おれ、悪くないし

 小惑星探査機「はやぶさ」の帰還(大気中で燃え尽きましたが)
をうけて菅直人総理大臣を「はやぶさ2」を作る方向性を示唆しま
した。

「はやぶさ」の後継機「はやぶさ2」の予算は例の

「世界で2番じゃいけないんでしょうか」

の事業仕分けで大きく削られ「絶望的」とされていたものです。

ところが「勝てば官軍」、ベタに表現するなら「菅軍」とばかり
に予算をつけると大騒ぎです。

ここで「科学技術予算」の是非については論じませんが、ならば
あの「事業仕分け」はなんだったのでしょうか・・・という問いか
けも茶番ですね、あれは政治ショーですから。

そして問います。

「はやぶさを打ち上げたのはどこの政権でしょうか」

平成15年(2003年)、靖国参拝をした小泉純一郎首相の
ころです。2009年、政権交代後の民主党政権下で「はやぶさ2」
の予算は削減されました。

なぜこう問いかけたのかというと、

「悪いのはすべて自民党政権」

という民主党の論理の異常さを端的に物語っている・・・いや
ここにも「戦後教育」が日本人にかけた呪いをみることがで
きるからです。

呪いとは「思考法」です。

ある時点を境に色分けをします。グラデーションではなく、
はっきりとした境界線で色を変える思考法です。

分かりやすいのが

「戦前は全て悪であり暗黒」

という歴史観です。戦争中でも庶民の生活には笑いがあり
ささやかな贅沢ぐらいはありました。日本国民全員が具なしの
すいとんをすすっていたワケではありません。また天皇陛下を
一神教における神のように敬っていたというのも、一部の例外を
除けば間違いです。尊い方と崇敬はしても・・・と、いうか
宗教観の違いから「絶対神」という概念はそもそもの日本には
馴染まないのです。

そもそも「暗黒」であったなら私は存在していません。
亡父は昭和19年6月4日生まれで、十月十日で考えれば
私の祖父と祖母は「暗黒」の日本でナニをしていたのでしょうか。

戦前のすべてを肯定するものではありません。
だって、歴史とは一色で塗れるほど単純でも簡単でもないので
すから、良いこともすれば悪いこともしたのでしょう。

つまりは「戦前はすべて悪」という論調は間違いで、同様の
考え方でだされた結論もまた同じです。

この思考法が「呪い」であることは、自己の正当化に使える
からです。

現在の自分を肯定するために、過去を全否定したり、自分の
失敗を他者や過去に投影したりすることで、己の傲慢さを
顧みることがなく、同時に社会全体のマジョリティがこの
思考法していることで異常さに気がつかなくなるからです。

平易な言葉で述べれば

「おれ、悪くないし」

この言葉の後に「親」や「学校」が続き結論をこう述べます。

「誰も教えてくれてないし」

学ばなかった自分への反省、善悪の基準を歴史的連続性に
見つけられないことは棚上げにします。

「これから勉強します」という台詞を政治家や志すものが
はずかしげもなく口にできることも同根です。余談ですが、
少なくとも「いま勉強しているところです」ぐらいはいって
欲しいものです。

明文化されていないこと、禁止されていないことを裏返して

「法律に則って」

を言い放つ精神構造もまた同じです。一方に悪を置くことで
自己を正当化し、違反と明記されていなければ、正義と同義だ
と主張します。

そして「違法でないなら合法」でグレーゾーンの存在は認め
ず、過去は全て過ちで、現在は全て正しいというのが民主党の
論法です。鳩から菅へ変わっても、所詮は「党内人事」に過ぎ
ません。

果たして自民党時代はすべて悪だったのか。
「はやぶさ」が雄弁に語ってくれています。

自民党政権がすべて正しかったとは口が裂けてもいませんが。
 

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