「戦後補償」について、ドイツと比較し、日本を唾棄する主張があります。これへの「反撃」は、今月号に寄せられた西尾幹二の
“朝日叩きではない、朝日問題の核心”
が武器を与えてくれます。端的にいえば国家の罪を、ナチスやその関係者の個人的な罪にすり替えたということ。なぜなら、その罪が大きすぎるからです。
六百万人のユダヤ人の集団殺戮、二百万人のポーランド知識人あるいはそれを上回るソ連人の殺戮、五十万人のジプシー殺害などなどと例を挙げ、これを
「ドイツ民族の罪」
と認めてしまうことができなかったがゆえの結論が「個人保障」だったということです。そして虚構の「従軍慰安婦」を、もってドイツと重ねる愚かさを喝破します。
WiLLのいつもの論調は充実しておりますが、それよりも今回、瞠目した記事を2編あったので紹介します。
まず、西岡昌紀の
“ノーベル賞三人受賞、しかし、日本の科学教育は大丈夫か”
臨床医ということもあってか、論の絞り込みに若干のブレがあるというか、「あれもこれも」と詰め込みすぎているのは、私も同じ病気を持つので気持ちは分かりますが、整理されれば尚良いだろうと上から目線で断っておきます。
ゆとり教育の弊害と実状を指摘しながら、英語教育とタブレット授業に疑義を提示しながらノーベル賞に進みます。
益川敏英博士がノーベル賞受賞のスピーチ
「I can not speak English」
を紹介し、多少の謙遜を含みながらも、英語ができないまま物理学賞を受賞した事実を指摘し、その理由を「日本語」に求めます。
アジア、アフリカ諸国では、自然科学を学ぶ前に、英語やフランス語、ラテン語を学ばなければなりません。それは、母国語に該当する単語がないからです。
質量、運動量、角運動量、電荷、磁束、原子、分子、電子、微分、積分と例示し、日本人は当たり前に使っており、母国語で自然科学を学べる環境が、ノーベル賞を生み出した素地になったと主張します。
そして英語教育とタブレットに戻ります。果たして、そこに注力すべきか。「日本語」の学習は足りているのかという問題提起です。
掘り下げると蛇足になるのでやめておきますが、「自由」や「野球」も同じ。一点苦言を呈するなら、カタカナ語の反乱にまで踏み込んで・・・って言語学者ではなく、お医者さんでした。
もうひとつが谷岡一郎の
“カジノ反対「厚労省調査」の嘘”
をひと言で表す言葉を、同誌連載 日下公人氏の原稿に見つけたので引用します。
「統計は嘘をつかないが、嘘をつく人は統計を使う」
ユダヤ人学者の言葉として紹介された言葉は、厚労省が調査した
「日本人のギャンブル依存度」
にそのまま当てはまります。
“ギャンブル依存疑い536万人”
“成人男性の1割弱”
と、紹介する紙面が「朝日新聞」であるところに、WiLLの意地悪を見つけるのですが、「ギャンブル学」を牽引する谷岡博士は、いくつもの問題点を指摘します。
詳しくはお読みいただくとして、一番の欺瞞は
“時期が特定されていない”
こと。統計にすら値しません。先の依存の根拠となった数字は、こうした設問から生み出されているのです。
“今までに、あなたは次のタイプのギャンブルのうち、どれをしたことがありますか”
つまり、生まれてから今までの人生を通算しての回答で、仮に過去にギャンブル依存症だったとして、いまは克服して博打から足を洗った人でも「カウント」されるのです。
その他にも実数「1」を「2.7%」と発表するなど、統計学以前の「データ」を厚労省が発表しているのです。そして一部マスコミは無批判にこれを引用し、昨夜もTBS「ニュース23」で、カジノ関連法案の進捗を伝える際に使われていました。
それともうひとつ。
『ガレキとラジオ』を巡る、朝日新聞の顛末も必読。
■WiLL 2014年12月号 朝日の「反転攻勢」にもう一撃!
http://www.as-mode.com/check.cgi?Code=B00OBSQIMQ