1分1000円の家族の肖像

 高知でそだったんだなぁとしみじみ。
20年前に父が亡くなり、自動的に家督を相続した私は
家族で生活していたときの荷物も相続しました。もともと
捨てるのが苦手な性分ですが、それでも引っ越しの度に
整理してきました。

しかしいまだに亡父のスーツやサングラスなどの何点かは
捨てられずに押し入れを占有しています。

そんな荷物の中に「8mmフィルム」がありました。
いつ撮影したのか、何をとったのかは不明です。
フィルムには直接「S51」と書かれているので、
昭和51年であることはわかりますが記憶にありません。

先日、押し入れを整理するとフィルムが4本あることが
判明、そこで8mmをDVDに転写してくれるサービスを
ネットで探すと墨田区に業者を見つけて依頼しました。

10分強の映像で1万円ちょっと。
つまりは1分1000円。高いか安いか。

マックブックで視聴するのは何が映っているか分からず
幼少のみぎりの私のあまりの痴態でも映っていた日には
闇から闇へ葬る予定で一人での鑑賞会です。

まず、私の運動会の様子。飛び交うのは土佐弁。

「しちゅう」「ちょる」「きに」

と語尾が懐かしい。
素人アングルのひどさから本人特定が困難で、また
長時間撮影ができない家庭用フィルム故の細切れで
何が何だかわからず、続いて姉の運動会で、こちらはさら
にひどく実弟の私が見ても朧気にしかわかりません。

場面変わってサルの軍団。
ここには今は亡き祖母と親戚も映っていました。

しっかしかわらんちゃぁと映像を見て呟いたのは、
家族と親戚で騒ぐ様をちょっと遠巻きに見ている自分の姿。

フィルムの中の祖母は指摘します。

「あつしはすっかり怖がっちゃて」

餌を取りに来るエテ公に恐れおののいているという論旨ですが
いやいやばぁさん、私は観察していたのですよ。そしてもう一つ
うっすらと覚えているのが、この東京の親戚家族と我が家の違いに
面食らっていたというおまけもつけて。

人間観察はこの頃からの習性と噛みしめました。
姉と姉の長女である姪が生き写しでということを確認して
愚妹はまだ見事な赤ちゃんですが、兄妹の中で唯一の「アップ」が
収録されています。母はというとそれはもう見事な

「関西圏のおばちゃん」

パンチパーマのような髪型をしています。ただ撮影年から
推定するに彼女は27か8、確実に30歳前なのですが。

そして最後の映像。暗すぎて分かりません。
露光が足りないのです。

姉と私がそれぞれ歌を歌います。顔はほとんど判別つきませんが
声でわかります。姉もハスキーですが、私のそれは殆ど雑音。

我が家は5人家族でした。父母に姉弟妹です。
もろもろありその後ばらばらとなりましたが、とりあえず、
みな生きております。父を除いて。

映像に父の姿はありません。
父は家族の肖像の監督&カメラマン。
これが残念といえば残念。父はここにもいませんでした。

しかし、最後の暗闇映像に父の「声」を発見。姉との会話です。
個人情報(笑)につきつまびらかにするのは姉の許可をまちた
いところですが、父の発言は一応「相続者」である私の権限で
公開します。

「ボケ、カス」

暖かい家族の会話に普通に飛び交っていたこれらの言葉を
思い出して少しだけ涙がこぼれました。

金で買えないものがある。金で買えるものがある。
1分1000円。プライスレスなプライスです。

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