ネットワークカメラとネット規制論

ネットワークカメラとネット規制論

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 世界中にある「ネットワークカメラ」の映像が、ロシアのサイトで見られる状態になっています。日本国内でも至る所の映像が公開され、各種メディアで報じられ話題となりました。

 実際に見てみると、もっとも多いのは「コインパーキング」で、次が工場や作業場など。遠隔地からの管理や監視を目的としているのでしょう。喫茶店やコインランドリー、コンビニどころか、薬局や歯科医院といった秘匿性が求められる場所も公開されています。

 ハッキングではありません。カメラが工場出荷時の設定のままになっているからです。

 出荷時の設定とは、ログインIDは「管理人」、パスワードは「9999」のような単純な組み合わせが多く、同じ機種なら同じ組み合わせです。ロシアのサイトを頼らなくても、ネットワーク上にあるカメラを見つけ、これらを試せば誰でも見ることができてしまいます。

 つまり、IDとパスワードを設定し直せば、かなりの確率で「非公開」になるのですが、本稿執筆時の2016年2月24日現在、534件のカメラが絶賛公開中です。

 ネットワークカメラは低価格化が進み、安価な機器なら1万円もせずに入手できます。また、無線LAN環境がすでにあれば、特別な工事は不要で、素人でも手軽に設置・接続できます。

 しかし、コインパーキングのようにLAN環境がない場所への設置はプロの手が必要。

 電気工事士には1種と2種があり、1種なら500キロワット未満の工場、ビルなどの工事に従事でき、2種でも一般住宅や店舗などの600ボルト以下の工事が可能です。理屈の上では、マブチモーターを用いた電気工作ができるレベルでも、設置工事は可能ですが違法ですし、時に命がけになるので、かならずプロに発注してください。必要とあれば腕の良い、電気工事士の親友がいるので紹介します。

 そんな「プロ」が設置したカメラが、ネットワーク上で公開されている・・・といっても驚くことではありません。電気工事士は電気配線のプロフェッショナルではあっても、インターネットに詳しいわけではないからです。むしろ苦手な人だって珍しくありません。

 とある郊外で電気工事会社を営むM社長。建設業界の絶好調を受けて「自社ビル」を建てましたが、屋内のネットワーク環境は、いまだにケーブル接続による「有線」です。

 セキュリティを最優先するなら、無闇に無線LANにすべきではありません。近所から通信を傍受される可能性があるからです。とはいえ、普通の電気工事会社に守るべき機密はさほどなく、有線の理由をこう述べます。

「かつて利用していた無線LANは、一時的に繋がりにくくなることもあり、その時、どう対処してよいか分からない。その点、有線なら安心」

 ネットワークのトラブルは、線の有無以外にもあるとはいえ、目に見える「線」に安心を見いだすという「ネットワーク0.2」です・・・と、打ち切りになった「マイナビ」の最後の、つまりは幻の原稿です。せっかく書いていたので「成仏」させようかと(笑)。

 インテリジェンスビルのフロアのように床に埋め込まないのも同じ理由。お陰で完全新築のオフィスながら、床にはLANケーブルが転がっています。ま、好みの問題ですが。

 一連の騒動を受け、あるITジャーナリストはネットワークカメラについて「メーカー側が対策すべきだ」と苦言を呈していましたが、これはお門違い。

 機器ごとに個別のIDとパスワードを割り振ることは、論理的には可能ですが、そのIDとパスワードを利用者が忘れてしまっては二度と接続できなくなるからです。

 最近のルーター等、宅内通信機器のように、本体に必要情報を記しておく方法もありますが、人の目に触れる場所にも設置されるネットワークカメラ、監視カメラです。本体への記載はパスワードを誰でも見られる状態となれば、ハッキングして使用不能にすることもできるということ。

 独自の配線や、専用回線をつかって接続するなら、外部からの侵入は困難ですが、回線の敷設に相応の費用が必要です。対して、ネットワークカメラは、インターネット回線を利用することでコストダウンを実現しています。

