リベンジポルノとは? その被害の実状と対策

リベンジポルノとは?

リベンジポルノとは元交際相手のあられのない姿を、ふられた腹いせや復讐のためにネット上に公開する卑劣な行為です。そのままずばりの性交渉中の写真だけではありません。彼女(彼氏の場合もあり)の「顔」とヌードモデルの「体」を合成した「アイコラ」が公開されることもあります。※アイコラとはアイドル・コラージュの略称ですが、合成写真の代名詞として定着しています。

日本で一般的に知られるようになったのは、三鷹の女子高生ストーカー殺人事件です。鈴木沙彩さんが池永チャールストーマス容疑者に刺殺された事件で、テレビや新聞などの報道では「ストーカー」の部分ばかりが、クローズアップされましたが、事件の背景には「リベンジポルノ」があり、テレビコメンテーターたちが奥歯にものを挟んだような表現をしていたのは「核心」に触れることが、被害者の冒涜につながると自主規制したからでしょう。

ネットでは事件直後から話題になっていました。池永チャールストーマス容疑者は犯行直後から、ネット上で犯罪を告白しており、本人なのかとネットは騒然となります。そして同時にネット掲示板にリベンジポルノの存在を書き込んでいたのです。

被害者が未成年であり、死者の冒涜を望むものではないので、ここで詳しくは触れませんが、直後は具体的な営みの動画が閲覧可能となっており、多くの裸体写真も閲覧できるようになっていました。そしていまでもその一部はネット上に拡散しています。

リベンジポルノ
いまでも特定のキーワードで検索すると被害者の画像が表示される。※検索結果をキャプチャし、一部を加工

リベンジポルノの被害者はなぜ?

脅迫により撮影された裸体写真や性交渉の動画なら、それだけで犯罪です。ところがリベンジポルノの問題は、大半の被害者が許可し、むしろ望んで撮影しているところにあります。「ジドリ」と呼ばれる、スマホやガラケーを使った自分で自分を撮影するもので、自らの性器を拡げている画像がネット上に拡散されています。

あるリベンジポルノを追ってみます。同時に拡散されているため、時系列は表情と髪型の変化からの推計ですが、当初は制服姿などの着衣のように見られます。つぎに同じ制服でも胸元を強調したもの、下着姿とエスカレートし、タイマー撮影で陰部を両手で開くに至ります。

同じく推測に過ぎませんが、被害者の趣味と言うより交際相手、つまりは後に加害者となる相手からの「リクエスト」を受けて過激化したと見るべきでしょう。なぜならポルノ雑誌に散見する「男目線」だからです。女の子なら、自分が一番可愛い表情を見て欲しい思うものです。しかし、相手が望みを叶えてあげたいと思うのもまた女心です。そして取り返しのつかない写真を撮ってしまうのです。

リベンジポルノ急増の背景

リベンジポルノが急増した背景にあるのはIT機器の進化です。特にスマホの普及が果たした役割は大きいと言えます。実はリベンジポルノ自体は、古くからあるものです。写真のない時代は、あることないことを流布させた「怪文書」がリベンジポルノです。写真が登場するのはDPE機器の普及によります。

銀塩写真はフィルムの現像と、印画紙への焼き付けが必要で、写真館などプロの手が加わりました。そのとき「公序良俗に反する写真」は焼き付けを断られたのです。ところがスピードプリントを謳い文句に、機械処理による現像と焼き付けの「DPE」が普及すると職業倫理の乏しいスタッフも現れます。「イケナイ写真」を現像してくれる店の噂は同好の士によるクチコミで拡がり、写真によるリベンジポルノの素地が生まれます。

『スーパー写真塾』『投稿写真』、さらには『ニャンニャン倶楽部』など、素人写真の投稿雑誌が花盛りとなった90年代、いわゆるリベンジポルノと噂される写真が出回りました。ただし、「印刷物」ということから拡散力に限界があり、またインターネットの普及に伴い、素人ポルノはそちらに移行し下火となります。

スマホとは撮影機能と通信機能がついた小型コンピューターです。撮影した画像は現像せずとも閲覧できます。そしてネットに拡散することも容易です。つまり、スマホというツールの普及が、リベンジポルノのリスクを急速に高めたのです。

スマホにより拡大するリベンジポルノの被害

元交際相手の30代の女性を、個人撮影したあられのない写真を拡散するぞと脅迫した坂本竜馬(30)容疑者のように、リベンジポルノに年齢制限はありません。今後は高齢の容疑者、被害者も現れることでしょう。しかし、もっとも恐ろしいことは未成年がその被害者となり、加害者となることです。三鷹の事件はまさしくこれです。

素人投稿写真の時代、参加者の大半は大人でした。焼き付けのハードルだけではなく、現像した写真を保有し続けるのは未成年には困難だったからです。ところがスマホならデータです。数ミリ四方のマイクロSDに何千枚も収まります。そしてこれをチェックする保護者は希です。スマホにどんな卑猥な画像があっても、子供は笑って食卓を囲んでいることでしょう。

そして事件が起こったとき、加害者も未成年なら、リベンジポルノが互いの人生にどれだけ深刻な傷を残すか想像などできません。その場、そのときの感情による復讐が人生の全てと錯覚します。もちろん、リベンジポルノは大人同士でも起こることですが、多少なりとも人生経験を積み、自己責任を背負える大人と、子供をおなじく扱うのは、残酷過ぎはしないでしょうか。

