不正アクセスにより580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」を強奪されたコインチェック社。コインチェック社は仮想通貨交換(取引)所と呼ばれる、仮想通貨の取引を代行する会社で、被害にあったのはお客から預かっている仮想通貨です。
コインチェック社はお客に460億円を日本円で返還すると発表。ここで3つの疑問が浮かびます。
・580億円が460億円とは
・460億円ものお金がなぜあるのか
・その460億円は本当にあるのか。
昔からお付き合いの読者には、覚えている方もいるかもしれませんが、仮想通貨を巡るトラブルは、すでに4年前に「予言」しております。
ビットコインの最王手だった「マウントゴックス社」が破綻したのが4年前で、ニュースを受け「号外」を発行し、こう書き出しております。
《日本最大のビットコインの取引所、「マウント・ゴックス」がサービスを停止しました。同社のマーク・カーペレスCEOは「まだ日本にいて、関連企業のサポートを得て問題解決に向けて懸命に働いている」とコメントしていますが、ネット上には同社保有の「ビットコイン」が不正アクセスにより、既に盗まれており、弁済能力がないと告発する文章が流通しています。
今週、2本の連載で「ビットコイン」の問題点を触れました。入稿はマイナビが先週の月曜日で、Web担が先週の水曜日ですから、この事件が起こるとわかって書いたものではありませんが、焦って取り上げたのは事実です。なぜなら、いつ破綻するかのチキンレースだったからです。》
4年が過ぎ、危うさは放置されたまま、市場規模だけが拡大している、それが現実です。
バブルがはじけず、超バブルになっております。
賭博としてはヒリヒリするほど面白い状況ですが、それを金融当局が事実上の野放しにし、マスコミがCMを垂れ流すことで後押しし、さらにニュースやワイドショーが、「ビットコイン」の高騰を面白おかしく報じるという「みんなグル」の状態。
博打は自己責任。そして博打を否定しません。しかし、あけすけに他人に勧めるものでもありません。そしてお金が儲かれば何でも良い、という立場でもないものから見て、呆れるというかいかれていると見ていました。
疑問にもどります。
580億円が460億円になったのは「時価」の基準の違いです。580億円とは被害にあった当時のレート。対して460億円とは、コインチェック社が独自に定めた日時、たしか被害発覚の翌日のある時間から算出した「時価」。
つまり一日前後の間に、2割もの「時価」が減った計算になります。これが現在の「仮想通貨」の状況で、昨年は「ビットコイン」が一日で半額近くに下落したという騒動もありました。
ちなみに、その後、今回被害にあった「NEM」は値を戻しているので、お客のなかには、補填額が少ないという不満もあり、さらには「日本円ではなくNEMで返せ」という声もあります。
さて、ここにマスコミが報じない「仮想通貨」の根本的な欠陥が見つかります。
《一日で半分になる「通貨」は使えない》
例えばパン屋さんが、千円の代金を仮想通貨「ミヤー(仮)」で受け取ったとします。その時、千円=100ミヤーが、夕方には千円=200ミヤーになっていれば、受け取った代金は日本円にして半額ということです。
パン屋が小麦粉やバター、卵などの仕入れを「日本円」で行っていれば、売り上げから可能となる仕入れはその半額です。
もっと簡単にいえば、受け取った千円札が、相場の変動で五百円玉に化けてしまう、それが現在の「仮想通貨」ということです。
ところがマスコミは「通貨」としての説明を試みます。しかし、この「欠陥」には触れません。まるで「広告主」に配慮しているかのよう・・・あ、いつものことですね。
とても「通貨」として使えない。これが現実です。
仮想通貨を批判すると、その中核技術である「ブロックチェーン」を引き合いに「新しい技術をDisるな」的な批判の声があがるのですが、社会は技術のためにあるのではなく、社会をより良くするために技術はあり、社会に資さない技術はマニアのなぐさみものに過ぎません。
そして4年前にすでに起きていることです。
盗んだ犯人が悪いとは言え、今の「仮想通貨バブル」とは、この4年間に目をつぶっていたかの金融庁、政治、業者、そしてマスコミによる政官財・マスコミによるコングロマリット社会騒動だということです。
そもそも論で言えば、世界、とりわけEUは「仮想通貨規制」に舵を切っており、野放図に推奨している国は日本を筆頭に限られています。
日本が仮想通貨マンセーを続けた理由は、仮想通貨そのものではなく「金の見える化」にあります。
