ノマドはゴミ漁りと同じ

アベノミクスの喧噪の中、東京都の飲食店の倒産件数が2000年以降で最多となりました。従業員9人以下の小規模店が倒産件数の9割をしめます。

倒産理由をチェーン店の拡大、それに伴う低価格化などをあげますが、わたしはここに「ノマド」を加えます。

ノマドとは本来、誇り高き遊牧民を指しますが、彼らではなくその実態を現すには、生態系においてはゴミあさりや腐肉あさりを意味する「スカベンジャー」が正しいでしょう。

ここでいうノマドとは、佐々木俊尚氏あたりが言いだして広まったもので、もうこの人はジャーナリストというよりエヴァンジェリスト=伝道師で、ITやネットという神を広めるために活動しています。

かつてはほぼ同時期に興った「ネット教 梅田望夫派」が最大勢力でしたが、こちらは教祖がネットから将棋に改宗したがために瓦解し、いまや佐々木俊尚派が最大の信者数を誇るといってもよいでしょう。これに新興の「ネット教ツイッター主義 津田大介派」が挑む展開ですが、これは余談。

余談ついでに佐々木俊尚氏はノマドの前は

「グーグルが既存のビジネスを破壊する」

と預言しましたが、これはまだ破壊される気配するありません。収入の9割を広告で稼ぐグーグルにとって、既存のビジネスとは大切なお客様であり、その破壊とは自殺を意味します。

既存の広告代理店を破壊するなら、かすりましたが、人の褌で金を稼ぐ泰斗である広告代理店は、ネット検索でもしっかり企業の代理として食い込んでおり、これまた預言は外れています。

ダン・ガードナーの『専門家の予測はサルにも劣る』によれば、予言者達の多くは「時期」を曖昧にすることで「結論」を先送りし、預言が外れたという結論に到達しないように論陣をはります。

そしてノマドの次は「キュレーター」で以下同文。

ノマド(ワーカー、ワーキング)とはネット辞書の「goo辞書」を引けば

<自宅や会社のオフィスではなく、喫茶店やファーストフード店などでノートパソコンやタブレット型端末などを使って仕事をする人。ノマド族。>

とあります。ここに知人の事務所や、取引先の間借り、図書館などの公共施設まで含めるという説もありますが、構造的には同じで、ノマド=スカベンジャー説を理解する上で、先の辞書の説明が簡潔としてこちらのみで説明を続けます。

そしていきなり結論です。

「ノマドにビジネスを語る資格なし」

もうひとつ、

「ノマドとの取引は気をつけろ」

遊牧民としてのノマドが定住地を持たない理由は、家畜の餌となる牧草を枯らさないためであり、「浮浪」しているのではなく、季節ごとにほぼ同じ場所を周回しており、地球市民的な視点で見直せば、遊牧民とは

「屋根も壁もない巨大な家」

に住んでいるとみることもできます。歴史的には騎馬を用いる彼らは「騎兵」としての活躍が刻まれ、文化人類学的にみれば、広範囲な移動文化を持つ彼らによる交易がもたらした役割は重要です。

つまり遊牧民にはギブアンドテイクの原則に基づいた存在価値があったのです。

それでは「ノマド」はどうでしょう。先の定義によれば喫茶店やファーストフード店で仕事をします。コーヒーの一杯は飲むでしょうから、その経済効果はあります。しかし、どれだけのメリットがあるのでしょうか。試算してみました。

わたしは絶対に自分から入店しないし、テイクアウトでも注文しないスターバックスコーヒー。理由は不味いから。味覚は好みに、主観に過ぎませんが、不味いものは不味い。そもそもコーヒーという香りを楽しむものに、添加物をいれる発想も文化もわたしの価値観では認めていません。が、他人の文化を否定はしません。だからお好きな方はお好きなように。こうしてわざわざ好みを明記したのは

「ミヤワキが書いていたな」

ということを好意と受けとられたくないからですが、これまた余談。蛇足ながら、竹の塚駅前の「岡本珈琲」の豆を使い出してから、この傾向はさらに強まっております。こちらは「美味い」と断言します。

で、スターバックスコーヒー。

場所を銀座とします。JR山手線有楽町近くの銀座マロニエゲートにある店舗はプレスリリースに依れば、364.34平米で役110坪。

若干古い2011年度下期のデータでは銀座の商業施設の月額賃料の坪単価は45,100円。すると単純な30日計算で

497万9313円

が家賃となります。これを日割りすると

16万5977円

となり、最長の15時間営業として

11065円

が一時間当たりの所場代・・・賃料です。

リリースに120席とあるので、一席当たりの1時間の賃料は

92.2円

と割り出されます。ただし、これは「満席」での計算。空席によりこの割合は高まることはこの計算ではいれていませんが、仮にひとりしか客が以内状況では先の11065円が一人の客のために支払われている賃料となります。

ここにスタッフの人件費が加わります。社員や本部スタッフによる販管費(会社を運営するすべての経費も含め)はここではいれないアルバイトだけの直接経費だけです。

募集要項では950〜1150円とあったので、計算しやすくするために時給を1000円とします。一般的に社員は社会保障費などを含めて、支給額の倍の人的コストがかかるといわれており、募集要項を信じるなら、スターバックスコーヒーの福利厚生は手厚く見えます。

月額15000円までの交通費や、社会保険が完備され、週一回のコーヒー豆支給・・・は原価ベースなので安いとしても、採用コストなども含めて、時給の1.5倍が実際にかかるコストとすれば、実質時給は1500円。

