愛しさと愚かさとグーグルストリートビュー

 立ち位置により発言は異なります。

またおかれている環境で世界の色は異なります。優しい人に
囲まれて過ごす日々は、春の日溜まりに干した布団にくるまれる
ようでしょうし、生き馬の目を抜く世界に身をおければ、背中に
何かを感じた刹那ナイフが突き刺さっているかのごとき緊張を
友としなければなりません。

てなわけで私は「IT業界人」の発言を、口の端だけあげて
笑うことが少なくありません。

ま、あなたたちの世界ではそうでしょうが、あなたたち以外の
世界のほうが遙かに広く、大きな影響があるのですよ。と。

先日の「産経新聞」にて「グーグルストリートビュー」が
問題提起されていました。要約すればプライバシーやらの
紋切り型の切り口に興味が失せたのですが、大メディアの
お為ごかし・・・もとい、作法として「両論併記」がなされ
ておりました。

そこに「ITコラムニスト」とあったので目を惹きました。
わたしもこう名乗っており、実際にギャラをいただき連載し
ているものが「コラム」であることが理由です。

両論併記から片方はグーグルストリートビューへの危険性を
指摘し、ITコラムニストは擁護します。前者の論は凡庸でし
たので割愛しますが、後者は論の幼さというか楽観主義者と
呼ぶか頭を抱えるのですが、まぁ梅田望夫さんにも通じる
ものがあります。

「具体的なリスクが明確でない以上、チャレンジを否定するな」

公共性というものを無視すればこれはその通りでしょう。
自分の家の庭で何やろうが勝手です。しかし、家を出ての
行動をこう考えます。

「リスクが明確でないからこそ慎重さが求められる」

クスリは飲み過ぎればすべて毒で、毒になる許容範囲がわかる
ことでクスリとして流通しています。もちろん、これも完璧では
ないのですが、しかし「生死」に関わるという大儀から見逃され
ています。

自動車も人を跳ねれば殺してしまうので様々な交通法規で
規制します。

さてグーグルストリートビューは生死を左右する緊急性や
人類の発展に与える社会性をもっているでしょうか。

この答えに入る前にグーグルマップスに

「家庭訪問」

で生徒の自宅位置を確認するために書き込みをしていた
先生がおり、設定を「非公開」しなければならないところを
「公開」して大騒ぎとなっています。

「IT業界人」ならこういうのではないでしょうか。

「グーグルマップスが悪いのではなく、非公開にしなかった
先生の個人情報に対する意識の低さの問題を混同してはな
らない。この論でグーグルマップスを非難するのであれば
ナイフで殺人が起こったときにナイフを製造者、販売者も
非難されなければならない」

的な。なるへそ。
でもね、端的に言えばこれは詭弁です。

もちろん、グーグルマップスもグーグルストリートビューも
それらが悪いとは、悪いことをするとは考えていません。
しかし、どちらのサービスも

「個人情報への意識も、公開か非公開かの設定の仕方も
覚束ない素人でも利用できてしまう」

ことの危うさを棚に上げているのです。クスリで言えば
薬学の知識がなく劇薬を扱い、クルマに例えるなら免許なく
ダンプカーを操作するようなものです。

だからそれは個人の問題だというかも知れません。
でもね。個人を律することも充分な知識を持たない人間でも
参加しているのが今のインターネットの世界なのです。だから
こそ、提供する側の「節度」が必要ではないかというのが
グーグルストリートビューへの私の考えで、地図が人類の
発展に寄与したのは旅の安全と、為政者の情報管理であり
未踏の地を版図に組み込むためであり、街角の風景では
ありません・・・ので、楽しいですがそこまで大層なもの
ではないのです。

件のITコラムニストもネットリテラシーの高い、知的刺激に
溢れた世界に住んでいるのかも知れません。しかし、世の中の
大半は愚かです。それはそれは愛すべきほどの愚かさで。

グーグルストリートビュー。
愛すべき愚かな庶民には過ぎたおもちゃかと。

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