裁量労働制は「悪」ではない


 働き方改革と掲げながら、外国人の高度人材と称して移民政策の布石を打つかの安倍政権。野党が突っ込むポイントは呆れるほど、ありながら、安倍政権を支える我らが野党は「触れない」という積極的サボタージュで、今日も明日も政権維持に奔走します。

 それどころか「働き方改革法案」の提出そのものを阻止して、国民生活を置き去りにし、安倍政権を支え続けます。もはや狂信的安倍政権の支援者といっても過言ではありません。

 ざっくりと理由を述べれば、「働き方改革法案」における「裁量労働制」の厚労省が用意した政府の説明で、

「裁量労働制を採用した方が残業時間は短くなる」

 とあったものが間違いで、データの取り方から疑念があったというもの。だから法案そのものを取り下げろ、とかなんとか。

 今回のテーマは「裁量労働制」。

 経験に頼る私見ながら、裁量労働制を採用する職場では、総労働時間は増えます。だから、説明は間違いなのですが、しかし、それはすなわち「悪」を指しません。

 裁量労働制とは、労働時間の観点からみれば、一定の結果を出しさえすれば、その時間は問わないというもので、週40時間労働のところ、半分の20時間でもOK。

 実際の運用は企業で異なりますが、出退社時間を問わないフレックスタイムと組み合わせて運用されることが多く、午前10時から午後3時までなど、特定の時間帯の勤務を義務づけた「コアタイム制」による運用も少なくありません。

 そして報酬は一定額なので、週当たり40時間の労働が、80時間になったからと残業代は支給されません。

 これをもって野党どもは、「奴隷労働になる」「搾取される」と大騒ぎするのですが、これへの反論は後に述べるとして、たしかに私が務めた、あるゲーム開発会社はこれに近いものがありました。

 完全フレックスタイムを掲げながら、出社は朝10時と決まっているところに首をかしげましたが、「裁量労働制」との説明で、案内されたオフィスに目立った「空席」は、プロジェクトが終了し、次の開発まで「自宅待機」になっており、その間の給料は当然支給されているとの上司の説明に納得し、勤務することにしました。

 働き始めてすぐに異常に気づきます。当初説明された終業時間になっても、誰一人席を立たないからです。それも毎日。

 求人票には18時30分と書かれた終業時間は、建前に過ぎず、本当はこうでした。

「最寄り駅の終電時間−会社から駅までの徒歩時間=退社時間」

 簡単に言えば「終電で帰る」です。そして社是は「仕事は創る」。

 だから、仕事が終わっても、帰る社員はいません。さらに、男性社員など、会社から徒歩30分のところにある、借り上げたアパートの一室で雑魚がスタンダード。

 役職付きは二段ベッドで寝ることができますが、平社員は雑魚寝です。毛布だけは提供されますが、クリーニングが行き届いたとは口が裂けも言えない代物。

 そんな会社です。目立った空席のいくつかは、心身を病んで休職中ならマシな方で、「失踪」した人のものもあり、さらに驚いたのは、それが社内では珍しくもないエピソードだったことです。

 私はどうしたか。

 最初の就職先がソフトハウスで、ここは入社した翌年から、コアタイム制のフレックスタイムになり、その待遇は社員が勝ち取ったもので、労使の関係が非常に良く、残業代も支給される、いま振り返れば天国のような会社でした。

 その経験があったので「フレックスタイム」との額面通りに、ある程度、気ままに出社して退社していると、上司どころか社長の呼び出しを喰らうほどのプレッシャーがかけられ、後半はなかば意地の張り合いのようになりましたが、結局は辞めました。

 奴隷契約のような企業、といってしまえばそれまでですが、そんな会社に勤め続ける人もいて、最たる理由はこちら。

「仕事が好き」

 ゲームが好きで、プログラミングが好き。イラストを描くのが好きで、音楽を創るのが好き。

 そうした人たちにとって、勤務時間という感覚はなく、毎晩夜8時を過ぎると支給される500円の「夕食補助費」を楽しみにしており、奴隷労働ではなく、毎日小遣いをくれる楽園のような会社ということでしょう。

 搾取だ! と批判する人もいるでしょうが、給料が安くてもやりたいことをやりたい、と願い実現すること、その環境を提供しているとみることもできます。

 そしてそれを「イヤ」と思う私は辞めて、会社もそれに応じたのです。だから、特段の悪感情は持っていません。合わなかった、と思うだけです。

 むろん、暴力を筆頭とした強制力をもって長時間労働をさせるのは論外。心理的プレッシャーも同じく。だから、これらへの法的な縛り、公的な介入、労働者保護の枠組みづくりなどは、積極的にやるべきと考えますが、単純な労働時間だけの議論は、やりがいを奪い、市場の活力を削ぐことにつながりかねません。

