アイドルをビジネスと捉えなければ再発する

 タレントで大学生の富田真由さんが、元ファンというかストーカーに刺されて重体です。

 事件から日が経ち、いまだ重体とは、予断の許さない状況なのでしょうが、かろうじてながらとりとめた命ならば、奇跡の訪れを願うばかりです。

 岩埼友宏容疑者の一連のツイートやブログからは、身勝手で卑劣な人物像がありありと浮かび、警察はなぜ、事件を防げなかったという問いかけが虚しいのは、この手の人物は一定割合で必ず存在するからです。

 今回は「アイドル刺傷事件再発防止」の具体策を考えてみます。

 この手の事件が起きる度に、警察の対応への疑問が投げかけられますが、それは「わがまま」というもの。警察は神ではなく、できることと出来ないことがあります。

 全てを警察が未然に防ぐとは、一線を越えていない人物を連行することへとつながってしまいます。

 その先に待つのは、国家権力の暴走です。警察の恣意性が、政治権力と直結しやすいのは、反日パヨクが嘆く通りですが、日頃、人権や自由を主張するパヨク文化人どもが、この手の犯罪を前にすると警察権の強化や、法整備を叫ぶところがおぞましいまでのダブルスタンダードです。

 岩埼友宏の一連のネット上での発言は、事件から遡れば危険極まりないものであっても、思いこみという錯覚の光の面が「ファン=信者」であり、裏側は対比される闇となりながらも、表現の自由との兼ね合いが残され、手を出すことは困難です。

 仮に恋愛関係にあった二人のやりとりならば、警察の動きは多少なりとも違ったモノになった可能性はあります。繰り返されるストーカー犯罪と、その度に批判に晒される警察に、一定程度の学習効果が確認されています。

 ところが、今回の事件では、人前に姿やプライベートの一部をさらすことを前提とした「アイドル」を名乗っており、そのファンとのやり取りは先に触れた通りで、熱心なファンが、スキャンダル発覚など、些末なことでアンチに転じるのは、昭和時代から変わらぬ光景で、正常異常の線引きは色恋沙汰のそれとは違ってきます。

 また、岩埼友宏は妄想力が強すぎ、まともな日本語の理解力に欠けているようで、語弊を怖れずにいうのなら「常識」という下敷きから犯行を予見することは困難。

 通常、恨みは蓄積していくもので、身勝手とはいえ報復行動は段階を踏み、「リベンジポルノ」への注目が集まってしまった三鷹の女子高生刺殺事件における池永・チャールス・トーマスでも、「エスカレート」の過程はあったのです。

 いわば、この事件は「通り魔」に近く、同様の事件の再発防止は大変困難です。

 先に述べた国家権力足る警察の暴走だけではありません。銭金の話しに置き換えれば、通り魔的ネットストーカー犯による、同種事件の再発防止が、困難であることを理解できます。

 いま、警察のサイバー犯罪取り締まりは、相当高いレベルにあり、特にこの手の「ネット粗暴犯」は、監視対象になっていることは各種取材で確認されています。

 その上で、警察がアイドルのファンを、岩埼友宏と同じタイプだと仮定し、本件を未然に防ぐとするならば、ちょっとした「愚痴」や、ヤキモチに端を発する「いやがらせ」で、検挙や職質をかけなければならなくなります。

 「いやがらせ」は駄目だろうといっても、これも程度の話し。岩埼友宏の発言も「いやがらせ」レベルではありますが、主語がハッキリしておらず、誰に向けたモノかの特定は困難です。本人が否定すれば、否定できてしまうレベル。前後関係は結果論で、リアルの生活における女性とのトラブルを書き込んでいたと強弁されれば、この証言を崩すには岩埼友宏の身辺調査が必要となります。

