前回のブラジルワールドカップの決勝戦は「ブラジル・ウルグアイ」でした。今大会を見ても分かる異様な空気の中、ブラジルが先制し、大会委員長のジュール・リメすらブラジルの優勝を疑いもしません。
しかし、勝者としてピッチに立ったのはウルグアイでした。これがブラジルにおいて「マラカナンの悲劇」と語り継がれる事件です。
ウルグアイチームのウイニングランに、スタジアムに駆けつけたブラジル人たちは悔し涙を流しながら勝者を讃えます。
勝利の夜、暴動を怖れ祝勝会を控えたウルグアイ。主将のバレーラは宿舎を抜け出し街にでます。レストランに入り、入口近くの席に腰を下ろしビールを注文します。
ひとりの若者がバレーラに近寄り本人かと確認し、バレーラは意を決して頷きます。
少し長いのですが、若者の言葉を引用します。
“あんたはすごい男だよ・・・。体を張ってブラジルの攻撃を食い止め、チームを鼓舞し続けた。セレソン(※筆者注:ブラジル代表)だけじゃなく、すべての観衆を敵に回して戦い続けた。そりゃあ、俺たちはあんたを野次りまくったさ。あんたが憎かった。でも、心の底では、あんたがどれだけ勇気があるか、よくわかっていた。決勝点をあげたギッジャは、確かにすごかった。でも、ウルグアイの最大の勝因はあんただ。あんたがいたから、ウルグアイは勝てた。あんたみたいな勇敢な男がいなかったから、セレソンは負けた。”
この後、若者はバレーラを讃え、泣きます。そしてレストランにいたみながバレーラを囲み、彼の勝利を称え、セレソンの悲劇に涙します。
good loser。
熱く激しく応援し、勝者を讃える。ブラジルの層の厚さとは、それを応援する国民によるのだと教えられます。
またバレーラが素晴らしい人格者で、自軍へのラフプレーにファウルを取らなかった審判に近づき、文句をいうのかとみなが固唾をのんで見守る中、こういいます。
「もしうちの選手が同じようなファウルをしたら、容赦なく退場処分にしてくれ。あんなひどいプレーをする奴には、うちのチームでプレーする資格などない」
ちなみに先週の水曜日に読了。
日本のサッカーに足りないのはバレーラと、バレーラを讃える若者です。
■マラカナンの悲劇: 世界サッカー史上最大の敗北
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