「ひよっこ」の人気に見つける月9が死んだ理由

「ひよっこ」の人気に見つける月9が死んだ理由

 政治界隈は騒がしいなか、今週末の2017年9月30日に最終回を迎える有村架純主演 朝の連続テレビ小説「ひよっこ」。ここ最近のシーズンのなかではトップクラスの視聴率を誇ります。

 開始時の視聴率はいまひとつで、とりわけ主演の有村架純は、社会現象的人気を博した「あまちゃん」で、主人公の能年玲奈(現在はのん)の母親役、小泉今日子の青春時代「若き日の春子」を演じてぷちブレイクしたこともあり、人気ぶりを比較されていました。

 家庭の事情で奥茨城から東京にでてきたあたりから人気に火がつき始め、とりわけ主人公の初恋役、竹内涼真演じる「島谷」との別れが訪れ、彼が登場しなくなり「島谷ロス」と大騒ぎされたものです。

 女性誌はもちろん、オヤジ週刊誌でもたびたび取りあげられ、様々な著名人が「ひよっこ」を語っていました。ところが、このドラマ評がいちいち外れ。間違いではありませんが、小説家やテレビ評論家、演出家など、それぞれの分野としての分析は正しいのでしょうが、「視聴者」が置き去りになっているのです。そしてそれこそが、かつてのフジテレビの金看板「月9」が没落した理由といっても良いでしょう。

 「ひよっこ」が人気を博した決定的な理由をあげればこれ。

「わずかな嘘」

 ドラマというのは突きつめていえば「嘘」です。存在しないキャラクターを役者が演じるフィクションです。あまりにも現実と乖離していては、感情移入どころか、作品の世界観を理解することも困難です。

 「ひよっこ」は高度経済成長期にいたかもしれない女の子の成長物語ですが、舞台設定と登場人物という嘘以外は、当時の世相に合わせ、その時代を生きた人物が語ったであろう台詞、とったはずの行動をさせています。

 もちろん、物語を動かす上での「嘘」はありますが、シーンを日常に絞り込むことで「わずかな嘘」におさめているのです。

 対して月9はどうか。今期の「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」は最終回が初回視聴率を上回り「大成功」といっても良いのですが、それは「ドクターX」にも当てはまる「医療物に外れなし」という経験則で、これを裏打ちするのが「わずかな嘘」の法則です。

 最先端医療にドクターヘリ、救急医療チームがみな若い美男美女など、舞台装置やキャラクターは突飛でも、医療や救助のシーンでは大嘘がつけず「現実の延長」となり、それにより視聴者が理解しやすく、共感と感情移入を呼ぶからです。

 刑事物が根強いのも同じで、捜査手法や謎解きには多くの嘘が用意されていますが、フォーカスするのは犯罪者や刑事の事情といった「日常」です。

 めっきり減りましたが「時代劇」は「チャンバラ」という活劇(アクション)による爽快感もありますが、ストーリーの基本軸は「人情」で、やはり人と人とが交わる日常を描きます。

 大仰に語っていますが、なんてことない当たり前の話。

 月9の凋落はこの当たり前からの乖離です。高視聴率男として名高かった福山雅治主演でこけたとネットで話題になっていた2016年の「ラブソング」のあらすじをウィキペディアから引きます。

《吃音症のため対人関係に苦手意識を持つヒロインの少女と、元ミュージシャンで臨床心理士の主人公が音楽を通して心を通わせるラブストーリーである》

 それぞれのキャラクターも同じく引きます。

神代 広平(かみしろ こうへい)
演 – 福山雅治
本作の主人公。臨床心理士で元プロミュージシャン。
かつてヒット作を1つ発表したっきり全く売れず引退したが、音楽への未練を絶ち切れずにいる。またある事件から女性を真剣に愛することができず、定住もなく女性の住居を転々としていた。
さくらに出会ってから次第に音楽に向き合うようになるなど変化が生じ始める。また第4話以降は賃貸マンションに定住するようになる。
佐野 さくら(さの さくら)
演 – 藤原さくら
本作のヒロイン。広島の児童養護施設で育った身で、同じ施設で育った真美の上京から2年後に上京する。吃音疾患者。大型バイクを所持している。
現在は大型車の整備・販売会社「ビッグモービル」の整備部で働いているが、吃音を出さないようにするためほとんど話さず、職場の同僚にもなじめず上司にも理解を得られないなど自分の人生に嫌気が差している。実は天賦の美声持ちという本人も自覚していなかった才能を持っており、広平との出会いで才能を見出され、音楽を通じて変わっていく。

 お好きな人はみるでしょうね、って感じではないでしょうか。対して「ひよっこ」の主人公はこんな感じ。

谷田部 みね子(やたべ みねこ)
演 – 有村架純
本作の主人公。1946年(昭和21年)生まれ。
奥茨城と農業が好きなため、高校卒業後は家業に専念する予定だったが、失踪した父を探すことと困窮する家計を支えるため、1965年(昭和40年)の春に東京の向島電機に就職、同社の「乙女寮」に入居する。同年12月に向島電機倒産が決定後は石鹸工場の内定をもらうも、採用人数削減を受け入れて辞退。その後「すずふり亭」のホール係に採用され翌年1月に就業、同店近所のアパート「あかね荘」へ転居する。(以下、あらすじ的紹介が続くが略)

 いまどきの若者なら「困窮する家計を支える」って設定がリアリティを感じないかもしれませんが、昭和世代にはありふれた話。リストラはちょっと前まで転がっていた話。

 ドラマは好みで正解はありませんし、視聴率が作品の優劣を意味しません。しかし、そもそも作品という「大きな嘘」なかで、「わずかな嘘」からはみ出せば、視聴者は違和感を覚えます。

 裏返せば「ひよっこ」は、人気テレビドラマの王道を、愚直なまでに歩んでいたということ。シナリオや役者の力、配役の妙は当然として、最近少なくなった「普通のドラマ」であり、少なくともテレビを見る視聴者層は、これを待っていたということです。

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