サッカー日本男子代表が、シンガポール相手にまさかのスコアレスドロー。得点力不足は日本代表の伝統芸、いや生活習慣病。
やる気もそこそこしかないイラク相手に「快勝」して喜んでいるようなチームでは、当然と言えば当然です。
格下相手は「圧勝」しなければなりません。点差ではなく内容で圧倒することで、苦手意識を植え付け、その後も続く対戦を有利に導くためです。
海外の強豪国が、日本も含む格下相手に「えげつない勝ち方」をするのはこれが理由です。
そして昨夜、埼玉スタジアムで開催されたワールドカップ予選は、ある意味「良いもの」を見させてくれました。
シンガポール代表は、かつての日本代表です。実力で勝る相手に「負けない」ためのサッカーをしていました。集中力を切らすことなく、そしておごることないひたむきさが、ゴールキーパーの神がかり的なセーブを呼び込み、容姿は違えど強豪国の猛攻を防ぐ姿に曽ヶ端や川口を思い出しました。
かつて坂の上の雲を目指し、汗水垂らして駆け抜けていった、我らが代表の姿を、シンガポール代表に見つけました。試合後、彼らに心からの拍手を贈りました。
アジアのサッカーも進化しています。日本だけが足踏みし、むしろ後退しています。
個人技と身体能力に劣る日本が、パスサッカーを目指すのは構いませんが、目指す方向が「パスの精度」「パスの回数」になっており、どうやらサッカーという競技が、相手のゴールマウスをゆらさないと勝てないものだと知らないようです。
そこに驕りが加味されます。
「俺たち、そこそこいけてねぇ?」
シンガポール代表をなめて勝ち点3を逃します。
ガチガチに守っている相手に対して、ミドルシュートや左右からの切り込みが有効であるのは、サッカー経験者でなくても、ただのファンですら知っていることです。
それを昨日の、というよりこの数年のサッカー日本代表男子は知りません。小学生からやり直すべきでしょう。
また、テレビ中継なので本当のところはわかりませんが、伝え聞こえてくる音声から、サポーターも劣化しました。
かつて、その埼玉スタジアムのこけら落とし。工藤静香氏がそのフラットとシャープを繰り返す美声で「君が代」を歌ったとき、オペラの本場からやってきたイタリアチームに申し訳ない気持で一杯でした。
トッティやデルピエロの活躍していた時代のイタリア相手ということから、敵にも声援が飛びましたが、なにより緩慢なプレーやミスした日本代表にはサポーターからブーイングがとんだものです。私も「おい、バカ」と何度さけんだものか。
ところが今は、最後まで勝利を信じて・・・と声援ばかり。罵声も怒声も選手の力になることを知らない、だからアウェイゲームに弱くなったのでしょう。それはまるで、「優しい声援」という心の高カロリー食品を摂取し続けた結果、精神に脂肪が付き動脈硬化をおこした「生活習慣病」です。
試合の度に、渋谷のスクランブル交差点でのらんちき騒ぎが取り上げられるようになったぐらいから、サポーターは優しく代表選手を甘やかすようになり、弱体化が進んでいるように感じます。
正直な感想です。昨日のような試合、そして不甲斐ない試合にも暖かな声援だけを続けるサポーターが、スタジアムを陣取る限りにおいては、一度ぐらいここらでワールドカップ出場を逃しても良いのではないかと。
一方の女子代表「ナデシコ」。デフェンディングチャンピオン、負われるものの辛さを見せつけられるような試合展開ながら、なんとか最低限のノルマは達成。
一発勝負のこれからが本番ですが、安藤梢選手の分まで、一試合でも多く戦って・・・今日の試合後の宮間あや主将のコメントを借りるなら「あと4回やって」と。