ベビーシッターに我が子を預けたら、連絡がつかなくなり、探し出してみると死んでいた。
と、書けば、まるで海外の、とくに米国あたりの事件のようですが、ワイドショーを騒がせている
「ネット発注ベビーシッター幼児不審死事件(仮)」
です。
さらっと事件を時系列でなぞっています。
22才のママが留守にするため、14〜16日のあいだ、二人の息子を預かって貰うために、インターネットの「ベビーシッター紹介サイト」でみつけた自称ベビーシッターの男に発注します。
ママは預ける10日ほど前から、ベビーシッターとやり取りを重ね、これをもって信用としたようですが、男についての情報は、苗字とメールアドレスだけです。
ちなみに東京新聞によれば、ママは横浜市磯子区の無職女性。
預ける当日。14日に約束の男は都合が悪いということで、男が依頼した別の30代男性が、ママの自宅近くと思われるJR新杉田駅で息子ら兄弟を預かります。
預かった30代男性は1時間後、同じくJRで都心寄りのターミナル駅「横浜駅」で男に兄弟を引き渡します。
そして返却日の16日になり、男からの連絡がないことから、ママは警察に相談し、報道の多くが「警察の調べ」とあるので、利用したサイトの運営会社に情報照会して、割り出したであろう住所から男に辿り着き、任意で室内の確認を求めたところ男は拒否。
問答の末に警察が部屋に入ると、2才の兄は心肺停止、8ヶ月の乳児は病院へ搬送されて治療を受けているとのこと。
この事件に触れてもれた溜息がみっつ。
1)想像力の欠如
2)利己主義の拡大
3)便利すぎる社会
仮にどれかひとつでも欠けていれば防げた悲劇です。
浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ。とは、天下の大泥棒 石川五右衛門の辞世とされていますが、同じく変態の種も尽きません。
変態とは知能が進化した人類ゆえの徒花で、科学や芸術と紙一重にありますが、一般論としての変態は変態です。幼児性愛も変態のひとつ。これと同性愛を同時に論じると、昨今の風潮から人権団体に叱られることでしょうが、幼児性愛においての同性愛も存在します。
子供を取り巻くリスクを少しでも想像できたなら、見ず知らずの性癖も分からぬ他人に、幼児を預けることなどできはしません。
また、今回の事例では「ベビーシッター紹介サイト」に、男が登録した情報が正しかったので、早期に居場所を特定できましたが、これを偽装していたなら、永遠の神隠しになった可能性だってあります。
ネットの情報を疑うという想像力の欠如です。
こうした紹介サイトは「マッチングサイト」と呼ばれ、超短期のアルバイトなど比較的健全なモノから、薬物の売買やセックスフレンドの募集まであり、悪名を轟かせた、人殺しやストーカーといった犯罪仲間を募集する「闇サイト」も同じです。
つまり「闇サイト」の「ベビーシッター版」です。それを盲目的に信じたのです。10日ほど前からメールでやり取りをしていた・・・のに、苗字以外を知らないのは、ママが自分の都合を最大化したからで、これが「利己主義の拡大」です。
このママは22才ということで、年代から「前略プロフ」といったガラケーのミニブログの世代なので、調べて見ると本人とおぼしきサイトに辿り着きます。
真贋はわかりませんが、昨年の7月に更新され、長男は実名で記載されており、その他の諸条件から、かなり近く、その情報によれば、職業欄にはこうあります。
“
お水歴5年
妊婦になって終止符。
”
次男がお腹にいることから逆算すると、15〜16才から水商売をしていたとのこと。水商売は否定しませんが、いささか早熟なきらいも。昭和時代からよくあることですが、これを「公開」できるところは時代なのか、個性によるモノか分かりませんが、次男の妊娠中には旦那と別居していることがわかります。
22才の無職のママが、二泊三日も我が子を他人に預けなければならなかった理由は、徐々に明らかになったところによれば、アルバイトにでていたとのこと。これについては後で詳しく触れます。
2才はともかく、8ヶ月の乳児を面識もない男性に預けています。乳幼児突然死症候群は6ヶ月以下の乳児に多いとされていますが、生後1年以内は注意が必要で、保育士や看護師などの資格を持たず、ましてや子育て経験のないものに託せるのでしょうか。
ベビーシッターを否定しているのではありません。マッチングサイトのすべてを否定するものでもありません。
しかし、ベビーシッターのマッチングサイトを利用する声は、便利さと同じくらい、その「安さ」を理由にあげます。
安いことの何が悪いか。それは品質にあらわれます。牛丼の吉野家が掲げた
「早い、旨い、安い」
というキャッチコピーは、牛鍋専門店の味と比較しての旨いではなく、ファストフードを求める客のレベルにおいての評価です。
国会限定で吉野家が発売した「牛重」は千二百円です。
つまり、価格は質に連動するのです。昭和時代なら常識です。
時代は利己主義を拡大しました。その結果、安価でも必要充分なサービスが提供されることを「当然」とする空気が生まれます。
容疑者は物袋勇治(モッテ ユウジ)。「ベビーシッターの会社を経営」しているともされ、調べてみるとホームページも開設していました。中国地方の格安ホームページ制作会社の手によるモノですが、本件とは関係なく、また当該企業の「実績」から、すでに削除されていたので、流れ弾は控えておきます。
サイトにあった料金表をみると、入会金2万5千円で年会費1万5千円、1時間1500円となっています。
業界大手の「ポピンズ」ではそれぞれ5万2千5百円、1万5百円、2300円。
年会費は「ポピンズ」の方が安いぐらいですが、入会金と時間単価は容疑者の方がリーズナブルです。
実は物袋勇治容疑者が運営していた企業サイトと、ベビーシッターのマッチングサイトの「名前」はどちらも「シッターズネット」で、URLは酷似しています。
マッチングサイト:http://sittersnet.jp/
物袋勇治 サイト:http://www.sitters-net.com/
「-」なしの「.jp」、「-」ありの「.com」です。
前者は2008年から運営し、後者は2013年の3月開設ですので、物袋勇治容疑者がパクったとみるべきでしょう。
余談ながら、わたしがサイト制作の依頼を受けたとき、お客が既に取得しているドメインでも、新たに取得する場合でも、似たようなアドレスはチェックしますし、なにより「名称」で検索ぐらいはかけてみるものです。
悪意がなくても商標権を侵害するリスクをチェックするためです。そして今回のように、同名で隣接する業種のサイトを見つければリスクを伝え、悪意を感じれば、手を引くこともあります。
遵法意識の低いクライアントの場合、著作権侵害ならば可愛いといえるほど、トラブルを起こすことがあるからです。
それでは物袋勇治(モッテ ユウジ)容疑者は、マッチングサイトと無縁かといえば、やはり関係がありました。匿名掲示板系の情報によれば、トラブルメーカーなどと紹介されていますが、こちらの真偽はつかめませんでしたが、マッチングサイトに容疑者が登録している情報は確認できました。
珍しい苗字と、自称の経験7年と、性別の一致からの特定ですが、こちらで提示している希望保育料は1000円/時間です。
二泊三日といえば、夕方6時に預けて翌々正午の返却でも、42時間ですから4万2千円。これでも決して安いとはいえませんが、物袋勇治容疑者の「正規料金」ならば・・・と、ここから30分ほど電卓と格闘します。
先の激安ホームページ制作会社による料金表が「分かりづらい」のです。想像するに容疑者が提出した資料を、そのまま掲載したのでしょうが、ここにも「料金」が現れます。提出された資料や原稿を、「分かりやすいか?」と検討する料金の有無です。
ベビーシッター同様、ホームページ制作業者にも公的資格はなく、また何を持ってプロかの定義も曖昧ですが、少なくとも真っ当なプロなら、そのコンテンツ(料金表)がお客のお客=消費者に理解できるかに心を砕くものです。
安かろうは悪かろう、あるいは「それなり」だったり、「そこまで」だったりするのです。
容疑者のサイトが分かりづらいのは「一時預かり」と「ビジター」に分かれるところです。「月極料金」もあるところから、前者は月極契約者が、契約外で利用するのが一時預かりで、後者はスポット的な利用者と判断します。これらは「一例」をおけば、回避できることです。
入会金と年会費があることから、飛び込みのフリー客ではないと考えますが、その「ビジター」の夜間料金は2万円/時です。夜間の時間は12時間と設定されているので、一晩預ければ24万円です。
ちょっとこれはあり得ないということから、「一時預かり」で計算してみました。こちらの方がリーズナブルだからです。そして預入期間を14日の17時30分から、16日の午前11時30分に設定し計算します。
年齢による区分があり、2才の兄は7時30分から18時30分までの日中料金が1500円で、弟は2000円。18時30分から19時30分までが「延長」となり、年齢区分なく30分800円。最後に19時30分から翌朝7時30分までが、一時預かりでは「1回」という単位で、兄が1万6千円で、弟が1万8千円。
土日はプラス1000円されますが、「兄弟割引き」があり、長子が半額になるので、ここまで合計は10万4800円。さらに長時間割引きと片親割引きがそれぞれ10%引きで、単純に20%オフにすると83840円。
さっきの倍で、これに入会金と年会費が加わります。
■物袋勇治 運営サイト 料金表
http://www.sitters-net.com/works.html
ちなみに先の「ポピンズ」の場合、
「宿泊パック」
なるものがあり、夜の9時から朝の9時までで1万8千円から。ここら辺も容疑者の「パクリ」の匂いがします。こちらを適用すると、日中の時間単価の差額におさまります。
金額面なアプローチからも、ママはマッチングサイトから容疑者に「発注」したのではないかと推定します。ましてや、わたしが計算したように、細かな規定を理解したうえで、発注したのなら、当日になりベビーシッター本人が来られなくなったからと、別の人間を差し向ける行為に不信感を抱くことでしょう。
こうした蓋然的な事実から、掲示板(マッチングサイト)を経由した、口約束的な契約だったのではないかと昨夕まで睨んでいました。
そして発注に至った結論は「お金」ではないかと。
と、あらかた書き終わった後の昨夜(2014年3月18日の夜)、被害者のママが取材に応じたところによると、「シッターズサイト」とマッチングサイトの実名を挙げて、利用を告白しています。
以前に物袋勇治(モッテ ユウジ)容疑者に子供を預けたことがあったというのです。そのときは毎月8千円で、週2回、次男を預けていました。先の計算がバカバカしくなる「破格値」です。
ところが2才の長男も預けだすと、長男に暴行の後が見つかり、同時に料金トラブルもあったので疎遠になったといいます。ただし、これは被害者側の証言である点に注意が必要です。
テレビ朝日「モーニングバード」の取材によれば、被害者ママは無職ながら、週に2回のアルバイトにでかけ、その時給が2000円とありますから、かつてのキャリアを活かした可能性が高いと言えるでしょう。
また、通常は水曜日と土曜日のみシフトが、3月14日の金曜日もはいったのは「ホワイトデー」との関連が想像できます。
いずれにしろ、物袋勇治(モッテ ユウジ)容疑者がマッチングサイトに掲示した安値「時給1000円」でも、兄弟ふたりで2000円なら、バイトにでるだけ損する計算です。
月額八千円とまでダンピングしたかはわかりませんが、価格交渉により引き下げを実現し、やはり価格が発注の決め手となったと見るべきでしょう。
そして子供の安全は置き去りにされました。子供よりも、ママの経済合理性を追求する、すなわち利己主義です。
多くの自称ベビーシッターがいて、保育所勤務経験があるなどのセミプロ的なベビーシッターや、子育て経験豊富な街の賢者のような方もいることでしょうし、いままで問題がなかったから、本件がレアケース。と、いえるでしょうか。むしろ氷山の一角と怖れるほうが「子供のため」とわたしは考えます。
朝日新聞には、こんなベビーシッターの利用者の声が紹介されていました。ひと段落を引用します。
“■利用者「頼れる人おらず」
ネットで手軽に見つけられるベビーシッターを頼りにする親は少なくない。
6歳の男児がいる東京都の会社員女性(42)は、子どもがインフルエンザにかかったときに2度、ネットでシッターを見つけて預けた。ふだんは公立保育園を利用しているが、インフルエンザの発症で5日間登園できなくなり、預け先を探す必要に迫られた。
1度目は3年前。夫も自分も仕事を休めず、病気の子でも預かる施設を探したが見つからず、サイト掲示板の存在を知ってシッター募集の告知を書き込んだ。
メールでのやり取りで信用できそうに感じた女性に時給1千円で6時間預けた。2度目の今年2月も、夫の単身赴任と自身の仕事が重なり、1日だけ9時間預けた。心配でたまらず、2度とも仕事中に何度も電話で様子を確認した。
女性は「近くに頼れる親戚もおらず、八方ふさがりだった。知らない人を頼るのは不安だったが、良心に賭けるしかないとまで覚悟して預けた」と振り返る。
(朝日新聞 デジタル 2014年3月18日05時00分
『ネット託児、落とし穴 本名・住所わからず依頼』)より引用
”
まず、首をひねったのは、インフルエンザに罹った幼児を置いて仕事にでかける母親です。薬を飲ませて寝かせたあと、買い物などで小一時間、家を空けるのではなくガッツリ6時間です。
6才の男児の3年前は3才のはず。しかもインフルエンザの発症から5日間の登園禁止の期間において、メールのやり取りでの信用確保とは、物袋勇治(モッテ ユウジ)容疑者とママとの10日間より短期間です。
2度目は夫の単身赴任で9時間預けます。6才なら抵抗力もあるので死にはしない・・・3才で死ななかったのなら、そう思うのは当然なのでしょう・・・か?
「心配でたまらず」。とあるのは母親というより、一個の人格として自己弁護も含まれる感情であり、気持ちを嘘とはいいませんが、急変したとしてなにもできない事実に変更はありません。
この記事で不足しているのは、一度目と二度目のベビーシッターが同一人物であるかどうか。一般的にこうした記事の場合、
「(前回と同じ女性に)1日だけ9時間預けた」
と括弧内の記述がないことから、別人ではないかと推測できます。
とどのつまりの結論は
「賭け」
です。子供の安全をベットしたギャンブルです。キツイ指摘でしょうか。しかし、朝日新聞の記事をそのまま引用すればもっと残酷です。再び引用します。
“良心に賭けるしかないとまで覚悟して預けた(同)”
覚悟とはなんぞや。良心にハズレがあれば、万が一、すなわち子供の身に降りかかる悲劇を覚悟していたということ。すごいなぁと思います。時代なのでしょうか。そうではなく、わたしは「利己主義の拡大」とみています。
お前は子供がいないからそういうんだ。
はい、メルマガ、ブログをはじめてこの方、子育て関係で指摘すると必ずこうしたヒステリックな、お叱りを受けますが、わたしは愛犬を他人に預けることに躊躇します。犬ごときで心配なら、人の子なら尚更と考えることはおかしいのでしょうか。それとも、人の子はもっと雑に扱っても死なないのでしょうか。丈夫でしょうか。
この主婦を利己主義の拡大とする、その箇所を再び引用します。
“「近くに頼れる親戚もおらず、八方ふさがりだった。」(略 同)”
東京都在住です。人のいない限界集落ではありません。この記事から分かることは、息子は公立保育園に通っており、特に2回目は前回から3年の時を経ています。
どうして八方ふさがりなのでしょうか。親戚はともかく、親兄弟はいなかったのでしょうか。旦那のほうも含めて、ただの一人の親戚どころか、小中高、大学・専門学校を通じた友人もいなかったのでしょうか。
もちろん、天涯孤独の人もいます。夫婦揃ってそういうこともあるでしょう。ならば、近所の公園や、保育園で
「どうしてママ友を作らなかったのか」
という疑問が残るのです。
語弊を怖れずに言えば、ママ友(パパ友も)には相互扶助の性格があり、打算もそこには働いています。セリヌンティウスのために駆けたメロスではなく、利害に基づく人間関係です。天涯孤独ならば、それが保険となります。
