実に難しいネタに切り込んでいる今月号。
ネットを渉猟していると、科学的知見も含めた情報量が多いユーザーほど、現都政に批判的なのですが、対して一般世論ではいまだに大人気の小池百合子都政について切り込んでいます。
手持ちの情報量と立場で、意見が分かれるからで、それは豊洲移転派と築地残留派の対立が深刻になっていることからも明らかです。
小泉劇場を差配した飯島勲氏による《小池都知事は一年ももたない》と、豊洲市場移転に急速にくい込んでいったジャーナリスト有本香氏の《築地か豊洲か「小池百合子劇場」を断罪する》の2本。
都民ファーストの会から出馬するすべての否定も肯定も幼稚な議論。それは「民主党政権」を生み出した悪夢の再来です。
地元の候補者がどんな人物で、なにに問題意識をもっているか。それを考える上で、有本香氏の論考は役立ちます。
都民限定のネタ、というのも全国発売の雑誌として、勇気のある企画ではないかと。
高卒、プータロー経由の私にはまったく縁のない世界を論じるのが中野剛志氏と松原隆一郎氏の対談《国を滅ぼす東大改革の真相》。
知って驚いたのが《東大法学部には卒論がありません(中野)》。
知識詰め込み暗記型のカリキュラムのまま官僚となり、その官僚が「改革」を考えるから筋悪になると喝破します。
論文を書くには、軸となる仮説が必要で、仮説を検証していくための証拠集めが論文とも言えます。立てた仮説が実像にあわなければ、仮説を組み立て直すべきですし、追加情報の収集も必要かといった検討がなされます。
反省文しか書いたことがなく、また無学ながらも、どうにかこうにか文章を書けるのは、プログラミングという「仮説」の組み立てに従事していたからでしょう。
この経験がないまま、中央官庁にはいり、国家の舵取りという「仮説」を立てるとは、無免許運転のまま大型バスの運転手になるようなものです。
締め切りのタイミングから、先月号に間に合わなかったのでしょうが、今月号のサブタイトルを忖度してつけるなら
「ありがとう! 渡部昇一先生」
ってところでしょう。
髙山正之氏との幻の対談、各氏の追悼記事からも、相当きびしい体調だったはずが、軽妙でいて明晰で、優しさが滲み出る言葉に別れを惜しむ言葉しか思い浮かびません。
ただ全身を襲う痛みの中も、思考が停滞することを嫌い、モルヒネを拒否していたと知ると、少しお休みになり、残された我々は書籍を通じて対話を楽しむべきなのではとも。
グラビアも渡部昇一先生。小学校入学時の姿に栴檀は若葉より芳しとの格言も陳腐になる輝きを見つけます。
■月刊Hanada 2017年7月号 「小池百合子劇場」を断罪する
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