セウォル号を報じる日本のマスコミの残酷さ

 先週号で指摘した通りの展開になってきました。

 韓国の公共交通機関への信頼が揺らいでいます。セウォル号の沈没事故も未解決のなか、ソウルの地下鉄が追突事故を起こしました。

 ところが日本政府、および外務省は韓国への渡航禁止・・・は、やりすぎとしても、韓国の交通機関への警鐘を発しません。それどころか日本のマスコミは、必至になって「特殊事例」に抑え込もうとしています。

 お昼の情報バラエティ番組「ミヤネ屋」では、東海大学の金 慶珠(キム・キョンジュ)准教授をひっぱりだしてきて弁明させていました。偶然が重なった特殊事例だと。

 馴染みの食堂のオヤジは金慶珠氏を「うるせぇオバサン。韓国に帰れよ」と毒づきますが、わたしが彼女を有り難がるのは、金慶珠氏を出演させているという事実だけで、番組の意図を見つけることが容易だからです。

 朝鮮半島プロパガンダか、在日批判からの目を逸らさせるためのガジェットのような存在です。

 一見、日本批判が過ぎるように見えますが、すべては韓半島を擁護するための比較対象や演出としての反日や侮日で、その一途さは切なくなるほどですが、一番の問題はそんな彼女の発言を、一般論にすり替えようとする国内メディアにあります。

 ちなみに「オバサン」と呼ぶオヤジは年金受給者で、彼から見れば「お嬢さん」なのになぁと思っても口にしません。彼の表現の自由のために。

 交通機関への信頼については、先週も触れましたが、金慶珠氏は頑なに特殊事例と言いますが、そうではないとわたしが見立てる理由は国民性にあります。

 朝鮮民族がどうこうという話しではありません。日本人らしく「自省」により証明します。

 2012年12月2日、中央自動車道で起きた「笹子トンネル天井板落下事故」を思い出してください。

 これをもって「日本中のトンネルは危険だ」と朝鮮人に言われたとして、「おまえらに言われたくない」と脊髄反射で毒づくのはネトウヨあたりの特徴ですが、多くの日本人は「だよね」と受け止め、「危険かも」と対策を考えるものです。

 事故を他山の石とする謙虚さを持っているからです。そして実際に緊急点検が実施され、高度経済成長期に急ごしらえしたインフラの老朽化が白日の下に晒されました。

 完璧な対策はまだなされていませんが、現在進行中の対策も含めて、今後の課題として検討されています。

 崩落事故より時計の針を8ヶ月巻き戻します。つまり2年前のゴールデンウィークです。関越自動車道、藤岡ジャンクション付近で、ツアーバスが居眠り運転の果てに大惨事を引き起こしました。

 事故を受けて高速ツアーバスは廃止されました。

 廃止すればすべてが解決するモノではなく、バス事故も崩落事故も利用者の意識に深く根ざした深刻な理由があり、今年の4月20日に名神高速を逆走した観光バスが事故を起こしています。

 本旨とずれますが、利用者に根ざした理由とは

「安くて良いもの幻想」

 です。そんなものはありません。コストと料金、安全と料金はトレードオフです。

 話を戻します。ただし、ことが起こるたびに、我々日本人は自省し、「事故の完全撲滅」を求めます。もっともこれは日本人の最大の欠点でもあります。事故は消滅できるものではなく、再発するものであり、ならば再発までの期間を長くし、事故の規模を小さくするための努力こそが適切なのですが、「ゼロ」を目指す潔癖性が別の問題を引き起こすことは、また別の機会に。たびたび話しが中断してすいません。

 さて、振り返り韓国政府はセウォル号の事故のあと、なにをしているのか聞こえてきま・・・やっておりました韓国海洋水産部は4月23日から24日にかけての緊急点検していたのです。

 実際に水面に浮かべてエンジンをチェックし、非常時の対策を確認しましたが、5月2日にこんなニュースが飛び込んできました。


乗客約400人を乗せて鬱陵島から独島(島根県・竹島の韓国名)に向かっていた旅客船「ドルフィン号」が2日午後4時ごろ、エンジン故障を起こして回航中であることが、分かった。
平成26年5月2日(金) SANSPO.COMより http://goo.gl/nzS2yb

 つまり8日後にエンジン故障した「緊急点検」です。これが日本社会なら「なにを点検したのだ」「アリバイ作りだ」と指弾されることでしょうが、他国のことなので踏み込みはしません。

 しかし、同胞の生命財産を考えれば、韓国という国家が、公共交通機関に接する態度を改めない限り、危険だと警告するしかないのです。

 そして金慶珠氏が声をからし主張するように特殊事例だというのなら、思い出すのが「アシアナ航空」がサンフランシスコで起こした昨年2013年7月6日の事故です。

 着陸事故で機長の操作ミスという見方が強まっていますが、注目すべきは事故直後、乗務員は乗客に機内に留まるように指示していることです。航空機事故は、可能な限り迅速に機外への脱出が鉄則であることは、堀ちえみが主演した「スチュワーデス物語」からも明らかです。

 また、乗務員が先に滑走路に逃げ出している映像もありましたし、乗客が手荷物を持って逃げ出しているシーンから確定できるのは、通常、安全確保を最優先することから、手荷物を諦めさせる乗務員の仕事を、彼らや彼女らはしていなかったということです。

 さらにCBSニュースを引用した、こちらのブログでは

最後に機内に乗客が残されていないか確認したのはサンフランシスコ消防局の職員であった
ブログ「ネイビーブルーに恋をして」より http://goo.gl/5Yug39

 とあります。構図としてはセウォル号と同じです。

 船と飛行機。海と空で「偶然」が重なったのでしょうか。千歩譲ってそうだとしても、アシアナ航空の事故から1年も経っていません。

 あえて「韓国人」の民族性によるものでないとしたとしても、

「韓国人が運転する乗り物」

 への警句を、外務省はこう発するべきでしょう。

“海外の交通機関を利用する場合は、パイロット及びキャプテン、または運転士など、安全を管理する人を確認しておきます。これは国内の宿泊施設を利用する際に、非常口を確認しておくことと同じぐらい重要です”

 曖昧表現にしているのは「外交的配慮」です(笑)。

 セウォル号について船長の行動は、国際常識からも人道上からもすべてに問題があるのですが、どうして修学旅行の高校生達に船内に居続けることをアナウンスしたのかに疑問符がつけられています。

 これも日本のマスコミの不思議なところ。SOSを告げた珍島海上交通管制センターとの交信で、繰り返し救助の船はすぐに到着するのか、またその数を尋ねています。

 そして船長以下、大半の乗員がいの一番に逃げ出しています。

 この2つの事実を直結すれば、ひとつの結論しか浮かんできません。

「自分たちだけ助かるため」

 高校生の多くが甲板に上がっていれば、優先順位が彼らにあるのは明らかで、救出船が大挙して押しかけるならともかく、少ない数なら命のイス取りゲームです。

 そして高校生の存在を知らせないために「その場にいろ」と指示した・・・残酷ですが、そうとしか考えられません。

 この残酷さは船長個人のもの・・・と鵜呑みにできないのは、先のアシアナ航空で無事なスッチーが、脱出する乗客を傍観している映像の記憶からです。

 どちらの事故でも献身的なスタッフの存在は確認されていますが、それが少数派ならば、それが国民性・・・とはいいません。きっと船と飛行機のクルーにその傾向があり、地下鉄事故も偶然なのでしょう。

 それからそもそも論でいえば、日本で同様のSOSが発せられたとき、真っ先に取り寄せられるのが「乗客名簿」で、これによりテロの危険性をチェックでき、また救出しなければならない人数のあらまし、また、名簿から子供や年寄り、病人の存在を確認することで「優先順位」をつける・・・ことすらしないお国柄なのでしょうね。

 正しき批判は相手を思えばこそ。セウォル号を報じる日本のマスコミの残酷さに呆れています。

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