ウェブ有識者の社会常識

デジタルネイティブとは物心ついたときから、パソコンやインターネットに慣れ親しんだ世代を指します。

ウィンドウズ95が発売されたときに産まれた子が二十歳を迎える2015年、生まれ落ちた瞬間からインターネットが日常に溢れていた、真の意味でのデジタルネイティブが投票権を得るようになります。

こうした時代の流れを考えれば「ネット選挙」の是非を論じることがナンセンスです。

また候補者や政党が選挙期間中もネットを利用することで、有権者がより多くの情報に接するチャンスが増えることに異論はなく、ネットを駆使することで、選挙費用を抑える効果への期待を否定はしません。

しかし、こうした「楽観論」に頷けません。

筆者がITジャーナリストとしての取材から得た情報からはもちろん、ホームページの運営経験から、ネット選挙の解禁により深刻な民主主義の危機が訪れてもおかしくないと知っているからです。

ことは日本の民主主義を担保する「選挙」です。

大失敗が許されないのであれば、事前に最悪のケースを予期しなければならないことは、東日本大震災における福島第一原子力発電所での重大事故からの教訓です。

ところが既存マスコミに登場する専門家と紹介される

「ウェブ有識者」に共通するのは「オプティミズム(楽観主義)」

です。とにかく始めてみよう、やればわかると煽ります。

性善説に立ち、悪意を過小評価し、トラブル解決策への具体的な言及を遠ざけて「思考停止」する構造は、まさしく福島の事故前の原子力発電と同じアプローチです。

そもそも人間社会の現実は白と黒とパンダのように色分けされるものではなく、限りなく闇に溶けるグレーから、夏の日の陽炎のように限りなく透明に近い霞まであります。

むしろ「グレー」の細かな違いの中に人類の営みがあるといっても良いでしょう。

ネットの選挙利用も同じです。

包丁は肉を切るか、人を刺すかの区別をしません。
あくまで包丁を持つ人間が決定することであり、ネットも悪意を持って利用すれば簡単に他人を傷つけることができます。

こんな当たり前のことからもウェブ有識者は目を逸らし、ネット選挙における対策を講じなければならない課題として取り上げることはありません。

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