「ヨルダン人パイロット」見つける報道の欺瞞と右往左往

 軍隊はいけない戦争反対。原理主義的にこれを信奉していたリベラル系言論人が右往左往しています。

 マイケル・サンデルの「白熱教室」などで「命の重さ」などに感動した人々は、現実に突きつけられた「命の重さ」に答えを見失っているのでしょう。

 後藤健二氏の解放条件が2億ドルから、ヨルダンで収監されている死刑囚の解放へと変わりました。しかし、テロリスト集団イスラム国には、ヨルダンの「パイロット」も拘束されています。

“ヨルダン人パイロットのムアーズ・カサースベさんは、先月、シリア北部での軍事作戦中に戦闘機が墜落してイスラム過激派組織「イスラム国」に捕らえられました。”

 とはNHKのサイトからの引用で、すべての報道で「パイロット」と紹介されるムアーズさんですが、イスラムのエキスパート池内恵(さとし)東京大学准教授のサイトによれば「中尉」となっています。

 正しくは「ヨルダン軍 ムアーズ・カサースベ中尉」と報じなければなりません。こんな所にも原理主義を見つけます。ヨルダン人パイロットでは、民間人と錯覚する人もでることでしょう。

 しかし、中尉は軍人です。軍人とは人を殺すこともあり、中尉は空爆のために出撃していました。テロリストから見れば、憎むべき敵ですが、その行動は中尉の殺意によるものではありません。

 ヨルダンの利益に適うという政治判断のもと、命がけで任務についたいわば「公務員」です。国土防衛のために命を懸けている中尉の命と、安全な他国からやってきて拘束された民間人の命を天秤に掛ける日本のマスコミは異常です。

 テロリストが死刑囚など仲間の解放を呼びかける方が論理的です。

 日本人として後藤健二氏の無事を願うものではありますが、ヨルダン人の側に身を置いたときの答えは明らかです。あるいは普通に軍隊を持つ第三国の人間になりきっても同じです。

 ただし、そんな日本人のために、心を痛めてくれるヨルダン国民への感謝を私は永遠に忘れません。

 リベラル系言論人の「戦争反対」に代表される主張は、日本が国内問題だけを考えていれば良かった時代の空想の産物で、いま突きつけられた現実「命の重さ」について迷子です。

「一人の命は地球より重い」

 といった福田赳夫の言葉を美談としているのは日本人だけです。テロリストの要求をのんだ日本は、国際的には総スカンを喰らいました。論理破綻しているからです。テロリストに渡した金により、より多くの人々が殺傷される可能性を高めるのですから。

 ジャーナリストの青木理氏が、テレビ朝日「モーニングバード」で福田赳夫的な可能性を示唆すると、お天気キャスターの石原良純氏が国際常識でたしなめたのは象徴的な光景です。

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