この刊に入ると正岡子規の健康が浜辺作った砂の白のように
波に洗われ崩れていきます。時代は日清戦争を必然とし、これが
日露戦争へ、そしてその後の日本へと。
ところがちょんまげから30年も経っていない明治28年。
ようやく揃えた「戦艦」はまるで甲子園を目指した高校3年生
の野球部部員の8月の頭髪のように充分ではありません。
本人にしてみれば整髪剤で精一杯のお洒落をしているつもりが
周囲にはてかった坊主頭にしかみえないようにです。
ファッションなら笑い話ですが「戦争」はそれでも勝利が
至上命題です。当時の中国人が国家のために命を捧げるという
発想がなかったことも味方しますが、重要な結果を世界に示します。
「非白人国家の台頭」
本作には随所に「アジア人蔑視」の当時の空気が語られています。
この空気は戦後教育で無くなったものですが、私たちの世代が
かろうじてこの実在を証明できるのはその学校教育の現場で
こう習ったからです。
「名誉白人」
人種隔離政策のあった南アフリカでの日本人の名称です。人間を
白人と非白人に区分していたなかで金持ちの日本人だけ特別扱い
してやるというもので、明治の世界の空気はこれと同じだったのだ
ろうと想像することができます。
そしていよいよ「ロシア」登場です。
■坂の上の雲(文庫本2巻)
http://www.as-mode.com/check.cgi?Code=4167105772