ペニーオークション詐欺に絡んで、次々とタレントが「摘発」されています。この「摘発」とは警察によるものではなく、ネット上での「さらし」です。
まずは「ほしのあき」さん。ピースの綾部さんも認めましたね。ネットニュースでは小森純さんはスルーしているそうですが、早晩謝罪に追い込まれることでしょう。
それでは実際、どれくらいの「罪」に問われるかと言えば、詐欺の事実を知らなければ刑事罰は難しいでしょう。詐欺の立件には高いハードルが設定されているからです。なぜかといえば商取引や恋愛は「自己責任」が大原則で、恋の駆け引きに負けたのか、結婚詐欺なのかの判断が難しく、不当な価格か負荷価値かの区別は難しいからです。
だからといって見逃せと言うことではありません。「騙している」ことは事実で、罪の意識の有無は罪そのものに関係はありません。芸能人としての知名度を利用した小遣い稼ぎ、あるいはピース綾部氏のように友人に頼まれたからといって、嘘を流布する行為そのものが「騙す意思」があったわけですから。関わった芸能人は「人を騙すことに痛みを感じない人」と冷たい視線を送ってあげましょう。というか、芸能人がそもそも人を騙す職業だという開き直るのなら、それはそれで見事ではありますが。
ペニーオークションの大半が詐欺であることは、いくつかの連載でなんども指摘したことですが、ある連載では詐欺という指摘に校正がはいったことがあります。明確な犯行があきらかでないものは指摘できないという理由です。ペニーオークションって大手ネットサービスも手を出していて「大人の事情」もそこに絡んでいたとしたら、ペニーオークション詐欺の被害拡大にIT業界も手を貸したことになります。
それでは「詐欺」と断じた理由について。まず、社名や住所、代表者名が「画像」。これ、インチキサイトの典型です。商売において「名前を売る」というのははじめの一歩で、売れた名前は商売を有利にします。ところがネット上で、社名や代表者名を「画像」にすると検索エンジンにひっかからなくなります。社名で検索しても表示されないということです。わざわざ商売上不利にする設定をする答えは、「名前を広めたくない」から。すなわち「やましい」ところがあるということです。もちろん、デザイン上で「画像」にしている会社もありますが、単純な「一覧表」の形式で社名などの会社概要を「画像」にしていたら警戒レベルをあげる必要があります。
ペニーオークションを知ったのは、当社の専務が「カップヌードル シーフード味 1ケース」を落札したことがきっかけです。わずかな金額で本当に送られてきて、わたしも参加してみました。ペニーオークションに参加してまず気がついたのが運営システムのおかしさです。
その詐欺サイト(断定する理由は後に)では、登録すると入札に必要な何枚かのコインがプレゼントされます。また、毎日に何度も届くメルマガに記されたURLをクリックするごとに、コインがプレゼントされます。お試しと顧客誘導のため、あるいは射幸心をあるための「サービス」として・・・と素直に考えるなら「ジャーナリスト」を名乗りはしません。仮にコインを「購入」したときの費用と、無料で支給されるコインを計算すると、数日もせずにペニーオークションを提供するサイトが破産することがわかりました。ペニーオークションが公正に本当に運営されているなら、落札結果に投じられたであろう「コイン」を数えればわかります。
コインの購入費用は枚数などで変わりますが、おおむね50円〜100円未満です。間を取って75円として、1円単位でせり上がるルールなら10円で750円、100円で7500円です。たしかにこの調子ならサイトの運営に問題がないでしょう。しかし、無料で毎日コインを配っていれば、それを貯め込んだ無料の利用者が落札する可能性がり、するとサイトは大赤字です。記憶を辿るとこの詐欺サイトでは、登録するだけで100枚コインが貰えました。登録に必要な情報はメールアドレスだけです。フリーメールのアドレスは理論上無制限に作成でき、メールサーバをかんりできれば連番で何十万とメールアドレスを作ることなど造作もないこと。ネットの住民は暇人が多く、こんな僅かな手間で最新家電がゲットできるなら、飛びつきます。ゲットした家電はヤフオクで転売すれば現金化は容易です。そして群生相のイナゴが通り過ぎた後のようにサイトは潰れます。
しかし、そこはITです。IPアドレスをもとに制御をかけることができます。あるいは同じパソコンからは別のメールアドレスで登録できない、または当日に複数回の登録ができないなどと「制限」をかけることで、ある程度は防ぐことができます。ところが、これに対する制御も制限も一切かけられていませんでした。フリーメールアドレスをいくつか取得し、連続登録したら問題なく登録できたのです。疑念が深まります。
そしてその大量に取得した無料コインで落札を狙います。が、もちろん、できやしません。あと数秒というタイミングで、別の入札がはいり、締め切り時間が延長されていきます。
このペニーオークション詐欺サイトでは「自動入札」という仕組みがあり、一定金額まで他者が入札すると、自動的に入札し直すというものです。これを利用します。大量に貯めたコインを一括投入し・・・別のアカウントから手動入札でしかけるという作戦です。結果は大成功。
「締め切りました」
と表示され、そこにはわたしのアカウント名があります。それはすなわち落札・・・かと思った刹那、カウンターが再始動を始めたのです。締め切り時間間際になると入札が立て込むため、若干表示が遅くなることはあるでしょう。ところが「締め切り」のあとに、再始動とはこれは「詐欺」です。
わたしは元プログラマー。ファミリーマートのPOSレジにおける東京電力の支払い機能を組み込んだ男(あ、プログラム的には簡単なものです)。身分はプログラマでしたが、システム設計にも携わっていたのでいまならSEを名乗ることでしょうが、20年前のSEとはプログラマ業界では「親方」のような称号で、組織を統轄する能力をもったなければ名乗れませんでした。
話を戻します。プログラマからみれば、こうしたシステムを組む際に、もっとも避けなければならないことは「二重落札」です。そのため、締め切りの時点で、入札リクエストを受け付けないようにします。どこかに未来の党のように、締め切り時間を過ぎてから立候補者の名簿をだすようなことを許しては、システムの公平性が保たれないからで、もっとも確実な方法が「受付拒否」することだからです。
そしてコンピュータ処理ですから「締め切り」と表示されれば、締め切られたはずです・・・が、再始動したのは「自動入札ボット」を利用していたからでしょう。いかにも第三者が入札したかのようにプログラミングされたソフトで、こうすることでサーバには外部からのリクエストだと記録され、万が一、警察に踏み込まれた時でもいいわけができるようにです。ちなみに、弊社の専務のところに送られてきたのは「詐欺ではない証拠」なのでしょう。
その一瞬をついて、こちらが入札・・・した、後にボットがリクエストをだし、そのリクエストには「優先権」を与えておけば「再始動」ができるという寸法です。
また、この手の詐欺にありがちなことですが、2〜3ヶ月もすると、運営会社がかわり、アカウントが譲渡され、おなじくペニーオークション詐欺がはじまります。もちろん、新会社の概要も「画像」です。やれやれ。
とても立件が難しい案件をよく挙げたものだと今回は警察に拍手。ほしのあきさんは30万円では割の合わないダメージですが、それが「罪」というもので、この週末、選挙があり、報道がそちらに傾くチャンスを狙って、芸能人各氏の「自首」が相次ぐことでしょう。しかし、こうした「悪」を野放しにしているIT業界に批判の刃が向かないことのほうが、問題の根は深いのですが。