 しかし、ネットワーク上には子供がいれば、テロリストもいます。

 つまり、価格的なメリットを得るためには、負わなければならない責任があるということです。いわゆる「自己責任」で、ネットワーク参加者が相応の責任を受け入れるから、安価なネットワークを利用できているともいえます。

 そしてこれは「インターネット」の黎明期からあり、たびたび議論されながら、先送りにされている問題でもあります。

 インターネットは誰でも利用できます。それが醍醐味であり、ダイナミズムを生み出しますが、犯罪の舞台になる理由でもあります。昨日も日本中を騒動に巻き込んだ「爆破予告」がありましたが、大学生が容疑者として身柄が確保されたとはいえ、小学生でも可能な犯罪です。

 ネット犯罪が起こる度に、悪いのは犯罪者でありネットではない、出刃包丁による通り魔がでたから、包丁を規制しろという声がでないように、ネット規制は筋違い。という声が聞こえてきますが、現実を踏まえるなら間違い。

 刃渡り6cmを越える場合、刃物は正当な理由なく携帯できないことになっています。板前などの所持は「正当」にあたり、キャンプの往復などもこれに含まれ、実際のところは「ザル法」ではあっても、一応の規制はかけており、また刃物をつかった犯罪が頻発した頃から、ホームセンターなどでは、刃物売り場周辺に防犯カメラを設置するなど自主的な対策も行われています。

 ネット=刃物論に立つなら、自主規制も含めた対策は不可欠だということです。

 たかがネットとはいえ、地球の裏側まで影響力を行使できるポテンシャルを持つ道具で、かつ比較的容易に入手できるという面からみれば「自動車」と同じ性質の道具と位置づけることもできます。

 自動車のアクセルに足が届けば、自動車を走らせることはさほど難しくなく、ときどき

「一度も免許を取ったことがない無免許運転」

 が摘発される理由です。

 極論すれば小学生でも自動車のアクセルを踏むだけで、数十人単位で他人をひき殺すこともできるということです。

 しかし、自動車の運転は野放しに許されているものではありません。文字通り「免許」により許諾が与えられ、一度事故を起こせば重大な被害を発生するため「保険」が義務づけられ整備されています。

 当たり前の話しですが、自動車運転免許制度は、自動車ができたあとに制定されています。制定されるまでは「野放し」だったということ。

 ダイムラーやベンツがガソリンエンジンによる自動車を作ったのが1885年で、米国で自動車運転免許制度が制定されたのが24年後の1909年。自由と個人の権利を尊ぶ米国ですが、その前年の1908年に、かの有名な「T型フォード」が発売されたことで、利便性と共に危険性が広まったからなのでしょう。

 便利な道具が普及後、一定の制約が課せられることもあるということです。それは免許制度などの制約よりも、利便性が優っていたからで、いま「インターネット」にこれを問うのは、決して無駄な思考実験ではないでしょう。

 私の立場を鮮明にしておけば「規制反対派」。それは「自己責任派」と呼び替えても間違いではありません。ネット通販のアマゾンで、数万円もせず購入でいるネットワークカメラを、自力で設置、管理しているものとして、規制はデメリットしかないからです。

 むしろ、規制されることで、ホームページに関連する商売として、専門性と独占性が高まるので、儲けに繋がる可能性は高まりますが、それを甘受する考えはありません。

 自己責任とは自己決定権が保障されているからで、規制とはトレードオフの関係にあり、選択肢を狭めてしまいます。

 ただし、どちらか一方と、極端な主張をするのもまた思考停止で、互いに議論を尽くして妥協点を見つけることが、成熟した社会には求められます。

 先に触れたITジャーナリストのように、メーカー側に対策を求め、それをメディアが盲目的に紹介することは、こうした議論の放棄です。

 いわゆる消費期限、賞味期限のように、メーカー側の企業努力で対応できるものもあれば、消費者の責任も問われるサービスもあり、インターネットは明らかに後者・・・という、基本の議論が欠落しているのが「ネットワークカメラ」を巡る議論です。

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