フジテレビ「ぶらぶらサタデー」の迷走と不誠実

 貧すれば鈍する。「振り向けばテレ東」どころか、気がつけば「テレ東の背中」を見ているフジテレビ。迷走が止まらないどころか、最下位の方向へ爆走しているように見えて仕方がありません。

 土曜日のお昼のフジテレビは、ながらく「風まかせ〜♪」のテーマソングが耳に残る「新諸国漫遊記」がオンエアされていました。松平健が刀を包丁に持ち替えて、料理をつくるコーナーが斬新だった番組など紆余曲折を経て「有吉くんの正直さんぽ」が始まりました。

 週末に家にいながら「旅気分」を味わうのは一定の支持者がいるのでしょう。かく言う私も、ぼんやりと併せていました。

 ところがタイトルの「正直」は大嘘というか洒落というか、「有吉」と絡めた時点で視聴者をせせら笑う意図なのでしょう。前々、正直ではありません。いきあたりばったりを演出していますが、しっかりとロケハンされています。

 例えば足立区の「西新井」を中心に「散歩」したとき、とても「徒歩」では移動できない竹の塚から梅島まで「ワープ」しているのですから。旅番組、散歩番組では常識的で、テレビ朝日の加山雄三の散歩番組でも、知り合いの店が「店休日」に取材の申し込みがあり、休日出勤したとぼやいていました。

 レギュラー放送がはじまった直後のバタバタした感じから、本当にアポ無しかと騙されかけもしましたが、足立区近辺が紹介されると、そのあり得ない移動速度に呆れるばかりです。特に、フジテレビ社員、生野陽子氏が夕方ニュース番組へ移動となってから、ロケ時間の制約によってなのか、「やらせ感」が増して見なくなりました。

 そこに「女子散歩」が加わります。こちらもヤラセ感が漂いますが、女子アナをつかっていないだけまだマシ。というのはタレントは、一戦一戦が生き残りを賭けたオーディションのようなもので、手を抜けば仕事がなくなるので、プロの仕事を見せてくれます。ただ、松岡茉有は「おはガール」の頃か、親戚のオジサン気分で応援しているのですが、なんだかフジテレビの「お気に入り」になったようなキャスティングが目立ち、行く末に暗雲が立ちこめているような気がしてなりません。

 この「女子」も、関根麻里というミセスが参加し、しかもレギュラーになった直後の妊娠発覚。「腹ボテ」で散歩するのでしょうか。ある意味、斬新ですが。

 そして元は日曜日の夕方にオンエアしていた「タカトシ&温水の路線バスの旅」。当時は路線バスに限定していませんでしたが、テレ東の人気に便乗したのでしょう「バス」に。

 こちらもロケハン済みであるのは間違いないながら、タカトシ、温水の「演技力」で緊迫感を演出していたので、土曜日の午後に、少しだけ緊迫感を得ることの出来る番組として楽しみにしていました。

 これがいま、土曜日の午前10時からの放送になりました。この時間は小旅行番組の本家とも言える「ぶらり途中下車の旅」が放送されています。こちらの途中下車も嘘だらけで、どう考えても最寄り駅は竹の塚なのに「西新井」で紹介されることなどざらにありますが、丁寧にお店や名所を紹介する仕上げは、さすがご長寿番組です。

 ここにぶつけて勝てるとでも思っているのでしょうか。

 少し評判の良かった「世界HOTジャーナル」を、金曜日のゴールデンタイムに昇格させたことで、相手枠をタカトシで埋めたのではないでしょうか。ならばフジテレビの編成は死んでいます。時間帯により視聴者層は異なりますし、出演者が変われば同じ企画だとして色彩が変わります。

 「世界HOTジャーナル」はフジテレビ社員 伊藤利尋の力量に依るところが多く、西尾由佳理がサポートし、山里良太が茶化し、木村太郎が厚みを与える構成でした。西尾が産休にはいったのち、同社員の村松未央はよくやっていました。同局社員にしては華美なところ、女優やタレントと勘違いしたそぶりもなく好感を持っていましたが、ゴールデン昇格のタイミングで西尾が復帰し首になります。

 「功労者」を首にするような番組が人気を集めることはありません。これは長いテレビ視聴歴の経験則です。

 そして「余った枠」に、そこそこ根強い人気のある、すなわちこちらも「功労者」であるタカトシの番組で尻ぬぐい。フジテレビはタカトシに「ホコ×タテ」のヤラセ打ち切りで借りがあるはずなんですが。仁義を無視するものが蔓延るほど、日本社会は腐ってはいません。

 フジテレビの悪口を書いた原稿に「愛が感じられる」と評した編集さんがいました。確かにそれはあるのかも知れません。「ピンポンパン」から始まる「フジテレビ歴」は、人生そのものとは言いませんが、テレビ視聴における軸足としていたからです。

 しかし、最近はそこに「憎悪」が加わっています。大好きだったフジテレビをここまで腐らせた誰かに対して。

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