総力特集は「中国の自壊が始まった!」。
ようやく邦訳された『100年のマラソン』の著者 マイケル・ピルズベリーへのインタビューからはじまり、中国生まれの遠藤誉氏の軍事パレードへの憤りにバトンが渡り、公開データから中国経済の崩壊を指摘する田村秀男氏ときて、元中国人で石平(2007年に日本に帰化し、石平太郎)さんの
“中国は今も昔も「パンツ製造所」”
と、それぞれの立場から、中国の「限界」を喝破します。
特集にはペマ・ギャルポさんの寄稿も含まれますが、それは切ないので紹介はパス。でも必読。
最近、メディア各所で大活躍のデービッド・アトキンソン氏の連載の今回の副題はこちら。
“禁止大国ニッポン!”
は、なるほど、と違うよが交錯する逸品。
随所に見下したような感覚を見つけますが、裏返せば「郷に入れば郷に従え」「謙遜の美徳」を当然と思う日本人の感覚で、イギリス人の彼にとっては・・・フランス人がみてどう思うか興味尽きませんが・・・自分の価値観こそ大切だとする筆ということなのでしょう。
さらに、極端な事例や、私的体験を一般論にしているところは鼻につきますが、多くの日本人は彼にそうは指摘しないだろうなぁと考えると、あながち全体としては遠くないというか、また、もっと泥臭い人間とつき合えば、彼の日本人観も変わるだろうにと思いながら、経歴を見る限り、そんな人とはつき合わないだろうなぁと苦笑い。
あるいはブルーカラーは、世界中そんなものだろうね、となるか。日本社会は特殊な事例を除けば、ホワイトカラーとブルーカラーの垣根が低く、職業による区別はあっても、互いへの敬意が・・・と想像で語っても仕方がないですね。
特に膝を拍った一節を紹介しておきます。幼稚園を巡る「騒音問題」においてのデービット氏の指摘。
“その子供らは、未来の年金の負担者”
その発想はありませんでした。子供は騒ぐもの、うるさいもの。放し飼いにする親に怒りを覚えても、子供に罪はない。という発想のない、自分の安眠と平安という利己主義には、なるほどこれは効く指摘なのだろうと。
そして、今回の必読は都立広尾病院院長 佐々木勝氏の寄稿。
“リスクを言うならまずここから見直せ
あまりにお粗末自衛隊の医療体制”
小見出しを紹介します。
“流れた血を誰が拭くのか”
戦傷医療は70年前から止まっています。この分野の最先端は、山本太郎などが世界中で戦争をやっているとなじった米国。
海外の任地で負傷した場合、部隊の救護所からはじまり、1時間以内には外科チームが治療にあたり、逐次、考え得る最善の措置を施しつつ、4日後には自国内の病院への搬送する仕組みが構築されています。
これによりベトナムでは15.8%だった死亡率を、9.4%まで下げることに成功し、計5段階の治療システムはNATOなどで共有されています。が、日本は「有事」を想定することすらタブーとされています。
「日本は戦争に行かないから関係ない」
訳がない、あえていおう「バカか」と。
安保法制反対の護憲派が、敵が攻めてきたなら「憲法九条ビーム」で国土を守ってくることを期待しつつも、賛成派自身が認めていたように、戦争は巻き込まれることもあります。
なにより、自衛隊の趣旨からみれば、攻め込まれた末の戦争状態はリアリティのある話しで、全面戦争に至らずとも、局所的戦争による自衛隊の負傷者は想定の範囲内。
戦争という非常時に「救急車」なる平時のシステムが機能することは期待できません。戦場です。砲弾飛び交う中、消防隊員を出動させることはできません。想像に過ぎませんが、市中を走る救急車に「防弾機能」はないはずです。
現在の法制度では、国内での負傷者に、仲間である自衛隊が与えることのできる治療は、国内法の範囲内で、気道確保のための管を挿入するには、救命救急士の資格が求められます。
緊急避難には超法規的措置が認められる可能性も高いとはいえ、仲間の命を救う行為に対して長い裁判を戦わなければいけないという状態に自衛隊員は置かれているのです。
佐々木氏は自衛隊内部から声を上げるべきだと指摘し、あるべき論ならばその通り。しかし、日本の特殊事情を考慮するなら、これは政治案件であり、それを支えるのは我々国民です。
かつ、今回の安保法制において
「自衛隊のリスクが高まる」
と反対していた人々は、政治も民間人も活動家も問いません。
もちろん、日本転覆を謀る工作員は反対するでしょうが、安保法制への反対活動が、日本の国益の為であるなら、国防の最後の砦となる自衛隊員の安全を高めるための取り組みに反対などしないことでしょう。
なお、国防の最初の砦は外交であり、国内世論を醸成するマスコミもその一翼ですが、どちらも怪しく脆く杜撰で、我が国の国防は「最後」しかないのが現実です。
■月刊WiLL (ウィル) 2015年11月号
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