子供のために、ママ友という保険を掛けなかったところに、現代型の「利己主義」を見つけるのです。個人の権利意識の肥大化と換言しても良いでしょう。
貸し借りを作りたくない、日頃の付き合いが面倒、人間関係が煩わしい。どれも個人的には理解できます。しかし、親となったからには、製造者責任として、子供の安全を守るために、下げたくない頭を下げることになんの躊躇いが必要なのかと言うことです。
これまた先の「子供がいないから」だと指摘するかもしれませんが、たった半年間とはいえ、甥と暮らしたあいだ、わたしは社会人になってからの20年以上のすべての年月を通算しても足りないほど、他人に頭を下げたものです。
学校にも通い、ことある毎に感謝とお礼の言葉を担任らに捧げ、ときにはおべっかまがいのことまで口にしました。進路に窮したとき、最後の手段として親友に頭を下げ、彼の会社で面倒を見て貰う算段もつけました。
児童相談所の担当者に頭を下げ、戸籍上の甥の父親であり、育てもせずに子供手当を搾取し続けた戸籍上の義兄(と、くりかえす心情をご理解ください)とのトラブルも避けました。その後、甥を引き取ることになった血縁のある実父の無責任な発言にも耐え続けました。
すべては甥のためです。
主婦に話を戻します。日常における、小さな自分の利益を守り続け、ましてや3年前に「(子供の)命がけ」で託したベビーシッターの経験を反省せず、再び「(子供の)命がけ」のギャンブルを、まるで被害者のようにして騙る感覚こそ、利己主義の拡大です。
ここまで断定できるのは、先の義兄の存在があります。50才前後であろう彼をひと言で評するなら「現役のチンピラ」。ヤクザとか半グレでもなく、20代前半までの元ヤンキーの感覚と常識で生きている男で、一例を挙げれば愛妻(姉ですが)の葬儀に、一応、黒のスーツは着ていましたが、かかとを踏みつぶしたスニーカーに、よれよれのワイシャツ、焼香がはじまってもネクタイは胸元までずり下がったままという人種です。
姉が亡くなると、高校1年生の長女(彼から見て血縁無し)、中学2年の長男(血縁無し、先に登場した甥)、そして2才の甥(血縁あり)を育てなければなりません。
しかし、彼はわれわれ親戚に「大丈夫」を繰り返すだけで、プランを示さなければ、頼りもしません。頭を下げたくないという小さなプライドが理由であることは、彼のつくその場限りの小さな嘘から明らかです。
例えば「隣に親切な世話焼きおばさんがいる」と親戚の協力を拒否しました。姉の死後、遺体を自宅に戻したとき、一切、そのおばさんとやらが顔を出しません。
子育てなら、近所の友だちも手伝ってくれると豪語していましたが、当時2才の甥の保育園を探し出したのは、わたしの母親の公明党(創価学会)人脈で、葬式の手はずを整えたのはわたしです。
訃報に駆けつけた姉の知人らにお茶をだしたのは、私の妻や妹であり、その茶器も座布団も、姉が眠るための布団もわれわれが用意しました。
腹立ちついでに言えば、そこまでしても、この男は、わたしの妻を「デブ嫁」と、形式上はその通りながらも、甥や姪の前で侮蔑していたと後に知ります。
一事が万事、嘘で、彼の意地とは呼べない、ちっぽけなプライドという自己利益を確保するために、頭を下げることを拒否し、犠牲になったのは長女(血縁無し)です。彼女からすれば血の繋がった弟とは言え、その面倒をみさせることを強いたがために、彼女は高校卒業した現在、倉庫整理のアルバイトをしながら、弟の保育園の送り迎えをいまもしています。
また、追い出した長男(血縁無し)を振り返ることなどするわけもなく、後にわが家に半年間だけホームステイしたことは前号すこし触れた通りです。繰り返しますが、この間も「子供手当」はしっかりと受けとっていたことは、苦々しい想い出です。
余談ながらこの長女についても、児童相談所の職員に相談をしましたが、高校生になっている以上、「本人の意志」ということで、介入は困難とのこと。月に1回ぐらいわが家に呼び、たらふくご飯を食べさせることしかできませんでした。