 さらに、バーカ、ブース、の暴言すべてを取り締まるとするならば、警察組織の増員増強は不可欠。その分、予算をとらなければならず、いうなれば

「SNS取り締まり増税」

 が必要となり、これに賛成する国民は多くはないでしょう。

 取り締まりの強化と気軽にいいますが、警察官だって人間です。能力と体力には限界がある以上、いま以上の警備警戒を強化するのであれば、取り締まる権力権限を強化するか、その為の武器や道具を強化するか、人海戦術に頼るしかありません。

 もっとも金がかからないのは、権力権限の強化ですが、国家権力の暴走を加速させるリスクが強く、健全な方法ではありません。残る2つはいずれにせよ「金」のかかる話です。

 しかし、そもそも論に帰れば、これはなぜか既存マスコミが執拗に「アイドル」と繰り返すタレントの事案です。

 一方で

「プライベートを晒している一般人は多くない」

 のです。

 女子高生が無防備に個人情報を晒しているケースもありますが、見知らぬ人からフォロー申請があると「キモイ」と無視するのが大半で、なにより今は「LINE」という閉ざされた空間で戯れおり、このコミュニティに外部から接触することも可能ですが、乙女の保守性は、昭和時代とさして変わっていません。「報道」は刺激的な部分を抽出しているだけで、化粧の濃い女子高生は確かに増えましたが、化粧と貞操観念は必ずしもリンクしません。

 さらに、大学生や社会人になると、私生活をネットに公開することのデメリットが増えます。ネット上では、全ての食事を公開し、夕焼け小焼けの赤い空をインスタグラムに投稿する「意識高い系」な人を多く見かけますが、これはノイジーマイノリティー。

 自意識過剰な人種は、その性質から執拗に自己宣伝を繰り返しているから、目につくだけで、日本人感覚における普通の自意識の人は、静かに一日終わりを過ごしているのです。あるいはそうした意識高い系の「フレンド」を憐れんで、「いいね!」をクリックする作業に追われていることでしょう。

 要するに、見ず知らずに他人から攻撃を受ける一般人は少なく、大衆の利益に照らしたとき、SNSの取り締まりに緊急性は感じられず、その為の税負担が歓迎されることはありません。

 また、本事件では「Twitter」を凶行の舞台装置とする報道もありますが、被害者は容疑者からの執拗な嫌がらせに「ブロック」により関係を断とうとしています。

「ブロック」することにより、加害者は被害者の発言を見ることができなくなり、被害者も加害者の言動に触れることがなくなります。

 ところがこれは容易く回避できます。別のアカウントを取得すれば、簡単に参照することができるのです。

 そもそも「無視」を決め込むことで、相手の憎悪感情を高めてしまうのは、郷ひろみの「よろしく哀愁」にある歌詞の裏返しです。

 アイドルとファンの関係は、一種の疑似恋愛であり、それを利用するビジネスモデルです。

 スナックのホステス、キャバクラのキャストと客の関係も同じくですが、どちらにも背景には怖いお兄さんがいることは公然の秘密で、昭和の芸能史ではこの手の話しは常識で、いまでも大手芸能事務所にも黒い噂は絶えることがないのは、そこには疑似恋愛から派生するリスクがあるからです。

 歌舞伎の始祖は「出雲阿国」という女性で、かつては女性が演じる「女歌舞伎」が主流でしたが、裏メニューというか公然の秘密として、演者が春をひさいでいました。要するに売春です。

 これが風俗を乱すと嘉永6年に禁止され、かつてのジャニーズ事務所の主力タレントのような成人前の男の子による「若衆歌舞伎」にかわりましたが、お稚児さんというかショタコンというか、性に大らかな日本では、これまた性風俗産業となって禁止され、いまに繋がる「野郎歌舞伎(やろうかぶき)」となります。

 野郎には野郎の需要があり「野郎買ひ」なる言葉も残るのですが、とにかく踊りや芸と、セクシャルは切り離すことができないもので、当然ながら欲と金が絡み、現実問題として、いまも怖いお兄さんの影が残るのです。

