新聞週間ということで、各紙各様に新聞の礼賛記事が躍るわけですが、中国や朝鮮におもねり日本解体を目論む朝日新聞と、その対極にある産経新聞の比較をすることこそ、新聞の醍醐味であり、情報分析力を高めるはじめの一歩です。そして気づきます。
朝日は朝日なりの、産経は産経なりの利益のために筆を執っていると。この場合の利益とは金銭だけではありません。ちなみに読売は巨人軍の利益のためだけに存在します(笑)。
そのなかでも露骨に銭金に転ぶのが日本経済新聞です。
かの東京都が尖閣購入時の論調など転びまくりです。当初は朝日新聞並みに石原慎太郎都知事を批判気味にとりあげますが、世論が尖閣購入に賛意を示せば、そちらに近づき、中国が強攻な態度を見せれば
「経済の冷え込み」
を心配するといったように、機をみるに敏というか「経済我が命」とする姿勢は尊敬できませんが、別の角度から見るとぶれない論調に失笑することしきりです。この「失笑」とはこらえていたのに漏れ出る笑いで、あまりの売国奴ぶりに怒りが先に来るのですが、いつもの変わらぬ姿に、ぐるっと廻っておかしさが込み上げてくるからです。
だから日経新聞の政治的主張や、国際面については
「その裏で誰が儲かるのか」
と補助線をひくと、真意が透けて見えます。
尖閣を国が購入するという第一報も日経新聞で、9月2日の朝刊の時点で具体的な数字が記され決定事項のように1面で報じます。ところがページをめくった2面では「具体的な日程は未定」のように軌道修正を図り、どちらか曖昧な結び方をしているのですが、後の週刊誌報道によれば、外務省筋からのリークで、いわゆる世論操作に利用された・・・というより、むしろ対中関係を悪化させたくない、すなわち経済への悪影響を避けたいと、かねてより論陣をはっていた日経新聞の望む結論のために積極的に協力したとみるべきでしょう。
ま、「国有化」が成す意味を読み違えたのは、日経新聞には「国家観」がないからで、すると彼の国どころかどの国のことも理解することなどできません。例えば「武道」を嗜んでいると、柔道でも剣道でも感覚的に理解できるところがあり、アニメオタクと鉄道オタクでは趣味が異なれど「オタク道」では通じるものがありますが、その素養がなければまったく通じないようなものです。
そんな日経新聞だからこそ好意的に描くのが
「ソフトバンク アメリカ携帯会社買収」
です。
たしかに円高で低金利のいまは海外企業の買収には最適な季節で、今後の日本の未来を創造したときに、最後のチャンスになるかもしれないという視点からは好意的に受けとりたくもなるのですが、なかなか手放しで褒めちぎることはできません。
まずは日経新聞。昨日の朝刊社説において
「世界に挑むソフトバンクの決断とリスク」
と掲げながらも、決断と称賛が9割で、ドコモの失敗を引用しての苦言(リスク)を述べておきながら、「そうならないように」とエールを贈ります。らしいと言えばらしいので批判は脇に置いて、「日本の携帯市場は飽和状態に近く」として海外進出を評価します。
そして本日の国際面でアメリカに舞台を移して称賛キャンペーンを継続するのですが、面白いのでそのまま引用します。
≪アメリカの携帯契約件数は約3億4000万件で日本の2.6倍。スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット(多機能携帯端末)の普及で、人口普及率が超えた今も伸び続けている。≫
総務省が今年の5月に発表した統計で、携帯の普及理が100%を僅かに越えたのですが、そこにはもちろんスマートフォンの普及も含まれています。いわゆる2台持ち、3台持ちです。ならば日米同じ状況にも関わらず、一方を飽和とし、他方を伸び続けている・・・のならばその「伸び率」を示さなければ、データを引用する資格がない・・・ことは、まぁ日経新聞ですから見逃しましょう。
そこであえて捕捉をするなら、日米の「ブロードバンド普及率」の違いがあります。ネットワーク配信サービスの「アカマイ・テクノロジーズ合同会社」の今年8月23日の発表に寄れば、10Mbps以上の高速ブロードバンド普及率で日本は37%、アメリカは半分以下の15%です。
語弊を怖れずに言えば、日本人は快適なネット環境に囲まれており、アメリカは高速化する携帯回線で補っているため、端末の契約件数が増えていると見ることができます。