話を戻します。つまり「親」でございとふんぞり返り、自分のプライド=利益を優先させているのではないかということ。親とは言え一個の人格、しかし、その独立した存在になる前の、子供という弱き生き物の命より優先させるべきものかと疑問を呈しているのです。
・・・もっとも朝日新聞の記事なので、主婦の真意がそのまま記事になったかに疑問は残りますが。
取材に応じた被害者ママは物袋勇治(モッテ ユウジ)容疑者に、何度もベビーシッターを依頼しており、次男は週2回、定期的に預けていたともいいます。
いまひとつ要領を得ない会見でしたが、弟(推定、生後5ヶ月前後)を何度も預けており、なくなった兄を預けた際、二度、アザのようなものがみつかり、それから預けなくなったとのこと・・・ですが、今回、物袋勇治(モッテ ユウジ)容疑者は「山本」と偽名を使っており、預けた相手が物袋勇治(モッテ ユウジ)容疑者だと分かったのは報道を見てとのことです。つまり、事実上、見ず知らずの人に幼い兄弟を預けたのです。
朝日新聞の主婦の言葉がリフレインします。
また「利己主義の拡大」とするには、もうひとつ理由があります。
薄謝でも金を支払えば、最低限の仕事をするのが当然。
という意識の一般化です。
金を払ったからと、安全が保証されるわけがありません。所詮は取引に過ぎず、安い単価になれば、安い仕事しかできないのは、反対側の立場に立てば分かることです。
時給千円で、聞き分けのないワガママなクソ餓鬼を、きちんと面倒を見続けるマザーテレサのような人格者は希です。何十分と泣きわめき、機嫌を取ったら毒づいて、イヤミをたれる子供など掃いて捨てるほどいます。ようやくご飯となだめても、あれがきらい、何食べたい、不味い、いや、そして再び泣きわめきます。
「死なない」ように見張るだけでも大変で、それが最低限の仕事でしょうが、ちょっとした気の迷いと、虫の居所、わずかなタイミングで、蹴りのひとつがはいらないとは保証などできません。
金を払ったのだからちゃんと面倒を見ろ。それは受けとった金の分だけ。ならば「料金オーバー」の分を、子供の体でお返しを・・・と、ベビーシッターが考えるとはいいません。が、そうならないと誰が保証できるでしょうか。
金を払ったのだからとは、あくまで自分の側=利己の視点でしかないのです。
そもそも「我が子は可愛い」とは真実でしょうが、「他人はそれほど可愛いと思っていない」というのが現実です。
なにより子供がいるなら、これに異論はないでしょう。
「子供の存在はプライスレス」
どれだけカネを支払ったからといって惜しくない子供の命なら、せめて相応の報酬は支払わなければ釣り合いがとれないと、どうして考えないのでしょうか。ギャンブルのチップにするのは論外です。
また「子供はプライスレス」という同じ価値観を共有するママ友をゲットする理由もここにあるのです。
事件の舞台となったシッターズサイト同様のマッチングサイトを運営する、IT企業経営者とやらが取材に答え、正規の業者が高すぎるとトンチキな批判をしていました。
経営者としても論外。人材育成、各種保険、施設の充実などといった諸経費に加えて、ベビーシッターに支払う「時給」が決まります。仮に時給千円であっても、その倍を単価としなければ、企業としての経営が成り立たず、つまりは安定したサービスの質を維持することが困難になるのです。
まともなサービスを提供するには、それなりの単価が発生するという当たり前を知らないこの経営者に発注するのは危険です・・・がビジネスは自己責任。それより、真っ当なコストや経費を勘案しない、ITという畑違いの社長をひっぱりだし、つまりはベビーシッターの「ど素人」による「高い」という発言を、そのまま報じるテレビの罪は根深いと思いを新たにします。
最後にこの事件は「便利すぎる社会」という錯覚にあります。つまりは「ネットですべてが手に入る」。
入手できるのは情報だけです。ベビーシッターのマッチングサイトを運営しているのは、ホームページ制作会社で、外部SEOというヤラセリンクのための運営です。当該サイトは現在、開店休業中ですが、キャッシュを辿ると各ページの最下段に、脈絡のないサイトへのリンクが貼られています。いまはグーグル的には「違法」の方法。
