楽天市場がリアル店舗でもポイントを使えるようにすると日経新聞が提灯記事を一面に掲載していました。
なぜ、提灯記事か? 具体的な提携先が発表されていないからです。つまり「報道」を広告媒体として、いまから提携先をゲットしようとしているのか、あるいは「商談中」の背中を押すために、天下の公器たる(笑)新聞を使ったと言うこと。ま、日経ですから。
かつて、拙著で楽天市場がなくなる日の予測を、国民のネットリテラシーが高まることで、鈍重で品切れ商品まで検索結果に表示される楽天の買い物システム、また「楽天税」の負担を嫌う企業のなかには、直接電話で注文すると5%ほど割引してくれる見せもあり、利用者離れと出店者離れのダブルパンチで衰退していくとしていました。
残念ながらこの執筆時には人間の本質を加味することを忘れており、日本人は長いものに巻かれて大樹の下に集うのが好きでアリ、同時に慣れ親しんだ店を好む保守性を考慮していなかったことが、予測を外した主因です。
さて、2013年の「楽天市場がなくなる日」とするのは、このポイントの提携です。
まず、ポイント利用の現実について触れておきます。楽天市場に限らず、こうしたネットショップのポイントにおいて
「ポイント勝ちするショップ」「ポイント負けするショップ」
が存在します。10万円の家具を買い1%がポイントをゲットして、1000円分の購入力を得たとします。
はたして10万円の家具を売っているような店で買える1000円の商品ってなんでしょうか? 一般的なポイントはその店の中でしか使えません。ヤマダのポイントはヤマダ電機の中での買い物に使えるだけです。しかし、ショッピングモールのなかで発行されるポイントは、モール内のどの見せでも使えます。
1000円分ならCDや本、少し現金を足してゲームソフトなどなら、満足いく商品をゲットできます。
つまり、10万円の家具屋が「ポイント負けするショップ」であり、CDや本屋は「ポイント勝ちするショップ」で、当初からそこまで魂胆があったとはいいませんが、「楽天ブックス」は楽天と日販の折半出資によりはじまり、2007年に日販の出資分を買取、完全子会社にしたので「ポイント勝ち」している可能性は否定しきれません。
しかし、それも「サイバーモール」のなかでのできごとなら我慢もできます。リアルのショッピングモールに例えるなら、他店でのポイント利用を目指すとは言え、ショップのある空間に足を運んでいるのですから、何かのきっかけで来店する可能性が残るからです。
ところが今度はそれを「外部」に広げようとします。
するとネットの中のポイントが外部に流出していき、これが戻ってくることはないでしょう。リアルなら小口の買い物でも送料無料です。コンビニの缶コーヒー、雑誌など、些末なものに消えていくでしょう。あるいはパスモのような交通費と提携すれば、さらにネットへの回帰は困難です。
かつての「スタンプカード」や「ポイントシール」は、一定額を貯めることで得られるのは限定された商品でした。楽天カードが詐欺的に「お皿とかに換えてませんか? 換えてますよね」とCMをながすあれです。
これなら他店への流出は考えられませんが、いまのポイントは現金と等価です。余談ながら、いつ総務省か財務省が、これに課税するかいまから楽しみ・・・いや、恐ろしいと震えているのですが、これについてはまたいずれ。
2年連続で1円玉を製造していないとも報道されました。現金をチャージする機能のついた各種カード利用によるものとされますが、ここに「ポイント」を加えれば、より小銭需要はカードが埋めることなります。
その結果、楽天市場に出店する企業全体が「ポイント負け」することとなります。遅まきながら説明すると、楽天市場のポイントは、販売業者が負担し楽天に納めます。
会計上、単独企業のポイントは「引当金」として、「まだ支払っていないけど、いずれ支払うお金」としてストックされていますが、楽天の仕組みでは、出店者は経費としてすでに支払っており、裏返せば楽天が自由に差配できる現金です。
それを「楽天経済圏」を拡大するために使うというのは楽天の利益のために過ぎません。楽天はネットとリアルのどちらからも手数料がとれるの利益しかありませんが、ネットの出店者にとっては損する可能性が高く、いわば「不平等条約」です。
もともと楽天は一方的な条約改正で悪名を轟かせている会社で、制度に注文をつければ退店を迫り、まぁ民間企業のやることであり、企業間取引という性質からやむを得ない部分はあるのですが、泣いている出店者の声を耳にすることは少なくありません。
ただし、今回のリアルへの拡大は、これまでの改定と性格が違います。いままでのものが手数料の変更や、月額利用料の変更、メールアドレスの取り扱いなど、いわば「条件闘争」でしたが、リアルへ拡大することで流出するポイントは「利益喪失」を導く背信行為です。
そして「楽天市場がなくなる日 2013」。
それは契約を元に自儘にルールを変更する「優越的地位の濫用」を公正取引委員会が認めたとき、あるいは、もうひとつ。
「搾取されるだけのポイントの馬鹿馬鹿しさに出店者が気づき、
アマゾンに移籍をはじめたとき」
いまでも商材によってはアマゾンの方が売れやすいのですがね。