グーグルの思想と相反するもの

 もはや影響力はIT、Web業界を越え、一般ニュースでも大きくと
りあげられるグーグルの話題に隔世の感を覚えます。かつて、
日本語版のサービス開始前からSOHOのネットワークで話題となり
重いヤフーよりシンプルなグーグルの検索窓にいち早く乗り換えた
ものとしては感慨深いものがあります。ちなみに当時

「Google」を「ゴーゴル」

 と読んでいたことは秘密です。

 話題とはグーグルがモトローラ・モビリティ・ホールディングス
を買収しようというニュースです。

 特段驚くことではないのが、グーグル帝国の拡大思想は従来より
顕著で、この点はさすが「アメリカ人」と頷くばかりです。将軍さ
まのおわす国で「米帝」と侮蔑しますが、拡大志向と自らの価値観
が世界で最高だという発想は、帝国主義のそれに近く、あるいは
アメリカンスピリットの啓蒙においては、フランシスコ・ザビエル
たちの宣教師を彷彿とさせる思いこみがあります。

 もちろん、マイクロソフトのビル・ゲイツ、アップルのスティーブ
ジョブズにも通底し、Facebookのマーク・ザッカーバーグも同じ。

 グーグルの成長は「買収の歴史」で、Facebookのように映画化が
難しいのは、「大人の事情」が垣間見えるからでしょう。

 「ヒルズ族」という狂騒劇を覚えている人なら、

「中核技術のないライブドア」

 というのがグーグルの成長物語です。その中核技術が圧倒的収益を
あげている点で、まったく別物ではありますが、それぐらい
ショッピングが好きな会社だということです。

 モトローラ買収の理由は大きく分けてふたつあげられています。
まず

「携帯市場への物理的参入」

 で、収入源の多様化が遅々として進まないグーグルにとって
確かに理由のひとつでしょう。ただ、すでに「Nexus One」という
端末を自社ブランドで発表しており、ラインナップも揃えています。

 だから、外注から内製化(傘下企業)するというのが正しいで
しょう。しかし、ソフトウェアで成長した企業がハードに手を出し
て成功を収めた企業はあまり耳にしません。数式と論理式で制御さ
れるプログラムと、製造現場では温度や湿度に左右され、販売現場
では「雰囲気」まで影響を受けるリアルの難しさは別物だという
ことです。

 そして、もうひとつの理由が「特許」です。

 ハイテク機器とパチンコ台は特許の伏魔殿で、なにが他社の
どの特許に「かぶる」か分かりません。独自開発したつもりでも
結果的に他社の「リスペクト」になっていることもあり、うっかり
すると多額の賠償金を支払う羽目になりかねません。

 そこで各社は特許でクロスカウンターをかまします。
 ざっくりといえば、互いの特許でそれぞれの特許を相殺する
という方法です。

 ところが日経新聞の記事によるとグーグルの保有特許数は750件
で、マイクロソフトの18000件と雲泥の差です。ところが
モトローラが17000件なので、これをゲットすれば数の上で
肩を並べることができるということ。

 しかし、これが理由なら、面白いなぁと言うか、グーグルは
次のステップに移行したのだとあらためてしみじみ噛みしめる
ニュースです。

 グーグルは設立目的として、

「人類のすべての情報をインデックス(整理)する」

 と掲げており、全ての情報を誰もが手にできるようにしようと
しています。

 それはすべての情報のオープン化を意味し、宗教的な解放
思想はグーグルストリートビューや、グーグル図書館となり、
世界中で議論を巻き起こしています。

「幼い」と言い換えても良いでしょう。
「純粋」と評することもできました。

 ゆえに、次々とネットサービスを発表して、皆の目に止まり、
手に触れ共有することで、より良くなるというのもオープン化で
あり、裏返せば他社の技術利用に制限をかける

「特許」

 というのは、グーグルの思想と相反するものといえるのです。

 現実という壁に立ち尽くしたのか、大人の階段を駆け上がる
決意をしたのか。

 いや、「本来の姿」を自覚しただけのこと。

 すでに述べたようにグーグルは次から次へと企業買収を
繰り返してきました。数年前の自分たちと同じような企業を
買いあさってきました。

 例えばアクセス解析のUrchin、画像ソフトのPicasa。
 もっとも有名なところではようつべ・・・もといYouTube。

 この戦略を端的に述べればこんな感じ。

「他人の情報は遠慮会釈も断りもなく公開していき、
 新しいテクノロジーやサービスは企業買収で囲い込んでいく」

 今回のモトローラ買収はより具体的に、効率よく

「囲い込み」

 をはじめたということ。

 さて、今回の目的はグーグル批判でも日経新聞レベルの解説
記事ではなく、これも米国らしさだということです。

 理念と現実、時に軌道修正しながらも、厚顔を恥じない。
 そして突き進んだ未来に立っていたものだけが勝者。

 だから、相反する行動をとることを怖れません。
 と、いうより

「なにそれ?」

 ってかんじです。

 突出して米国のIT業界に顕著な傾向ですが、世界はだいたい
こんな感じで動いています。

 翻って日本は・・・危機を煽ります。より、日本メーカーの地位
が低下すると。

 でもね。アンドロイドOSという「プラットフォーム」ができた
のですから、そこにのせる「ガラケー」という世界一、ユーザー
寄りのインターフェースを輸出するチャンス到来。なんですがね。

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