6兆円の損失とタバコ

 うっかりしていると吸うのを忘れる程度なのですが私は喫煙者です。
喫煙者=非国民的な空気が醸成されればされるほど、ニコチンを
求める心よりも生来私の心のなかで同居している「天の邪鬼」が
心のステージの中央に躍り出てやめるもんかと決意を新たにします。

これは私の体験。また喫煙を薦めるものでも反対するものでもなく、
嗜好品である以上、

「個人の自由」

に任せるものではないかという立場での綴りです。そして、副流煙
などについては議論が広がりすぎるのであえて割愛しておりますが、
あしからず。これについても思うところがあるのですが別の機会に。

日曜日、月曜日とまるまる二日、そして火曜日の夕方まで吸わな
かったのですが、禁断症状はまったくなく、さらに「空気が美味しい」
と感じることもありません。食欲も変わらずです。かつて読んだ
「美味しんぼ」では、タバコを吸うと味覚がダメになるとありまし
たが、いまでもしっかり白身魚の味の違いがわかります。

経験上、つくづく「人それぞれ」だと感じるのです。

そして最近の「嫌煙論」に疑問を覚えます。

我田引水な比較対象のない引用や、喫煙者をとりあげるさいに
極端な例を持ち出しすぎています。それはまるで飲酒問題を取りあ
げる際に、アル中で飲酒運転常習者をサンプルとして議論を薦め、
甘味物においては内臓脂肪、肝脂肪、動脈硬化となった事例から
切り込むようです。あるいは自動車は走る凶器としてそのリスク
ばかりをあげつらうような。

・・・とはいえ、時代には必然の流れがあり、それがタバコを
追いやるというのであれば仕方がないという諦観はあります。
ただ、

「俺は我慢できるから別に平気」

という主張に男らしさを認めることができないので封印し、
吸い続けると広言しています。なんだか自分さえよければとい
う戦後日本のトレンドと重なってしまうからです。

そして呟きます。

「だったら違法にしろ」

そこまで悪者扱いにするなら、法律で規制してしまえばすむこ
とです。かつて、オートバイはノーヘルで運転できましたし、
シートベルトは個人の裁量に任せられていました。消費者金融が
サラ金と呼ばれていた時代の取り立ては夜討ち朝駆け以上です。

時代の参加者の都合により制定されるのが法律です。善悪より
もそこには「時代の空気」が反映されます。いや、善悪とは
時代の空気の反映に過ぎないというとシニカル過ぎるでしょうか。

つまり、現代という空気がタバコを排除しようというのならば
法律で規制するのがもっとも効果的であり必然ではないかと考え
るのです。

法を犯してまでタバコを・・・吸う人もいるでしょうが、かつて
の「ヒロポン」のようにやはり多くの善良なる国民はタバコが
ない生活になれることでしょう。

ところがこの議論となると途端に言葉が濁るのは自民党だけ
かと思いきや、現与党の民主党も変わりません。タバコが違法化
されて困るのはどこかと考えて最初に浮かんだのがJTです。

そこでJT(日本たばこ産業株式会社)のホームページを見て
みました。どれだけ売り上げが減少するか。

決算短信によれば2009年3月期の国内タバコ事業の売り
上げが3兆2004億円です。

タバコが違法化されれば3兆円産業が喪失しますが、国民の
健康を考えれば仕方がありません。内風呂が普及して銭湯が
減少し、ホームセンターの普及が街角から金物屋を退場させ、
全国チェーンのスーパーマーケットが購買力を高め市場を買い
占めるにつれて個人商店の八百屋が仕入れられる野菜の質が下
がり、結果的に衰退していくように、JTだけが特別ではいら
れません。

売り上げを失った企業が雇用を維持することができないのも
リーマンショック以降の世界同時不況に連鎖して派遣村の
盛り上がりからも明らかです。

JTグループ47977人をタバコ事業の売り上げに比例して
リストラをすると下記の式となります。

国内たばこ事業÷連結(総売上)×従業員数=削減人数
32004億円÷68323億円×47977人=22473人

総売上から国内タバコ事業の売り上げの割合を求めて
従業員数に割り当てるという単純な計算ですが、2万2千人
の雇用が喪失します。

これに葉たばこ農家14000人が加わります。彼らは
「転作」、あるいは「廃農」が求められます。

加えて「流通」も加算されます。平たく言えばタバコ屋や
コンビニの売り上げに与える影響に、輸送費(配送費)も減
れば雇用機会の減少は避けられません。

また、テレビや雑誌広告なども売り上げが減れば減少し、
一般的には知られていませんが、たばこ自販機に飾られ
るダミーのタバコ箱を加工する内職仕事もなくなります。

これを「経済効果」といいます。これまた単純計算で
参考にもならないのですが、3兆円の売り上げに対して
営業利益は3638億円とありますから、差し引きで
2兆8366億円が「支出」されており、これが仕入れ先や
取引先の売り上げとなると仮定して単純合算で6兆円。日本の
電子商取引とほぼ同額です。

景気回復の見通しが見えないなか、違法化により
これだけの「市場」が喪失します。もちろん、税収も
なくなります。

そして「健康」を手に入れる・・・か、どうかはまた
別の議論がありますが・・・となります。

ここからは禁煙、嫌煙のどちらに立つものではあり
ません。情報公開を声高に叫ぶ民主党政権だからこそ

「国家経営からみて、6兆円の損失とタバコによる
健康被害からの経済損失のどちらが国益にかなうか」

という議論を私は待っています。
喧伝されるほど、有害ならば即刻違法化すべきです。
カドミウムや六価クロム、足尾銅山鉱毒事件を引き
合いにだすまでもありません。しかし、仮に健康被害が
3兆円ならどうでしょうか? それが500億円なら?

ちょっと古い資料からですが、2001年の厚労省の
「喫煙と健康問題に関する検討会」での試算によれば、
喫煙による医療費の増加額に関する4種類の試算が紹介
されており、1年間で、最小のものが2,565億円、
最大のものが3兆2,000億円とのこと。

すると最大ならば、JTの売り上げと同額の医療費
が増加しますが、最小ならJTの営業利益を下回ります。

そこでどうするか、こそが国家経営です。

もう少し、砕いて言えば損失と利益を比べて、
どっちをとるかです。さらにすり潰せば、目の前に
あるたい焼きを食べるか、肥ることを気にして我慢す
るかです。

ところが「健康」だけを前面に押し出します。
・・・だったら、違法化しろ! へと回帰します。

最後にひとつ嫌煙派が唱えるであろう議論をとりあげ
ておきます。

「タバコに使っていた金は他の消費へ廻るから、
経済損失はない」

というのはなるほどです。しかし、それが貯蓄に
廻る可能性も捨てきれません。

「金を煙にしている」

とのご指摘もごもっとも。そしてこれは私が喫煙者
だからハッキリいえることですが、タバコは浪費です。
浪費は消費を刺激します。

健康は分かりましたから「国家」を担う政府与党とし
て経済合理性からの説明を楽しみにしています。

え? 自民党はどうだったのかって。
あそこは「生かさず殺さず」でジワジワと増税したところから
「収益」としてみたことは明白です。

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