注文を受ける人、コーヒーを淹れる人、その他調理をする人をならして考え、さらにテーブル清掃やカップにかかるコストを一人の接客当たり5分とすると、

125円

がかかり、先の所場代と合わせると

217.2円

となります。これに光熱費と原価が加算されます。スターバックスの原価率は直近のIRによれば26%で、300円のコーヒーなら78円を加えると

295.2円

これから粗利を導き出すと

4.8円

まだ、光熱費も販管費も加えていません。これではスターバックスは倒産してしまいます。さらに最近、ノマドとして売り出し中の

「安藤美冬」

なる・・・敬称を略しているのは足立区を小馬鹿にしているから・・・侮蔑には侮蔑をとハンムラビに従います。まぁもともと著者に対しては敬称はいらないのですがね。

で、安藤美冬。昨年にTBSの「情熱大陸」に登場したのですが、その中で「無線LAN」がついている飲食店を探し歩いていました。つまり、こうした原価に「無線LAN」の通信費が加わります。

しかし、世の中、ゴミあさりのスカベンジャーばかりではありません。

コーヒー一杯を飲んだらすっと席を立つ人も沢山います。すると地代家賃はもちろん、客が居なくなれば

「とっとと片付けることができる」

ことから人件費も合理化されます。

つまり「ノマド」の正体はこうしたお客のおこぼれにより仕事場を得ているのであり、生態系におけるスカベンジャーとは、自ら命がけでハンティングすることもなければ、大地を耕し実りを得ることもないように「おこぼれ」で命をつなぐものを指すそれと同じだということです。

ランチタイムなどのピーク時なら最悪です。店の営業においてはお荷物でありウィルスです。これはスターバックスに限らず、ファミレスやマクドナルドまで広げると、この手のばい菌は少なくありません。

食事処は食べる場所、食べ終われば席を空けなければなりません。

「そんなのわたしの勝手じゃない」

その通り。あなたが森永卓郎や荻原博子や一生独立する気持ちのない会社員や、与えられた給料だけでやりくりする専業主婦なら否定はしません。肯定もしませんが。そして「たま」のことまでやり玉には挙げません。

わたしが問題とするのは「ノマド」として、それをビジネススタイルと広言する阿呆どもです。

バカでも分かるように説明します。

「自分だけ得すれば良い、と思うものは信用されない」

ビジネスでも同じ。短期的に儲けるのは博打と一緒で可能です。中長期で見て裏切り続けること、出し抜き続けることは不可能です。

例えば金のない起業直後にこうしたスタイルをとることまでは否定しません。しかしそれを「生き方」とまで宣言する安藤美冬ならばそれは誇り高き遊牧民「ノマド」ではなく、ゴミあさりや肉食獣の食べ残した死肉を貪る「スカベンジャー」です。

客のいない時間に利用すれば店にもわずかながら金がはいる。という反論もあるでしょうが、自分だけ得すれば良いという浅ましい発想の人間に「ビジネス」を語る資格はないという指摘です。反対に客が居る時間、ノマドワーカーは仕事をしないのでしょうか? ならばより取引などできません。

わたしも夏場、避暑として近所のマクドナルドやファミリーレストランに避難することはあります。ノマドと嘯いたこともあります。

なら同じではないかという指摘にはあたりません。なぜなら、

「事務所」

があるからです。それは気分転換であり、ましてや

「自分だけ得すれば良い」

などという発想はありません。

先日も20年以上利用しているそば屋で「もやしそば」と「カレー南蛮」を出前でとりました。その領収証をみると1300円で、安いものを頼んで悪かったと次のときはカツカレーをプラスして、我が身の脂肪増加という犠牲を払うぐらいに、馴染みの店には儲けて欲しいと願い、財布が許す限りそうしています。

すこしまえに、マクドナルドが月曜日のモーニングサービスとしてハンバーガーを無料にしました。するとわたしが観察した限り、ハンバーガーだけを受けとって店を出ていく客が6割を占めました。それもオッさんばかりです。

近所のスーパーマーケットで「するめいか」がおひとり様2杯限りで一杯100円、おひとり様一個限りで玉子が98円で販売されていました。

すでに年金生活であろう老夫婦が、それぞれリミットまで、つまりはふたりで「するめいか」4杯と、玉子2パックだけ購入していきました。

無料バーガーついては以前ブログに書きましたが、このオッさんたちをわたしは認めません。が、彼らがライフスタイルを語ることもなければ、ビジネスについて偉そうなことをいわず、足立区を小馬鹿にすることはないでしょう。老夫婦にしても同じです。

しかし、ノマドは違います。

高尚な理想を垂れ流し、その足元を支えるのは死肉です。

ノマドとは利己主義者の告白であり、他人の信条を折伏するような学会員ではわたしはありません。ただ、これから起業を目指すのならスカベンジャーだという厳然たる事実、ついでにいえばそういう人間に仕事を発注する経営者は少ないということを覚えておいてください。

さらに「アベノミクス」にまで話しを広げれば、ノマドのようなスタイルが本当に増えれば、景気の腰を完全に折ります。本当にとつけたのは増える訳がないから。ノマドワーカーとは、それを薦める佐々木俊尚や安藤美冬という啓蒙家だけが儲けることができる時代の徒花です。

もっとも昭和時代にも「ノマド的」な働き方はありました。ただ、「居候」や「間借り」と呼ばれ軽んじられ、あるいは起業直後の「いまだけ」という野心を隠さないすがすがしさがあり、いまの開き直りとは雲泥の差です。

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