そしてこのサイトは「情報提供」を謳い、すべてを当事者同士に委ねており、一切の責任を拒否しています。
これはIT系によくある無責任。というか、彼らの理屈です。
「我々は場を提供しているのであって中身は関知しない」
2ちゃんねるのこねる理屈と同じです。
また、かつてのホリエモン氏をあげるまでもなく、IT業界の遵法意識は低く、モラルなんかありません。パクリや虚言が日常のためか、「その場のノリ」が優先され、提供するサービスの社会的影響など振り返ることはありません。
成功は喧伝し、失敗はデリート(消去)せず、忘れていきます。
あまりに非道いので流れ弾を当てておきます。
この事件を受けて、
“「なんでも母親のせいなのか?」 ベビーシッター宅男児死亡事件の母親批判に、ネット上でママたちが激怒”
と題したネットニュースが流れました。
『ウートピ』と題したサイトの副題は
“女性をちょっと生きやすくするオンナ目線のニュースサイト”
とのこと。
主旨は「母親が悪いと言うが、父親の責任はどうだ」という他愛のないもので、女性週刊誌レベル以下のもの。ところが事実誤認が甚だしい。母親が悪いとするネットの意見を紹介した後に、反論として紹介されたのがこちら。
“急な夜勤だったらしいね。乳幼児ふたりを育てるシングルマザーに、平然と夜勤を振ってくる職場があるんだよ。女性がそういう働き方をせざるを得ない現実がある。
(ウートピ 2014.03.18 http://wotopi.jp/archives/2826)”
「急な夜勤」のために、被害者ママは10日前からベビーシッターを手配していたなら、それを急とはいいませんし、個人的体験を一般論として拡散するのは、表現の自由で見逃されるとは言え、それを集めて「記事」にするとき、一般的なメディアなら紹介する発言を選別します。
事実誤認ならそこで外します。しかし、「便利すぎる社会」の一翼を担うとされるIT系企業は、その責任を知りません。え? だってネットに転がっている情報を、そのままコピペしただけじゃん。それが「表現」になり責任が発生する可能性を知らないのは、東証一部上場企業。
証券コード:3770
(株)ザッパラス
ここへの投資はご注意を。神は細部に宿ります。
女性を擁護するための結論ありきの記事ながら、最低限の事実確認は女性誌ならば当然のこと・・・ま、芸能人のゴシップなら、その限りではありませんが。
そんな連中の提供する「便利」の程度を我々は知るべきです。
今回の事件は、ベビーシッターのマッチングサイトという「便利の程度」を知っていれば、防げたことです。
反日プロパガンダをちょいちょい入れ込むテレビ朝日「モーニングバード」のなかで、インテリ芸人 宇治原史規氏が、
「ネットリテラシーを身につけろ」
と愚にも付かないコメントを垂れ流していました。俗に旧帝大は官僚を作るための組織で、正解のある答えを見つけることに長けて(情報処理能力)はいても、あらたな問題を解決する能力に乏しいと聞いたことがありますが、まさしくそれです。
そもそも「ネットリテラシー」とは、向き不向きのある能力であり、この発言は自動車の運転が苦手な人にダンプの運転ができるようになれというのと同じです。
しかし、専門家として招かれていた、猪熊 弘子 東京都市大学人間科学部客員准教授の発言は秀逸だったので、要約して紹介します。
“ネットリテラシーの前に、公的機関の助けなど、子育てをする母親に必要な情報を集める能力、方法を身につけるべきだ”
朝日新聞に登場した主婦にも通じますが、「公的機関」もあれば、地域の横の連携など、悲劇が起こるたびに「活用」されていない、救いの手がまだまだあるのです。
「子供のいない」わたしが、こうした情報をもっているのは、預かった甥だけでなく、いまではほとんど面識はありませんが、当時2才のもうひとりの甥のために、様々な情報集めたからです。
子供のいない、わたしにとって、子を持つ親のそれとは違うのでしょうが、俺だったら・・・と妄想するたびに、涙がこぼれないように上を向く事件です。