田中慶秋法務大臣は拉致担当大臣も兼ねていました。
彼の辞任により、また担当が代わります。
一般の交渉毎でも担当者が代われば、イチから信頼関係を構築しなければならず、ましてやこじれている関係なら、マイナスからのスタートとなります。
野田佳彦は何を考えているのか・・・というか官僚の言いなりなのでしょう。この期に及んでも外務省は腰抜けです。波風立てずが「省是」ともいえる姿勢で、竹島の国際司法裁判所への提訴も見送る可能性を示唆したら、昨日、韓国の国会議員が竹島に不法入国する体たらく。
民主党のなかでは、まだ見るところもアリ、拉致被害者の家族からの信頼も得ていた松原仁さんを拉致担当大臣から外したのも、波風も辞さない彼の態度を嫌った外務省の政治工作によるものではないでしょうか。
さて著者の蓮池薫さんは拉致被害者です。帰国直後の苦悩と、北朝鮮での生活のエッセーです。「はじめに」とある前書きから、最初の3編まで涙が止まりませんでした。
決してお涙頂戴の苦労話ではありません。むしろ冷静に淡々と、できるかぎり客観的に綴ろうとする苦労が行間に見え、一方的に感情を爆発させないことに秘めた思いを想像するに涙が溢れたのです。
そして子供を待つ気持ち、また、子供を待っていた日本の父母、兄、親戚の気持ちも理解し葛藤する著者の苦しみが、冷静さにより浮かび上がってきます。
一時帰国として帰った日本で、日本に残ることをすすめる兄と、北に残された子どもを思う著者が口論となり、ご母堂がその様子を嘆くのですが、そこにあるひと言がずしりと心に突き刺さります。
「せっかく会えたのに」
蓮池薫さんの客観的な表現は、当事者が覚える距離感をくっくりと浮かび上がらせます。ノンポリだった自分の政治スタンス、本書においてそういう表現はありませんが、戦後教育という反日教育をベースにしたときに重ねる北朝鮮の政治体制。
また、自由の定義には紙幅を割きます。冷静を装っても、自由についてだけはほとばしる感情が紙の上で熱を持って伝わるのです。
北朝鮮での生活は想像以上に明るく描かれています。そこに意地を見つけてしまいます。
「俺たちは拉致の被害者だが、人生のすべてを支配されたわけではない」
と、また、その意地があったからこそ生き延びる・・・いや、健全な精神を維持し続けることができたのではないかと。
全日本国民にお勧めの一冊です。
■拉致と決断
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