ベネッセの個人情報流出で不安を煽る報道が目立ちますが、ベネッセから流出した個人情報は事実上無価値です。なぜなら、個人情報保護法における名簿取得には「不正な方法」を許しておらず、情報源が「不正」と発表し警察も認めているのですから、ベネッセの名簿をもとに営業をかけたなら、その企業姿勢が問われるからです。
ただし、今朝の日経新聞(2014年7月18日)に不思議なコメントが。事件発覚後の16日付けで、名簿を元に某予備校からのセールスが、携帯電話にあったとする母親の証言で、これが事実なら
「不正な方法で作成された名簿を元にした営業活動をしている予備校」
に取材をかけるのが新聞記者、特に社会部の記者の仕事なのですが、プレスリリースを再掲するしか能力のない日経新聞には無理な注文なのかも知れません。
最終的には司法判断に委ねられますが、不正な方法で入手した情報だと知っていての売買は個人情報保護法の対象となるからだけではなく、警鐘を鳴らす意味があるのですが、そうした社会正義より企業利益に重心を置く日経新聞なので仕方がありません。
そして流出した情報も、住所氏名と生年月日、性別。感情的になるほどのレベルではありません。「子供が心配」というのは親心。でもその理屈でいえば、子供一人で登下校させているほうが遙かに危険です。
ベネッセが悪くないとはいいませんが、リスク許容度を冷静に判断すべきで、ならば「これぐらい」と開き直り、同時に子供達に、不審な電話があったら相手にしないなど、平時でも必要な心構えを教える好機にすべきということです。
ただし、1点。詐欺師はこの名簿を元に仕掛けてくるので注意が必要です。それはこちら。
“○万円で名簿回収します”
デジタルデータで拡散した個人情報は、現行法下において事実上回収も消去も不可能です。むしろ「それぐらい」の情報すら回収しようという心根こそが、詐欺師を呼び寄せる誘蛾灯となります。
一度デジタルに乗った情報は、現時点では回収は不可能。と、同時に、星の数ほど拡散している個人情報のなかで、あなたのお子さんがターゲットにされる確率は、リアルにおいてのそれと同程度で、リスクを正しく怖れることがなによりも肝要です。