 国民のために政治をしているのなら、ここを議論とすべきなのですが、政府や厚労省のミスをあげつらい、それを政権全体の責任へと拡大し「倒閣」を目指す野党に見つけるのは「野心」だけです。

 そして安倍政権の失政を見逃します。

 裁量労働制へは「社員に責任を押しつける」的な批判もあります。

 これも経験済み。

 営業職で入社したとある会社。「営業手当」のなかに残業代が含まれるとの説明で、やはり裁量労働制でした。営業職なので、成果報酬もあり、結果を出せば報酬が増えるとの説明です。

 とあることから新規事業を立ち上げることになりました。それは成果報酬の埒外にありながら、作業量だけは多く、休日出勤に残業ましましの日々。

 妻と結婚して最初のクリスマスを、妻と会社の応接室で過ごしたのは、この新規事業を無給で手伝わせていたからです。

 本業が頭打ちどころか、じり貧のなか、新規事業への会社の期待は高いものがあり、だから野放し状態で仕事ができたわけですが、反面、従来の枠組みにない取り組みで、さらには利益も不安定だったことから、待遇的なフォローは一切ありません。

 新規事業はそれなりに順調に立ち上がっていたある日、営業車を運転していての信号待ちの停車中、追突されて軽いむち打ちになりました。

 この時、会社から一切のフォローがないどころか、

「相手の保険が下りるから会社の保険は使わない」

 と、見舞金すらでないことには呆れたものですが、後に会社の方針に納得がいかず、もめてこじれて、最終的には私が土下座するか、退社するかのどちらかになったとき、退社の決断ができた理由のひとつはこのときの会社の態度によります。

 困ったときに助けてくれない会社にいる必要はない。

 ピーク時は一ヶ月以上も休みがないことはざらで、朝4時に起きてすぐに自宅で仕事をし、夜10過ぎに帰宅してから、日付が変わるぐらいまで仕事する日々。

 打ち合わせから実務まで、さらには入金管理どころか、仕上がった印刷物の引き取り作業でフォークリフトを操り、デザインワークではマッキントッシュを駆使する。当時の私のキャッチフレーズは

「マックからフォークまで」

 裁量労働制なので、早出も残業も、休日出勤への手当はありません。流石に「代休」は貰えましたが、代休は溜まり続け、平日に代休を消化しながら自宅で仕事をしたこともあります。

 そんな私の働きぶりを、知っているのは「お客」です。

 会社と揉めていると、ある社長に愚痴をこぼすとこういいます。

「ウチはミヤワキさんに仕事をだしている」

 だから独立した直後、労働時間は半分以下となり、月収は三倍以上になりました。

 裁量労働制の名の下に、社員にすべてを押しつけるような会社があったとするなら、いずれそこの社員が、私と同じような決断をすることもあるでしょう。

 実際、「営業職」の場合、お客を持って独立することは珍しくなく、あるいはライバル企業に「移籍」することだってあります。

 つまり裁量労働制とは、企業にとっても両刃の剣になりかねず、企業と社員との間に「Win=Win」の関係が成り立つように制度設計しなければ永続できない仕組み、と見ることもできるのです。

 法的にこれを支援するなら、裁量労働制で契約した社員やスタッフの、移籍や起業を後押しするなり、元の雇用先に阻害させない枠組みづくりでしょうか。

 かように裁量労働制を奴隷契約、おしつけ業務にさせないための法的整備はいくらでも可能で、それこそが野党の仕事ながら、野党は「モリカケスパ」のつぎに、罪にすらなっていない「強姦」を掲げ、そしていま、ひとつのデータミスをもって「働き方改革」のすべてを阻止しようとしています。

 いわゆる「働き方改革法案」には、長時間残業の規制や、同一労働同一賃金など、それぞれに議論は必要ながらも、現在の枠組みでは保護しきれない労働者のための、法整備も含まれています。

 これすらもさせない現状維持は、経団連など企業関係、業界団体を喜ばせ、政権を支えることにもなるでしょう。

 野党がはしゃぐ、もとい活躍するたびに安倍政権の政権基盤が固く、強くなっています。

 いずれにせよ「裁量労働制」は「悪」って発想は、国民は自己責任で勤務先を選べず、自己決定による仕事もできないという、つまりは「国民はバカ」ということです。

こちらは関連した動画↓
■「裁量労働制」は労働時間を増やすのか#40

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