先進国の中で突出した現金使用率を誇る我が国。治安が良くて偽札がなく、また多くの国民が「お釣り」を暗算できることから、いまだに現金が多く使われております。
すると政府(官僚)から見て「補足不能」な資金が生まれてしまいます。これを撲滅することで、すべての金の流れを抑えることで「税収」をより確かなものとし、さらには滞留している資金を炙り出し、そこに課税するという狙いがあります。フィンテックの啓発もこの流れにあります。
電子化は社会の必然ではありますが、仮想通貨に至っては勇み足。賭場にお墨付きを与えたようなものですから。
金融庁はそれをよく理解しているから、コインチェック社の騒動を受けて、仮想通貨取引運営会社のすべてに立ち入り検査をすると発表したのです。
それが健全な業界・業種ならば、問題を起こした会社だけのはなしのはずが、そうでないから検査にはいり、「監視しています」と慌ててアリバイを作っているのです。
仮想通貨取引運営会社は、新時代の貨幣を造る!等々、それぞれの使命感に燃えてやっていることでしょう。
しかし、それが一般常識に照らしたときに「賭場」ならば、相応の規制なり、消費者への警告や啓発をするなり、義務づけするなりが必要でしょうが、金融庁はここが手薄だったのです。
本来ならば金融庁=政府の失態ともいえ、「野党」にとっては美味しい攻撃材料・・・ながら、「モリカケスパ」と国会で念仏を唱えています。無能な野党こそが、安倍政権の最大の支援者といって良いでしょう。
冒頭の疑問の続きに戻ります。
「460億円ものお金がなぜあるのか」。
コインチェック社は数多くの仮想通貨を取り扱っております。
仮想通貨に詳しいあるブロガーは、取扱高を推計し、各種取引手数料から2017年だけで2000億円の「粗利」があると試算しました。
経済評論家の荻原博子氏も「2000億円の現金があるはずだから大丈夫」としたり顔。
ブロガー自身も「推計値」と認めている試算を、確定値として語る萩原博子氏の厚顔ぶりがいかしています。
話し半分としても1000億円。なるへそ、返済には十分でしょう。すると自動的に3つめの疑問に繋がります。
「その460億円は本当にあるのか」
レートはともかく460億円ものお金が、創業から十年にも満たないコインチェック社が用意できるのか。
もっともな疑問で、先の2000億円が本当ならば、その「現金」はどこにあるのか。
常識で考えれば「銀行口座」でしょう。ところが、コインチェック社による保有する現預金で支払うという説明に、金融庁は納得していないと2018年1月29日の読売新聞は伝えます。
先頃引退を表明した小室哲也氏は、
「銀行の通帳って100億円は載らないんだ」
と、その絶頂期に知ったと言います。通帳に印字できる桁数に限界があるということです。
しかし、いまどきの企業なら「ネット口座」を開いており、印刷する桁数が足りないということはなく、2000億円も現預金をもっていれば、取引先の銀行には専属の担当者がついていることでしょうし、電話一本で説明に来ることでしょう。
果たしてコインチェック社は「日本円」をどこに置いているのでしょうか。
さらに手数料収入には「消費税」がかかり、確定消費税額が48万円を越えると、所管の税務署に「中間報告」しなければならず、2000億のレベルになれば、毎月報告しなければなりません。
某かの事情で現預金について十分な説明ができなかったとしても、こうした関連情報からでも、「資金」の裏付けは可能なはずながら、金融庁が納得しなかったのは何故か。
経済評論家ではないので、憶測を断定することはせず、推移を見守りたいところですが、状況証拠からだけみれば、日本円の存在に疑問を持ちます。
4年前に「予言」したのは、当時からすでに「リアル店舗で仮想通貨が使えるようになった」という話しを耳にしたことがきっかけです。
そして調べたことを「常識」に照らして計れば「ヤバイ」。例えばビットコインなどの仮想通貨で支払うにせよ、国内の取引なら消費税が発生します。
税率8%とすれば、100万円の手数料に8万円がかかり、それは100ビットコイン(BTC)ならば8BTCとなることでしょう。
このあずかった8BTCが、納税までの短期間に100倍に跳ね上がったとき、税務署に納めるのは、発生主義に立てば、預かったときの日本円相当ですから、差額から「益税」が発生します。
納税額を銀行に預けておくことで生じる金利については、かねてより議論がありますが、仮想通貨においては桁違いの事態が発生するのです。
これらも4年前にすでに予言していたこと。ま、私如きの私的などが社会に影響を及ぼす訳もありませんが。
こちらは動画版↓
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