パナマ文書と植民地の記憶。NHKが報道しない理由

 世界を激震させている「パナマ文書」。

 ざっくりといえば、租税回避地にある法律事務所の機密文書がハッキングにより流出し、調べてみたら世界中の指導者や関係者、企業の名前と取引履歴が見つかったというもの。

 さらに語弊と断じた上で、かみ砕くなら

「脱税してたのかよ」

 となりますが、あらかじめ断っているように語弊。脱税とは言い切れません。

 環境学者の武田邦彦氏が、CS放送の番組で指摘していましたが、租税回避地というより「低税率地」であり、手続きに乗っ取っている限り違法ではなく、脱税ではありません。俗にタックスヘイブン=税金天国とも呼ばれ、オフショア金融も同じく。

 同じことに複数の名前がつく場合、大抵、ウサン臭いのはIT業界やWeb界隈と同じく、位相や階層、別次元など、より適切な言葉がアリながら「レイヤーが違う」という表現を好むのは、素人をだまそうとするスケベ心の表れです。ウサン臭いことをする人は、洋の東西を問わず同じ発想です。

 これまた語弊ありありですが、いわば正規代理店による輸入品と、個人資格での並行輸入との違いといったイメージでしょうか。

 正規のルートを通せば商品毎の関税がかかりますが、個人的に購入した商品には発生しません。それを後に、不要になったから売るとした場合、関税分だけ安くなる・・・はず。

 はず、とするのは、そもそも商取引を目的とするなら、金額の多寡は関係なく、しかるべき手続きを取るというのが建前だからで、しかし数万円、十数万円レベルの案件のすべてを取り締まるのは、行政効率が悪く、実質見逃されることが少なくありません。

 また、転売時に発生した売り上げを、ちゃんと税務申告していれば違法性を問うのは、より困難となるのは、関税逃れだったのか、買ったものの飽きて売るのかを、客観的に判別できるのは、数量となりますが、3個までなら個人利用目的で、4個からは業者という線引きが実に曖昧だからです。

 税務は解釈次第で、脱税関係の報道は、修正申告で済んでいれば「見解の相違」で、「追徴課税」となれば「悪質」だと解釈されたとみるのが一般的です。

 そしてパナマ文書もまったく同じ。法律論だけで解釈すれば、違法性は見つからない。少なくとも現時点では。

 一方、パナマ文書により流れ弾が当たりまくっているのは「スターバックスコーヒー」。イギリス進出してからの3年間、当時のレートで1500億円以上稼ぎながらも、ろくすっぽ法人税を納めていないどころか、0円の年もありました。

 手口は税率の異なる国を跨ぐことで、税金そのものを浮かすだけではなく、それぞれの国に子会社を作り利益を分散させ、イギリス国内で販売するコーヒー1杯に6%の知的財産権を設定し、これまた別会社に支払います。さらに子会社間で融資させ、そこに割高の金利を設定することで、帳簿上の利益を限りなくゼロに近づけていたのです。

 ただし、これの告発は4年前に行われ、議論の結果、昨年には可能な限りの課税がなされており、いわば終わった話。これが発掘されて、再び批判されていることには少しだけ同情します。なにより、この手の課税逃れはスタバに限ったことではありませんし。

 個人的にはスタバへの思い入れは一切無いどころか、むしろ嫌いに属する飲食店ながらも、同情するのはFacebookやグーグル、そしてAppleでもAmazonでも似たり寄ったりだからです。

 グーグルのアフィリエイトプログラムに参加し、報酬を得ていると、定期的に支払い証明のような通知が届きますが、たびたび支払い元の住所が変わり、記憶にある限りでは、アイルランドから香港に変更されていました。税制の変化、利益の度合いで変えているのでしょう。

 流れ弾ついでに言えば、楽天が買収し、いつものように「楽天」を冠して始めた電子書籍サービス「kobo(楽天kobo)」はカナダの会社。

 日本語の電子書籍の販売先は、どう考えても日本国内であるにも関わらず、そのままカナダで配信しているという体裁にこだわったのは、カナダからの配信なら「消費税不要」という、税法の隙間を狙ったものではないかとは、ヤフーら、国内で電子書籍を普及発展させようとする事業者らが集ったシンポジウムでやり玉に挙がっていました。

 国内の電子書籍配信事業者は、当時5%の消費税課せられるのに対して、アマゾンを筆頭とした海外事業者が非課税では競争にならないと。ルール違反ではありませんが、ルールの隙間を見つけて得をしていた楽天。もっとも、ズルをしてもkoboは苦戦しているようで2ちゃんねるから「ざまぁ」という声が響くかの思いを否定することは出来ません。

