「北千住」礼賛にみつけるF1層神話の落日

「北千住」礼賛にみつけるF1層神話の落日

 イナスイメージが強かった足立区ながら、最近、明るい話題が多いのは、足立区出身のお笑い芸人「みやぞん(ANZEN漫才)」の人気急上昇が理由ではありません。

 先日は、とある人気番組から「○○で××な足立区民を紹介してください」と電話がありました。企画趣旨を尋ねると、やはりポジティブネタです。

 意図的に明るい話題が作られているのです。

 同時多発的にテレビ局をまたぎ、テレビ新聞雑誌と媒体も横断しており、それこそ「電通陰謀論」を疑いたくもなりますが、そうではないと皮膚感覚ながらわかるのは、かつての「ネガキャン」と同じ流れだからです。

 足立区をDisるネガティブキャンペーンをはじめたのは共産党との噂が地元ではあり、当時の区長選に向けた仕掛けとは、やはり地元の政治通の見立てでした。

 吉田万三氏という革新系区長の夢よ、ふたたび。というものです。

 ノンフィクション作家の佐野眞一氏が文藝春秋に寄稿した「ルポ 下層社会」で爆発します。

 文章からも現地に足を運んでいるのは確かながらも、東武伊勢崎線(東京スカイツリーライン)「竹ノ塚駅」の近くで、テレクラ売春をする主婦を紹介し「地元主婦」とはバカも過ぎます。

 春をひさぐとき女は、地元から離れるもので、竹の塚(地名は平仮名の“の”)あたりまで出稼ぎに来るのは、沿線の北部で、有名な団地群あたりと噂レベルで囁かれています。

 地元で売春をすれば知り合いに会う確率も高くなりリスキーなのです。逆に本当に地元でそういうことをする人は、隣近所でも構わず、パチンコ屋の隣席にだって営業をかけるので、テレクラにわざわざ電話などしないものです。

 とにもかくにも、佐野氏のルポを「ひな形」にした、続報記事が同時多発的に出現し、コピーのコピーといった劣化版も登場し、足立区の印象がとにかく悪くされました。

 ネガティブキャンペーンはどうだったかといえば「鉛筆を買えない小学生がいる」などのホラが与太にすぎないことは、地元民なら皮膚感覚でわかりますし、誇張された貧困話は笑い話に過ぎず、中の下の経済力の世帯は報道にふれ「下には下がいる」と安心するので、与党批判にはつながりませんでした。民進党やリベラル勢力が掲げる「相対的貧困」がいまひとつ盛り上がりに欠ける理由もここにあるでしょう。

 いま、その逆パターンで、足立区のポジティブネタが量産されています。

 とりわけ多いのが「北千住」。

 過剰なほどに持ち上げられています。切り口は「2017年版 SUUMO住みたい街ランキング 関東版」による『穴場だと思う街(駅) ランキング』でぶっちぎりの首位というもの。

 たしかに「北千住」は便利な駅で、常磐線、日比谷線、半蔵門線、千代田線、つくばエクスプレスなどが接続する一大ターミナルとは過言でもないでしょう。

 そして千住の街は江戸から続く宿場町で、その名残から商店街が幾つもあり、隅田川以南に比べれば家賃も安く、なにより、いままでろくすっぽまともにメディアで紹介されてこなかったので「穴場」といえば穴場ではあります。

 しかし、先のランキングもカラクリがあり、穴場ランキングで北千住はぶっちぎりでの首位とは言え、得点は77点。対する「住みたい街」の1位「吉祥寺」は586点。それほど興味を持たれていないとも言えるのです。

 にも関わらず礼賛報道が繰り返される背景にあるのは「F1層神話」です。

 20〜34歳の女性をF1層。35〜49才がF2で50才以上がF3。同じく男性はM1〜M3となります。

 F1層は消費意欲が旺盛でトレンドにも敏感、ここが食い付けば、世代や性別を超えて注目を集めるとされていました。視聴率調査もこの区分で行われ、かつてマーケティングとは「F1層」の心を掴むことにありました。そして「スポンサー様」のご意向もそこにありますし、テレビ局や紙媒体の営業マンが、売りやすいという打算もあります。

