非常によくできた「我田引水」本です。
「ロングテール」でもいっぱつ噛ました著者の新作。
・・・また、これに躍らせる人がいるのが滑稽。
まず、書籍について語っておきます。
なるほど多面的に「フリー」の実例を紹介し、ひとつひとつを
独自の視点で解き明かしていきます。コンサルタントのネタ帳と
しては秀逸な出来です。
しかし、本書で用いられる「フリー」の定義が巧妙です。
章ごとに微妙にニュアンスが異なり、それをこう述べます。
「それもひとつのフリーの形態だ」
まるで色即是空空即是色。フリーとはその形態も定義もフリーで
あるといわんばかり。
反論をいちいち取り上げて「論破」するところにカタルシスが
あるのでしょうが、その「論破」した「論点」がずれているように
感じるところもフリーの魔法だと言わんばかりです。
ところが不思議な魅力があります。次はどんな強引な展開がはじ
まるのか、あるいは事例が紹介されていくのかと読み進めてしまい
ます。
そして残り僅かになった時に気がつきます。
「あ、週プレの手法だ」
週刊プレーボーイ、または週刊SPA!といった雑誌の手法です。
ある企画を立て、それを強引に成立させる手法です。
最近では「クーガー女」のように、実在性が乏しくても、傍証を
あつめて正論に持ち込もうとするあれです。「便所飯」なども
少数派を多数派のようにかき立てるのは雑誌の悪弊というか、芸
で笑って許せるものなら楽しむのが勝ちです。
前著「ロングテール」も、グーグルとアマゾンでしか「立証」
できないビジネスモデルを新潮流のように書き連ねていた、著者
らしい方法と苦笑いした時に気がつきました。
著者は雑誌編集者です。なるほど。
その雑誌企画に躍らされている日本のIT著名人達はつまりは
こういうこと。
「この夏、ヤレるリゾート、ヤレる海」
という週刊誌記事を片手に、徘徊する男子。
そして本書を読むにあたってワンポイントアドバイス。
フリー(無料経済)を否定したい人は書籍を「購入」してください。
反対に信奉しているなら図書館やネットで検索を。あるいは
「古書店」でもOK。なぜなら著者はこういいます。
「すべてはフリーになりたがる」
だからフリーに近づくディスカウント店で。
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