 とはいえ、税を安くしたいというのは、企業も人も、本能的に抱える欲求です。一般の市民が消費税還元セールに群がる理由ですし、企業を批判するのは簡単ですが、株主に還元していたり、社員を厚遇で迎えたりしていれば、強欲との批判は当たらないでしょう。

 もちろん、道義的に正しい行いとはいえません。ましてや、その国の政治的指導者や、その家族らが、税金逃れをしていては、論理的な整合性がとれなくなります。アイスランドの首相が辞任に追い込まれ、キャメロン英国首相が釈明に明け暮れ、習近平が情報を遮断するのも当然です。

 加えて「パナマ文書」の問題が、本質的な議論に辿り着かない理由は、各国の税制の違いという技術的な話しではなく、国を跨いだ節税行為は、植民地支配と構造としては同じだからです。

 世界が、とりわけ白人諸国がタックスヘイブンに神経質になっているのは、植民地支配と被支配の構造を理解した上で、その記憶を持つからです。単なる脱税事案なら、課税すればよいだけのことですが、仕組みとしては合法な搾取はまさに「植民地」で、この違法性を問うことは自らの歴史への背徳行為で、だから踏み込めないでいるのです。

 もっと端的にいえば、タックスヘイブンを利用した企業や個人に

「何がイケない?」

 と開き直られては、先日、引退を発表した北島康介の名言のように

「何もいえねぇ」

 となります。

 道義的には眉根をしかめながらも、国家ぐるみで搾取を繰り返していた白人諸国は、当時の国際法においては違法ではありません。タックスヘイブンを利用した節税も同じく。

 そして日本での報道が希薄であるのはその反対と見ています。東南アジアなどでは、植民地政策を実施した歴史を持ちますが、白人らが行ったような一方的な簒奪や搾取とは見劣りする結果、下手だったのです。なお、言うまでもないことですが、台湾と韓国は併合により「日本」の一部でした。

 日本の報道が弱い理由を、先の武田邦彦氏は

「NHKもやっているから」

 と喝破し、ネットで話題になっています。

 準国営放送のNHKは、事実上の税金で運営され、余計な利益は出ない建前となっていますが、スターバックス同様、NHK出版などの子会社に業務を発注する形で、しっかりと利益をプールしているのは公知の事実。子会社で億単位の着服や、所得隠しが発覚するのは、それだけ余剰資金がある証拠。

 その利益の一部か全部を、タックスヘイブンに迂回させて節税しているという見立て。報道しないのは、いま、その資金を必死に回収してなかったことにしようとしているからで、その「円買い」が、対ドルレートでの「円高」につながっていると。

 実に創造力豊かですが、陰謀論に過ぎないのは、いまの円高を説明するには桁が足りないから。

 暴論ながら学者らしいと唸ったのは、パナマ文書問題を報じないマスコミ、声を上げない政治家、企業はみな「クロ」と仮定し、報道したり、社内調査を発表したり、政治課題に挙げたりした政治家は「シロ」にしてはどうかという提案。

 何もないならないで構わないが、世界的騒動を「放置」していることそのものに武田邦彦氏は疑問を呈しているのです。

 今後、全貌が明らかになるまで、確かなことは言えませんが、武田邦彦氏の指摘を陰謀論とする理由は、より現実的です。

 それは国内企業も似たり寄ったりだから。○○ホールディングスと名乗る「持株会社」が解禁されて以降、より顕著となります。

 持株会社とはいわば「親会社」で、その下に「子会社」がぶら下がり、親会社は子会社の上がりで生計をたてます。これを親孝行とみるか搾取の構造と見るかは価値観で分かれますが、親会社は子会社Aの損失と、子会社Bの上がりを相殺でき、グループ全体としての節税がしやすくなっています。

 いわば「節税」の技術論の話しで、フジテレビHDのように、在京キー局はすべてこれ。

 つまり、「パナマ文書」を掘り下げれば掘り下げるほど、自らの所業を、特にテレビ局は「放送電波」という限れた資源、国民の共有財を独占的に使用しながら、巨額の利益を得ていた上に、せっせと節税をしていることがバレるから。この列の先頭を走るのが、みなさまのNHK。

 自社のお金の話しになると、舌鋒が鈍るどころか語らなくなる報道機関は実に多く「沈黙は金」だと身を持って教えてくれます。

ブログ村に参加してみました。宜しければ右バナーをクリックしてください→ にほんブログ村 政治ブログ メディア・ジャーナリズムへ
にほんブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください