自動運転・ドローンに見つける日本の構造的弱点(追記)

自動運転・ドローンに見つける日本の構造的弱点(追記)

ドローン

 リアルを目指すネット企業について触れた回に、「日本にはZMPもある!」と反論をいただきました。ZMPとは上場間近と昨年から注目を集め、LINEとどちらが先かと株式市場から熱い視線が注がれている企業。

 LINEは大型案件ながら、すでに成長鈍化が伝えられており、一方のZMPが「本命」とされるのは、自動運転やドローン、ロボットベンチャーだからです。

 昨年よりDeNAと手を組んで開発を加速させ、今週の月曜日(2016年2月29日)には神奈川県藤沢市内で公道による実証実験を開始したと報じられました。

 広報上手というか、それだけ注目度が高いのかは意見が分かれるところでしょうが、ZMPのアプローチは良くも悪くも「日本流」です。これがリアルを目指すネット企業との最大にして決定的な違いで、日本流への悲観論へと繋がります。

 日本を卑下するのではなく、そもそも論で角度(アプローチ)が違っているのです。

 以下、公道実験を報じる日経電子版より引用。

《トヨタ自動車のミニバン「エスティマ」にレーザーセンサーやミリ波レーダーなどを搭載した専用車両が藤沢市内の住宅地とスーパー「イオン藤沢店」を結ぶ片道2.4キロメートルを走る。公募した近隣住民10人が参加し、3月11日までの予定で実施する。

 前方車両との距離を測って速度を調節したり、カーブで曲がったりといった操作は自動運転で実施。停止車両の追い越しに伴う車線変更や信号での停止は運転席に座る乗務員が担う。実験を通じて技術を検証し、2020年には無人運転タクシーの実用化を目指す。
日経電子版 2016年3月1日 より一部引用
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ29I9Y_Z20C16A2TI1000/

 添えられた図表には「GPS」もありました。

 このアプローチを翻案するとこうなります。

「人間風の自動運転」

 つまり、ベテランドライバーと同等の安全と運転技術を、ロボットにより実現しようというもの。

 繰り返しますが、良い悪いではなく実に日本的。

 というのは、人間の目の替わりとなるセンサーや制御装置での解決を目指しているからです。

 ひとつのアプローチとしてはありですが、この方法しかないと市場が錯覚しているのも日本的。ZMPの責任ではありませんが、自動運転で「人間的」を追及する必要はありません。

 例えば、対自動車の事故を防ぐための「発信器」の装着を義務づければ、かなりの確率で回避できます。無線電波的な直接的な発信に加え、携帯の位置情報のような電波を搭載し、さらにGPSと組み合わせればより安全です。

 人間のドライバーは電波を発信できませんが、ロボットならそもそもが電波系。

 これは一例に過ぎませんが、機械だからできることもある。という発想ではなく、より人間に近づけようという発想が実に職人的で日本的。個人的には大好きですが、世界は結果を求めるのであって、プロセスに拘泥しません。

 自動運転を普及させるために、主要交差点に「踏切」を設置するのもありでしょう。実際の人身事故は住宅街などで多発するのですが、自動運転に不安を覚える国民向けのパフォーマンスです。

 繁華街の辻に踏切など非現実的・・・とは、言えません。首都圏の駅が次々とホームドアを設置しているのですから。

 住宅街でいえば一時停止を厳守することで、相当な確率で対物対人の事故を防げますが、自動運転をベースにすると、必ずしも一時停止を守る必要がなくなります。

 自動車同士が電波で会話をすれば、互いに調整して、それぞれ徐行で通過できるからです。人を検知すれば、そちらを優先するのは当然として。

 つまり、自動車の自動運転を考えるとき、既存のルールや常識から見直す、あるいはルール変更を視野に入れた開発が必要だと言うことです。

 例えばグーグルが「検索」を始めた際、すべてのWebコンテンツを勝手に収集しました。当時の「著作権」の考えからすれば、無断盗用=窃盗です。例えば引用ひとつ、あるいは「リンク」でさえも、著作権を侵害するという議論があったのです。

 しかし、検索システムが与える利便性が、既存のルールを書き換えます。仮にグーグルが「日本的」に、既存のルールをベースにサービス提供を始めたなら、情報収集するロボット(プログラム)「クローラー」が訪問する度に、サイト管理者に許諾を得るという膨大な作業が発生し、今のような巨大な企業になる前に潰れていたことでしょう。

 これがグローバルネット企業・・・というか、ルールの書き換えを平然とやる「米国イズム」であり「グローバルスタンダード」です。中東の混乱にクリミア半島、なにより日本への勝者による敗者の憲法書き換えといったルール違反に代表されるる、米国のやり方です。良くも悪くも。

 米国ネット企業、ベンチャー企業の、ネットからリアルへの動きもこれを前提に考えなければならないということで、自動運転に代表されます。

 やはりグーグルとなりますが、Googleマップが提供する渋滞情報や、経路検索での移動時間は、スマホユーザーの位置情報を参考にしていると言われています。

 個人情報を排除した、純粋な「位置情報」だけですが、それでも多くの情報を有しています。

 渋滞情報においては、移動の軌跡が電車やバスの路線図と重なれば、この情報は排除します。次に移動速度で、歩行者、自転車、バイク、自動車をフィルタリングし自動車と推定される位置情報の速度が遅くなれば、某かのトラブルが発生していると考えられ、同じエリアで同様のユーザーが確認できれば渋滞と認定できます。

 この「遅くなれば」とは、リアルタイムだけではなく、前日、前々日の同時間帯との比較し、更に前年同日比も加味すれば、より正確性が増していきます。

 一般的なカーナビが提供する渋滞情報は、VICS(Vehicle Information Communication System)をもとにしており、これはいわゆる「道路」を監視し、届け出のあった工事などの情報を組み合わせて配信しています。

 VICSの精度もどんどんと向上していますが、欠点は道路を監視するために膨大なインフラを必要とすることです。対するグーグルは「利用者」からの情報で、情報収集コストはほぼゼロ。なにより、

「多くの人がいるから渋滞する」

 という原理原則に適っています。つまり、誰もそこにいない、位置情報検出できないエリアはガラガラだということ。実に合理的です。

 この個人情報の収集についてもグーグルらが、既存のルールを書き換えた一例です。

 加えてこれは「ビッグデータ」です。昨年来、日経新聞が旗を振るも、いまひとつブレイクしなかったビッグデータですが、その理由も実に日本的。

 日本人は集めたデータを無駄なく活用しようとして袋小路に陥ります。一見関係のない情報が、有機的に絡みつく「バタフライ効果」もありますが、哲学的な話しを除いた即物的な結論として、一見関係のない情報はやっぱり無関係である場合が多いのです。関係があることを誰かが発見したなら、その時に結びつければ良いだけのことです。

 それでは海外は、米国はといえば、とにかく根こそぎデータを集め、文字通り「ビッグデータ」を蓄積し、必要と思われる情報だけを拾い出します。

 「紙」の情報時代なら不可能でしたが、「電子情報」なら百科事典からグラビア雑誌まで無造作に集めたなかから「ソメイヨシノ」の記述がある項目だけを拾い出すことは容易にできるように、ビッグデータの母数からみれば、その殆どを「無駄」にしているということです。

 グーグルが検索のために収集している、膨大なWebコンテンツもこの「無駄は当然」という発想が裏書きします。

 さらに自動運転とビッグデータを絡めるという動きも聞こえてきません。希望的観測に楽観論を重ねれば、超機密事項ゆえに漏れてこないとも考えられますが、しかし、場末の物書きに想像できることを機密にするようでは、行く末もしれていることでしょう。

 ついでにビッグデータは自動運転と相性が良いことを指摘しておきます。位置情報を渋滞情報につなげているグーグルについてはすでに触れましたが、この位置情報は時系列で収集することで、こんなことまで把握できるようになります。

 地域毎の住民の移動速度、交通ルールの遵守割合、気象情報天気を加えれば、天気と気温が与える歩行者の行動変化です。

 コピーライターの糸井重里氏が、子供の驚く視点という文脈で語っていたのが、

「下町は背の低い人が多いね」

 という我が子による差別的発言(笑)。自動車で移動中の何気ない発言で、都市部は外国人やビジネスマンが多く高身長が多い、他方、下町は高齢者ばかりだから背が低い。

 私が親なら偶然みかけた一瞬を持って全体と思い込む行為をたしなめることでしょうが、日中の下町、あるいはベッドタウンでその傾向があるのは確かで、ならば歩行速度も違ってきます。

 というのは体感値ながら、地元に新線「日暮里・舎人ライナー」ができたことから、区外からの転居者が増え、ほぼ100%が新線を利用して都心に通勤し、こうした移住者と、地元民とでは歩行速度が違うのです。

 都市部と、下町やベッドタウン、高齢者の多い町では、自動運転における対人で警戒しなければならない距離が違ってきます。

 また、同じ都市部でも交通ルールが守られる地域と、そうでないところがあり、二重駐車も当たり前の大阪の繁華街と、ぬるっと車線変更をする沖縄県の国道58号線では、異なる運転対応が求められます。

 おなじ首都圏でも、いま絶好調の朝ドラ『あさが来た』で主演を務める足立区出身 波瑠さんがモデル時代、モデル仲間に

「足立区出身って言うと運転が荒い地域」

 とからかわれていたと、地元のケーブルテレビで告白していましたが、高速道路においては横浜ナンバーや品川ナンバーのいきった外車の、排気量と運動性能にモノをいわせた乱暴な運転は、目に余るものがあることはあまり語られません。なお「いきった」とは「気取りが鼻につく、調子に乗っている」という意味とご理解ください。

 また、以前は大宮ナンバーで包括されていましたが、川口ナンバーとして独立してより感じるのは、彼らの一時停止の止まらなさは、ほぼ100%の域ですし、側道からの合流でもっとも大切なことは「勇気」だと教えてくれるのは、道を譲ってくれる車両が他の地域に比べて極端に少ないからです。

 ただし、ドライバーの表情から悪気を感じることはそれほどありません。たぶん、それが埼玉県の川口市民にとっては自然なのでしょう。この悪気に限って言えば、足立ナンバーの方が悪いような気がします。

 東武スカイツリーライン「竹ノ塚駅」の西口で独占営業していた金龍タクシー(現在は事業譲渡され「大和」を名乗っています)など、こちらが優先道路を走行中、左側から一時停止を完全に無視し、減速もせず進入してきたので、警告の意味からクラクションを鳴らしたところ、そのドライバーはアゴを突き出し、口の形は「ばーか、ばーか」と繰り返していました。

 これもすべてと言いませんが、波瑠さんの苦悩には多少の根拠があるのも事実です。

 余談のようですが、ドライバー、歩行者、ついでにチャリンコについても地域差があり、これらをビッグデータとして収集することで、自動運転に活かす・・・という発想が聞こえてきません。

 自動運転ロボットが、人間並みにその場の状況を把握し、これらの地域性を踏まえた上で、ベテランドライバーなみの運転を実現。

 これは自動運転の実現ではなく、自律型ロボットの開発が目的で、手段の目的化で、プロセスにこだわる日本人らしさではありますが、これではプロセスに強く影響を与えるルール変更を厭わない米国に勝てるわけがありません。

 米国の脅威はTPPの締結でより鮮明となりました。TPPは競争障壁になるなら、他国のルールだって変えさせることができます。

 いや、米国という外圧で国内法が変えられるのは、ペリーの来航以来の日本の伝統ともいえますが、TPPはそれをより強化するという現実の前に、プロセスに拘泥する日本流は危機を迎えています。

 そして最悪であるのは、その危機感のなさです。

 楽天とヤマト便が「ドローンで宅配」の実証実験に乗り出すと日経新聞電子版が報じます。目的は宅配便の課題になっている再配達の減少などの「省力化」。

 そのイメージ図では宅配便の集配センターから、マンションの集積所、集積所から各戸への配送のそれぞれをドローンが行うものです。

 飛行船のような安定した浮力を用いるならともかく、いまのプロペラ式では常に「落下」の危険を伴い、よほどのブレイクスルーがないかぎりドローンでの宅配は不可能でしょう。オスプレイの落下を心配する以上にドローンの落下を心配すべきです。

 仮に集配センターからマンションの集積所までは可能となっても、マンション各戸への配達は、空気の壁との戦いが待っています。プロペラは壁に近づくと、壁に吸い寄せられ、高層階になれば日常的に強風が吹いております。軽い機体のドローンにとって、風速2mは暴風です。

 一方、それほどの高層マンションになれば、人間の移動空間、つまり廊下や通路は整備されていることでしょう。

 ならば、空を飛ばすより、陸上走行型のドローンに荷台を装着する方が「省力化」という目的を達成するための近道です。いまならスターウォーズの最新作に登場する「BB-8」のような形状にすれば話題性もでるでしょう。

 楽天の取り組みは「小型飛行機」という手段に目を奪われているようにしか見えませんが、まぁこうした角度違いのチャレンジは、英語を公用語化しながら、相次いで海外事業を清算しているあの会社の社風でもあるのでさもありなん。

 そして残念ながら、日本流を体現しています。方法論にこだわり、本質を見誤り目的を逃す。日経BPの記事に「なぜブロックチェーンはIT技術者を惹きつけるのか」とありましたが、これなど最たるもの。技術屋が技術を追うのは習性ですが「フィンテック」で括るとき、こちらは「ビジネス」の範疇で、隣接していますが別の位相にあるものです。

 米国のネットベンチャーにみつけるリアルへの取り組みとは、単にリアルに進出することではなく、リアルのルールをネットをベースに書き換えるということ。残念ながら、これを指摘する声は聞こえてきません。

 既に「ドローン」は「特区」により市場開拓を始め、当初違法とされていた「UBER(ウーバー)」も特区から既に次の段階へと進み、「Airbnb (エアビーアンドビー)」もインバウンドと東京五輪による宿泊施設不足から「民泊」という切り口で日本に橋頭堡を築いています。

 つまり、新しいビジネス=新しいルールという視点で勝負を挑んでくるのですから、既存のルール、規制をベースに考える、日本のネット企業・ITベンチャーは後手に回ります。

 さらにそれを助ける「TPP」。

 米国の大統領がトランプでもヒラリーになっても、TPPに反対のなのは幸いですが、それが「国益」に適うと理解すれば、手のひらを返すのも彼らアメリカ人の特徴。TPPは手段で、国益が目的だから当然と言えば当然ですが。

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