 F1層と北千住を結ぶのは「大学」です。大学生はF1、M1の入口やその予備軍です。

 かつて足立区には大学がひとつもなく、誘致を悲願としていました。テレビドラマ『3年B組金八先生』のロケ地だった中学校に東京未来大学が開校して以来、大学誘致に相次ぎ成功し、いま千住エリアに4つの大学のキャンパスがあります。私や昭和の大横綱「千代の富士」が自動車免許を取った教習所が廃校となり、跡地は帝京科学大学の運動場となり、自動車のかわりに大学生が走っています。

 「北千住」が紹介されるとき、その中身はほぼ「若者」です。

 江戸時代から続く宿場町で史跡も多く、松尾芭蕉の「奥の細道」の出発点もあり(隅田川対岸の南千住もそう主張)ますし、昭和以降にしても「槍かけ団子」や「石黒の飴」・・・あ、食べログ情報ながら閉店しました・・・コホン、まぁ色々あるわけですが、紹介されるのは若者向け情報。先日も日本テレビ「幸せ!ボンビーガール」で物価が安いから住みやすいとか誇張された内容が報じられていました。

《スポンサー様、大学が次々と誘致開校され、F1層が溢れ、まだ手垢のついていない「北千住」の企画を我々は立てました。どうぞお金を・・・広告をください》

 というのが私の見立て。
 ちなみに「北千住」は駅名で、地名は「千住○○町」。

 なんにせよ、ポジティブなネタで足立区が紹介されることは悪いことではありません。誇張というより嘘に限りなく近いネタであっても。

 しかし、テレビはもちろん、既存メディアの凋落をここに確認してしまいます。

 人口構成が、すそ野の広がるピラミッド型の頃、若者は常に多数派。可処分所得の増加と消費が連動し、戦後の女性解放的なトレンドも手伝い、若者は消費と文化の牽引役でした。しかし、ご存知少子化です。若者=消費の牽引役という発想が古いのです。

 ところが同じ発想で番組企画も作られます。
 つまり「人口構成比における少数向け」ということ。視聴率が下がり、販売部数が落ち込むのは自明です。

 一方でテレビ朝日がこの4月からはじめたのが、倉本聰脚本の帯の昼ドラ『やすらぎの郷』。

 石坂浩二を主演に、その元妻浅丘ルリ子、加賀まりこ、八千草薫などなど、ビッグネームをずらっと揃え、かつ彼ら彼女らを「老人」として扱い、さらに主人公がテレビ批判を繰り返しながらも、どうやら視聴率が良いようです。

 つまり、テレビはすでに年寄りのもの。になっていることの証明です。

 実際、私も開始週の土曜日に「まとめ」が放送されていたので、DIYをしながら見ていたら、抱腹絶倒、手に汗握ることはなくても、じんわりとみいってしまいました。オッさんですから。

 話しを若者に戻します。このF1層は、物心ついた頃からデジタルツールに触れており、いまどきの大学生ならば、はじめて手にしたモバイル機器が、「iPhone」ということもあるでしょう。iPhoneは2007年の発売です。

 だから彼らのテレビ離れは顕著です。「テレビはオワコン」的に全否定はしませんが、我々、すでに中年の世代ぐらいでも、テレビの「ながら視聴」は常態化していますし、暇つぶしとか、なんとなくといった、習慣によるところは少なくありません。

 ところが今のF1層にとっての暇つぶしは、スマホやケータイです。LINEで四六時中、誰かとつながり、誰かがすすめる動画をチェックし、ゲームに興じていれば、時間はアッと言う間に浪費され、テレビへの興味など芽生えません。

 新聞雑誌も同じ状況。ヤフーニュースに代表される「見出し」のみで満足しますし、「文春砲」などの弩弓の話題は、すぐにネットに転載され概要を知ることができます。

 もちろん、新聞雑誌、テレビも含めて、彼らF1層が「楽しみ方を知らない」という面は否定しませんが、それを教える隙間をすべてスマホが埋めていきます。

 テクノロジーの変化に連動する習慣の変化で、手紙が電話になり、メールに置き換わり、LINEが加わり、切符からPASMOに変わったのと同様で、受け入れるしかない変化です。

 にも関わらず、F1層を軸に企画を立て、番組を作り記事を仕上げる。それは人通りのない裏路地での路上ライブと同じ。

 北千住礼賛に足立区民にとっての朗報ながら、メディアの自作自演の自傷行為に見えて涙が止まりません。花粉症が発症したのかもしれませんが。

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