筆者はスマホの規制を提言するものです。

ネットに拡散したリベンジポルノの行方

先の素人投稿写真との最大の違いは、デジタルデータは永遠に保存されることです。プリント写真とことなり、色褪せて風化することはありません。技術論でいえばスマホも含めたデジカメの一般的なフォーマットである「Jpeg(ジェイペグ)」は保存するたびに劣化していきます。ただし、それはわずかな劣化ですし、保存方法を変えれば品質を維持することができます。

ウェブ上に公開された画像は、事実上、誰でもダウンロードできます。保存したデータをまとめて、自分のサイトのように公開することも容易です。そして容姿端麗な女性や男性の映像は「再利用」されやすいのです。

目的は主にアフィリエイトという小遣い稼ぎです。アフィリエイトとは、ブログやサイトに掲載した広告を経由しての訪問や、それによる売上に対して報酬を得ることができるサービスです。

ブログなどで、こまめに記事を書いても、その報酬はわずかです。検索連動型広告の場合、筆者の調べでは、おおよそ全アクセス数の0.5〜0.6%ぐらいしかクリックされず、クリック当たりの報酬は40円前後。1000件のアクセスを得て200円になるかどうかです。

ところがポルノを筆頭とする刺激的な「ネタ」を提供すると、簡単にアクセスを稼げる傾向があります。画像のコピペはマウスの右ボタンで完了し1秒もかかりません。アフィリエイト狙いのブロガーは、ひとつひとつの記事への思い入れはなく、著作権や倫理的な問題への意識は希薄です。

幸いといえば不謹慎ですが三鷹の事件の場合、被害者が未成年であったことから、リベンジポルノが発覚当初から「児童ポルノ」にあたると風説が流れたことにより、逮捕を怖れたブロガーが転載に躊躇したことにより、爆発的な画像の流出を回避しました。

海外のリベンジポルノ事情

ネット上での「リベンジポルノ」は海外、米国からはじまります。個人的なサイトによるものは常に生まれては消えていましたが、「Is Anyone up?」というリベンジポルノに特化したサイトが火をつけました。

映画評論家の町山智浩氏の週刊文春での連載『言霊USA(同誌平成25年5月2・9日号)』のよれば、ハンター・ムーアという男がネット上の広告狙いで開設したもので、元カノや彼氏の名前まで登録できるサイトでした。後に買収され、サイトは閉鎖されますが、同種のサイトが雨後の筍ごとく林立したのです。

米国でも社会問題となり、カリフォルニア州では禁止する法律が施行されました。ただし、この法律は他人を貶める目的での画像投稿を禁止するものです。それに該当しないものは罪に問えません。実際、現地時間の2013年12月10日、リベンジポルノサイト「ugotposted.com」の運営者が逮捕されましたが、逮捕容疑は個人情報の窃盗などの、いわば「別件」です。

■米リベンジポルノサイト運営者を逮捕、数万ドルの利益か(AFP BB NEWS)
http://www.afpbb.com/articles/-/3004896

リベンジポルノ対策

効果的な対策は「撮影させない」「撮影しない」しかありません。仮に自分ひとりでの鑑賞用(その趣味がどうかとはともかく)として撮影したら流出の危機があると覚悟しなければなりません。

先月台東区を中心に、連続iPhone強盗がおこりました。スマホの紛失もときどき耳にします。こうして手元を離れたスマホに、あられのない画像が保存されていれば、いつ拡散されても不思議ではありません。

彼氏や彼女に画像を渡したら、もうアウトです。愛は移ろいやすいものです。「好きと嫌いは同じものでできている」とは、漫画家の西原理恵子が初期の名作『ゆうぼくん』で主人公の母親に語らせた台詞です。リベンジポルノを認めるものではありませんが、あなたの手から離れた画像はネットで拡散されるものと思っても大袈裟ではないでしょう。

恋は盲目で、恋愛中は相手のことを疑うことなどないでしょう。そして彼氏から、より過激な写真を求められれば、鏡に映った全裸の自分を写メにおさめて彼に送信するかもしれません。そして悲劇は起こりました。

再発防止に願いを込めて、あえてここに記します。

「裸の写真を手にした男が、その写真を手にしてすることは自慰行為」

そして男とは・・・と筆者が男としての私見かも知れませんが・・・大抵は馬鹿者です。手にした彼女の裸の画像を、友だちに見せることもあるでしょう。嫌がらせではありません。「自慢」したいのです。

画像そのものを見せずとも、口頭で自慢するものもいるでしょう。すると、その画像を見たいと好奇心を輝かせた、彼氏の友だち達が、彼の隙を見つけ、スマホの画像を盗み出すかもしれません。スマホ間での写メの転送など容易いことです。そして好奇心だけでリベンジポルノとなるかもしれません。

脅しではありません。先に述べたように、撮影した時点でリベンジポルノの対象になっています。

不運にもリベンジポルノの被害に遭ったら、迅速に警察に相談してください。このとき、恥ずかしいと思っても、すべて包み隠さず告げてください。詳細は明らかにされていませんが、被害者の動向や、警察のその後の同種の事件の対応から見ても、三鷹の事件で被害者が警察に相談した際、ここらの事情は伏せていた節があります。

不祥事が嘆かれる警察ですが、サイバー犯罪について警察は本腰を入れて捜査に当たっています。すべての情報を伝えることが、早期解決、被害を最小限に抑えるための必須条件と考えます。

ブログ村に参加してみました。宜しければ右バナーをクリックしてください→ にほんブログ村 政治ブログ メディア・ジャーナリズムへ
にほんブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください