
今後もいらんの?
これまでできたから、これからも大丈夫。
WG八代尚宏委員(国際基督教大学教養学部客員教授)
文科省が新しい大学を認めるとき、卒業生の心配までするの? そんで学部を規制しているの
歯科医師、獣医師、船舶職員を規制してる
WG八代
医学部は?
医学部も。で、就職は関係ない
WG八代
じゃ、なんで規制しているの?
需要から。告示で規制
WG八代
法律じゃないじゃん。小泉内閣のとき、「需要調整条項」は廃止になったじゃん。需要は役人が決めるのではなく市場が決めるってこと。就職口は自己責任だべ。
生命、安全、健康とかマジ大事じゃん。で、6年間も通うのが、国家試験の受験資格だからだろ。
WG八代
獣医師が多い方が安心じゃね? 競争があれば質も高まるし。そんで十何年も前に免許採った獣医師が、その頃なかった需要に対応できているのかよ。んで6年間も通うのは、そんだけ大事ってことだけだろ。
文科省の「コアカリキュラム」があるからオケっつうこと
WG八代
質は確保されてることだよね。じゃあ「量」の制限は農水省的に問題なくね?
おれら量的には何もいってねぇし
WG八代
じゃあ「獣医学部」の数で調整しているってこと? 理由は?
需給を考えなければ増えるジャン? で、そうなったら農水省はどう思うワケ?
大学のことはわからんけど、一定の点数を採れば合格にしているだけ
WG本間
じゃあ農水省はアウトオブ眼中だね。水準クリアで獣医師免許ゲットだぜ! だからね。獣医師の就職は市場原理に任せるんだから、そもそも獣医学部の規制っていらないよね。
質の確保とかあるし、無限に増えたらマズくね?
WG本間
質は農水省の試験でクリアしているよね。で、獣医師が無限に増えて誰が困るの?
法科大学院とか通って、卒業したけど就職できないとか社会問題になっているジャン。
WG本間
法科大学院の教え方が悪いんでしょ。で、就職失敗は自己責任で文科省が心配することじゃない。
(学部が増えたら)点数クリアできない生徒が増えるかも
WG八代
受験生が増えたから、受験生の質が下がるとは議論の筋が違う。むしろ「お仲間(ギルド)」からみれば商売敵は増やしたくない、そういってるの?
WG原
規制に意味あるのかね。そこも含めて話し合うとして、さっき文科省は(モデルコアカリキュラムで)ぜんぶやっているっていっていたけど、愛媛県に足りないのは何
具体的な需要予測
WG原
じゃあ現在の具体的な需要予測はどうなってるの。
モデルコアカリキュラムで毎年930人が定員だけど、細かいことは気にするなワカチコワカチコ♪
大まかにはわかってるつーの
WG原
新しいニーズなんてないと思っているの?
そこまでいってねーし。いまは足りているから、学部を新しく作りたいなら、細かな数字出せっていっているだけ
WG原
マヂか。新学部の申請には細かな数字を出せっていって、自分たちは現在時点での細かな数字をもっていない。それで新学部の申請する数字を評価できるわけがない(原文は「挙証責任がひっくり返っている」のみ)
以下、WGの各委員の発言まとめと寸評。
現時点での詳細な数字が明らかにならない以上、正しい需要の過不足を論じることができない。そして構造改革特区とは、最終的に「総理が本部長」との発言があり、つまりは構造改革特区として議論される以上、総理への忖度、ご意向というのは大前提で、そもそも論で問題視するのが無理筋ということ。
最後の原英史さんの言葉を「意訳」したように、自分たちは数字や具体例を求めながら、自分たちは提示できない文科省と農水省。文科省に至っては質の低下といいながら、質の確保は農水省の実施する国家試験に丸投げしています。
一方で文科省は組織的な「天下り」が発覚し、その先は獣医学部ではなくても、既存の学部を持つ大学もありんす。そして農水省と一蓮托生の獣医もいます。
「友人」と「忖度」という色眼鏡で見れば、安倍首相を疑いたくもなりますが、「既得権」というフィルターを通して、この議事要旨を読み込めば、いつもの談合体質、既得権益が立体映像として浮かび上がります。
“(超訳LINE風)国家戦略特区ワーキンググループヒアリング平成27年6月8日「官邸の最高レベルが言っている」の前の話” への1件の返信