 ところがインディーズレベルの「自営業アイドル」にケツ持ちはいません。

 身を守る術は警察しかない一般人が「アイドル」を名乗り、疑似恋愛でビジネスをするリスクは高いのです。そしてその「アイドル」はビジネスであり、静かに生活を営む一般人ではありません。

 本事件で欠けている論点です。「アイドル」は商売なのです。繰り返しますが、一般市民ではありません。端的にいえば営利活動です。

 ならば、手っ取り早い再発防止策は、提供する側、アイドルの方にあります。「襲われる方が悪い」というのではありません。アイドルとはビジネスであり、ならば出演者や観客の安全確保は、興行の主催者が責任を取るべきだと言うことです。

 なお、先の「怖いお兄さん」らは、その合法、脱法、非合法のすべての手段を駆使して、その責任をまっとうしていました。

 今回の事件でも実際には、アマチュアバンドのライブのようなイベントだったようですが、か弱き女性の「アイドル」によるイベントを開く側には、地元警察署からの「お願い」という形で、最寄り駅からの送迎を事実上義務づければ良いのです。

 法律を変えるまでもなく、ライブハウスのような箱は風営法の管理下にあり、それは警察の恣意性が発揮できる空間です。

 多くの会場は、ビジネスの構造上、駅からそれなりに近いのですから、タクシーをチャーターしてもたかが知れている費用負担です。

 いまはどうか分かりませんが、かつてのライブハウスに出演するような連中は、出演者の方が犯罪者に近く、ファンを殴りつけるような連中もいたので、話題にもなりませんでしたが、この場合のアイドルとは若い(かはともかく)女性。一般論で「か弱き」とつけて良いでしょう。

 この手の規制に反対する立場(スタンス)ではありますが、アイドルという名の出演者らを送迎しても、興行として成り立たせるのが営利活動。駄目なら止めるべきで、なにより女性は護るべきという価値観は、自由をなによりとする主義のリバタリアニズムをも上回ります。

 金属探知機の設置は、賛否が分かれるところですが、会場入口での手荷物検査ぐらいは必要でしょう。

 送迎費用、手荷物検査の費用負担を、会場や主催者が嫌うなら、それをすれば儲からないということでもあり、こういう理屈成り立ちます。

「アイドルの安全より銭儲けか!」

 実際、自己申告のアイドル「地下アイドル」のイベントは、出演者にチケットノルマが与えられており、達成できなければ「自腹」で、これはライブハウスの仕組みと同じ。

 ネットで調べただけなので、相場として妥当性には欠けますが、アイドル一人当たりの出演料は、高くてもせいぜい2万円程度だとありました。

 ビジュアルなり、歌唱力なり、タレント性があれば、それなりにファンがつくことは容易なようで、1枚2千円のチケットなら10枚、千円でも20枚売ればペイできる金額。

 これに加えて出演料が多少・・タクシーのワンメーターぐらい・・・上がったとて、問題になることはないですし、それぐらいの値上げで音を上げるならば、アイドルを諦めるちょうど良いきっかけになるでしょう。

 また、主催者が負担できるぐらいの人気アイドルをブッキングすれば良いだけの話しです。営利活動で捉えれば、とても単純な話しなのです。

 ちなみに「移ろいやすい音程」をもったボーカリストとしては、鈴鹿ひろ美の先駆けだと自負する私の時代、だいたい出演に支払う料金は、バンド当たり5万円で、メンバー4人で割ると1万2千5百円。これを越えた分は「儲け」となります。そしてライブに参加する度に、私は黒字。

 それは売り込みが上手かったから。だから、黒字ながら「動員」は少なく、ライブ会場より打ち上げの人数が多かったのは秘密ですが、多分、そちらの才能があったのでしょう。

 なにはともあれ、再発防止を真剣に考えるなら、

「アイドル」

 で稼いでいる関係者の負担が、もっとも迅速で法律もいじらず、警察という公金も使わず、さらに国家権力を必要以上に強化させずに済む方法です。

 で、これをマスコミが言わないのは、程度の差こそあれ、同じ穴のムジナだから。クソですね。

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