特集「アベノミクス」の未来を悲観する「経済専門家」座談会

 特集「アベノミクス」の未来を悲観する「経済専門家」座談会

 いじわるな「週刊新潮」だけに、このタイトルに含意があるのではないかと邪推をしてしまうのですが、つまりは「経済専門家」とカギ括弧でくくるところに、登場する彼らを「小馬鹿」にする意図が有るのではないかと。

 それぐらいトンチキな議論が、今週の「週刊新潮(2014年12月25日号)」で展開されました。登場するのは小林慶一郎 慶応大学経済学部教授、池田信夫 アゴラ研究所所長・経済学者、田代英敏 RFSマネジメント・チーフエコノミスト、小幡績  慶応大学ビジネススクール准教授の4方。

 「アベノミクス」への批判ということですが、やり玉に挙げるのは「消費増税延期」だけ。安倍首相は「財政健全化」の重要性を理解していないとし、消費税は50%以上が必要で、10%など優しいぐらいで、この増税すらしないとは狂気の沙汰と言わんばかりで、財務省のお役人様が聞いたら涙して喜ぶような言説が並びます。

 彼らの主張をここに引用しません。なぜなら、アベノミクス解散が噂された頃、財務省のレクチャーを受けたマスコミもエコノミストも(カブドットコム証券 山田勉さんは除く)、与党も野党も共産党以外が、みな繰り返していた主張だからです。民主党など、増税延期にしても、ギリギリまで反対していました。

 まるで4氏の主張は、増税が延期された財務省の恨み節です。

 さて、どれだけの「珍説」が展開されているかだけ指摘しておきます。

1:ハイパーインフレ論

 財政健全化ができなければ、円の信認がなくなり、国際市場で円が投げ売りされ円が紙くずになる。しかし、今月の「WiLL」に産経新聞特別記者 田村秀男氏の寄稿によれば、確かにいわゆる「国の借金」は膨大ながらも、「国の資産」もあり、差し引きすれば対GDP比の借金は米国並みに落ち着きます。

 なにより、いま、日本の国債は超低金利で、ハイパーインフレが明日にでも起こる状況では絶対にありません。あり得ません。ちなみに「ウィキペディア」の記述を信じるならば、池田信夫氏は2011年月の時点で、日本国内で国債を買える余力は3年ぐらいと予言していたようですが、いまも元気に買い増しているどころか、買い取りを拒否する「札割れ」までおこっています。

2:倒産する企業が続出

 ハイパーインフレを前提にしているので、屋上屋というより、ノストラダムスの大予言を前提に、マヤの終末予言を信じろというような「ムー」もビックリの展開ですが、この妄想を前提に進めるとして、ハイパーインフレにより銀行は融資を止め、貸しはがしをする・・・これはリアリティがあるというより、既にやったことがありますが、つまりこれにより企業倒産が相次ぐというもの。

 街場の中小企業は消し飛ぶでしょう。ハイパーインフレとはそれだけのダメージがあります。しかし、日本企業の全てが消し飛ぶとは、論理の飛躍も過ぎます。なぜか? 日本円が安くなれば、対外資産を潤沢に持つ、日本企業を買収する好機で、外資といういわゆる「ハゲタカ」が嬉々として乗り込んできます。

 いわゆる資産を切り売りして逃げていくなら、これほど悲惨なことはありませんが、幸いにして日本には、かろうじてながら「モノヅクリ」の文化は残っています。安価で世界随一の勤勉さと緻密さを誇る「日本人」という労働力を、ハゲタカどもが見逃すわけがありません。

 日本国にとっては国難でも、草木も生えぬ荒れ地になることはありえません。

3:預金が10分の1に

 これもハイパーインフレを前提。で、ハイパーインフレになれば住宅ローンが相対的に目減りします。インフレ率が900%になれば、物価は10倍になり、3000万円の住宅ローンが300万円に圧縮されます。小林慶一郎 慶応大学経済学部教授は、しかしと危機を煽ります。曰く、住宅ローン金利もあがり、数十倍から100倍を超える金利を取られるようになるので、返済できない人が続出して、路頭に迷う人が増えると脅迫です。

 一般的な住宅ローンにおける変動金利は、半年ごとに金利を見直し、新たな返済額は半年後から適用され、元本の見直し後も半年ごとです。仮に900%のインフレなっても、半年間は以前の金利で元本ですから、その間に可能な限り繰り上げ返済をしておけば痛みは軽減できます。

 というか、ハイパーインフレになったとき、許認可事業である金融業を「野放し」にするのは民主党政権でもさすがにやらないでしょう。路頭に迷う国民が増えれば、それだけ生活保護を筆頭として社会保障費が増大するからです。

 もっともハイパーかともかくインフレにしなければならないのは事実です。それは「財政健全化」のためです。インフレになれば、国の借金が「目減り」するからです。財政健全化を叫びながら、ハイパーインフレの恐怖を煽るのはまるでコントです。

 国民に強い痛みを強いるハイパーインフレを是とするものではありません。しかし、経済を「インフレ」軌道にのせなければ、借金を効率よく減らすことができないのも事実です。ここに登場した4方は、増税による「財政健全化」を主張したいようですが、増税が「景気悪化」をさせた直近の事実をまったく見ていないようで、誰を見ているかと言えば財務省なんでしょうね。

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