ただし、これもソフトバンク礼賛の理由となっている「LTE」の登場で状況に変化が訪れる可能性が高いのです。「LTE」とはより高速な無線通信を実現する方法で、世界規格なのでスケールメリットを活かせることがソフトバンクに有利に働くと持ち上げます。
しかし、LTE対応のスマホは「デザリング」を搭載する傾向にあります。記憶に新しい所では「au」から発売された「iPhone5」はデザリングに対応し、ソフトバンクからのものは当初機能が見送られていました。「デザリング」は、その端末を無線の基地局とする機能で、スマホを経由してパソコンやDSをネットにつなげるようにできるものです。
つまりLTEが普及すれば、新しく携帯回線を契約するインセンティブがなくなるのです。平たく言えば「両刃の剣」です。
さらに先ほど引用した記事の続きが秀逸です。
≪データ通信量の拡大で1契約あたりの月間収入(ARPU)も4454円と中国やインドなど新興市場と比べて5倍以上と高い点も事業者にとっては魅力だ。≫
どうして中国と比較する前に、日本と比べないのでしょうか。
・・・とここからが本日の本題です。
ドコモ 4,870円(2012年3月)
au 4,640円(2012年3月期第1四半期)
ソフトバンク 4,020円(2012年度第1四半期)
各社のホームページやIR資料からひっぱってきた数字を見る限り、確かにソフトバンクだけからみれば1割以上高い月間収入を誇るアメリカ市場は魅力的ですが、5倍以上と礼賛するほどではありません。
ただし各社の数字を並べるとソフトバンクの数字が見劣りして、それは良心的な価格設定の裏返し・・・と頷けないのが、今回の買収でもクローズアップされた「借金」です。
借金も財産。経営に携わるものの金言です。借金とは信用の換金方法だからです。
ソフトバンクは英国ボーダフォンの買収に際して2兆円の有利子負債を抱え込み、当時は経営を危ぶむ声も聞かれたものです。それがすでに5000億円にまで減っていることが、今回さらに2兆円ともいわれている、新しく借金するための余力を生みました。
ボーダフォンの買収は2006年。あしかけ6年、実質5年で1.5兆円を返済するということは、年間3000億円返済しているということです。
ソフトバンクには「ヤフーBB」をはじめ、他の事業もあるからケータイ事業だけではない・・・への明確な回答は、彼らのホームページにありました。1994年以来の営業利益を一覧として掲載しているのですが、2005年度の営業利益は622億円で、翌年の2006年度は2710億円と、まさに「桁違い」に伸びています。
ちなみにというか2001年度から参入した「ヤフーBB」ですが、同資料に寄ればその後4年間、営業赤字が続いています。
つまり、携帯事業は儲かるということです。
もちろん、営利団体なので儲けることは悪いとは言いませんが、携帯電話は電波免許を必要とする許認可事業。一定の公共性が求められ、そのソフトバンクの孫正義さんでさえ、新規参入に対しては不公平さに憤っていたはず。
自由に間口がひろげられている市場の競争によりボロ儲けしているのではないのです。
で、これは「データ」を扱う上で「アンフェア」であると先に白状しておきますが、昨年のソフトバンクの営業利益が6,752億で、今年の8月に利用者が3000万人を越えたという発表を単純計算してみると、ひとり毎月1875円の利益を献上していることになります。
アンフェアであるのは、ケータイ以外の利益などを加味していないのと、集計時期の違いです。
そしてボロ儲けして、儲かった金で海外に投資・・・を許せん・・・というわけで、流れ弾をあてます。
「ドコモ」や「au」も儲かっているということ。そしてスマホをより普及させデータ通信を拡大することでさらに儲けようと。
メディアが批判しないのは「スポンサー」だからですが、特にテレビは同じく「電波利権」に預かっているもので、さらに携帯回線事業者と比較して破格の安値で利用しているので文句などいうわけがありません。
勇躍海外に・・・と誉めたくないのは、わたしの視点が
「国民の生活が一番」
だったりするからです。もちろん、生活を守るための優先順位は国防でアリ、外交にあることは言わずもがなですが。