ハロウィンを巡る捏造レベルの報道

 マスコミのレベル低下を嘆くことは「いまさら」な感じもしますが、特に「テレビ」にフォーカスしたときに、信用できない情報が拡散していることに溜息が止まらない日々です。

 先週末の「ハロウィン」を巡る報道などその最たるもの。

 報じる番組の全てで、局の垣根を越えて

「ハロウィン、バレンタイン越え」

 と銘打ちます。

 各種連載でも指摘しましたが、この数字は

「社団法人 日本記念日協会」

 によるもので、彼らはその調査方法を明らかにしていません。記念日を盛り上げる彼らのビジネスモデルは否定しませんし、毎日を特別な日とは、歌謡曲の歌詞のようですが、楽しもうとするその姿勢は嫌いではありません。

 しかし、調査方法、集計手段の明らかにされていない統計は統計に値しません。江戸川区在住の田中さんの家庭内における「好きなおかずランキング」を、「日本の人気メニュートップ10」と発表しているとは穿ちすぎでしょうが、遠くはありません。

 百歩譲って「バラエティ番組」ならともかく、ニュースを報じる情報番組でも同じ立ち位置で、真贋不明の情報を垂れ流します。

 さらにニュースサイト「THE PAGE」で、

“(ハロウィンは)規模としては、クリスマス、ホワイトデー、バレンタインデーなどには遠く及ばない状態”

 と指摘した、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの妹尾康志氏を出演させたTBS『ひるおび』は、こうした市場の実態についてからアプローチせず、「盛り上がり」のみを切り取った「経済効果」を語らせます。

 統計を借りた詐術です。今月の『WiLL』の日下公人さんの連載で、ユダヤ人学者として紹介した

「統計は嘘をつかないが、嘘をつく人は統計を使う」

 とまったく同じです。

 自己利益のために統計を使うのは、広告や販促ではよくある手法ですが、当然ながら「報道」ではありません。

 社会学者を名乗りながら、日本記念日協会発表の数字を、批判も加えなければ出典も明記せずに引用した開沼博氏のような人物もいますが、学者が「トンチキ」であるのは、古市憲寿をみれば分かるように、奇矯さを新奇性と勘違いするのは「ありのままの自分」を礼賛した「ゆとり教育」を背景とし、検証、すなわち「裏とり」をせずに報じるのは朝日新聞と同じメディアの劣化です。

 ちなみに日本記念日協会のサイトには「バレンタイン越え」の理由が明記されていました。今年のバレンタインは「大雪」のため、大きく消費が落ち込んだことによる「逆転劇」で、一般的にそれは異常値や参考値と呼ばれるものです。

 この数字もメディアを席巻しました。

“ハロウィンにかける予算 男性7,274円、女性5,575円”

 ネット調査会社「マクロミル」の集計で、15〜49才までを10代、20代と年齢別に刻み、4階層を均等に回収し、合計サンプル数1000での統計です。

 次より指摘するように、問題ありありの統計ですが、少なくとも調査対象を明らかにしている分だけマシです。

 このマクロミルの「統計」も、ハロウィンが盛り上がっているというベクトルでまとめられています。それは調査結果を照会するページの見出しに明らかです。

“ハロウィンに「興味がある」65%”

 と銘打っていますが、

「あなたはハロウィンに興味がありますか?」

 という質問に「とても興味がある(24.0%)」と「やや興味がある(40.5%)」と答えた合算値だからです。「あまり興味がない(20.0%)」であることから、

“積極的な興味を持たない層が6割”

 と銘打つこともできます。回答の選択肢に「どちらでもない」をいれれば、これが最多得票数になったことでしょう。

 そして先の予算は

“今年のハロウィンにちなんで何かする予定はあるか?(何かしましたか?)”

 という質問に「はい」と答えた28.1%への追加質問です。つまり、全体の分母からの回答ではなく、積極的に参加を予定していると回答した人の「予算」ということです。

 するとこんな仮説がたちます。

「飲み会の費用じゃないか?」
「合コンの費用じゃないか?」
「出会いにあぶれた男女のイベントではないか?」

 これを悪いとは言いませんが、「報道」ならば、これぐらいの角度からの仮説を立て、検証取材をすべきではないかということです。

 「ファクト(事実)」を伝えるのが報道だ!

 と反論もあるでしょうが、ならば、首都圏以外の繁華街でのハロウィンも検証しなければ、

「都市部の珍事か、日本国の社会現象か」

 を論じることはできないのです。これは「脱原発」や、サッカー日本代表戦後の渋谷の乱痴気騒ぎと同じ。前田敦子がキリストを超えたと主張するレベルの珍説どころか妄想です。あるいは奥州市のポスターが、JR東日本に掲載拒否された、裸祭りの「蘇民祭」をもって

「日本人のフェスティバルは裸が基本!」

 と喧伝するようなものです。余談ながら補足すれば、

「首都圏の繁華街は異常」

 であることを忘れています。ホワイトカラーが酔っ払い、ふらつく街など日本だけとも言われており、渋谷での乱痴気ハロウィンの背景には、日本特有の「異常性(変態性)」が隠れていることを誰も指摘しないので指摘しておきます。

 マクロミルが配布するPDF資料に当たれば、

「10代男性は68%がハロウィンパーティに参加」

 とあります。10代とは15才から19才までで、一般的には大学生と高校生が対象となりますが、仮に10代の回答者が「大学生」に集中していれば、

「キャンパスライフ」

 に過ぎず、一般論ではありません。学祭です。

 そもそも世代毎の集計を装っていますが、10代は15〜19才までと、他の年代より世代の集中が激しく、日本全体の「人口構成比」からみればボリュームゾーンの「団塊の世代」が抜けており、さらに「団塊ジュニア」への傾斜配分がありません。つまり、マクロミルの統計とは、そもそもの「分母」が、実際の日本に重ねていないのです。

 そして実数で追えば、マクロミルの調査の「穴」というか、バイアスが見えてきます。

 まず、十代男子のイベント参加人数を求めます。

1000(総数)÷4(世代)÷2(性別)×68%=85人

 ハロウィンの予定アリと答えた数字は28.1%で、これは総数に対しての割合ですから、

1000(総数)×28.1%=281人

 となります。

 ここから「十代男子」を除きます。

1000(総数)−125(十代男子)=875人

 ハロウィンの予定あり

281人(全体)−85人(十代男子)=196人

 となり、平均値28.1%を大きく上回る十代男子を除いたイベント参加率は以下の数字となります。

196人÷875人=22.4%

 4分の1を下回ります。

 繰り返しになりますが、ここには人口構成比どころか「団塊世代」がそもそもカウントされていません。いっそ、

「若者におけるハロウィン意識調査」

 にすれば、より「望む結論」になるでしょうが、そうしなかった理由にこそ、こうした「統計を使って」の目論見が見えてきます。それは

「国民的イベント」

 へとつなげることです。

 「認知度」だけなら、幼稚園児や小学生をいれれば、ほぼ100%に跳ね上げることができますが、これでは「子育て世帯」にイメージが固定化されるリスクがあるので避けている・・とは、私見に過ぎませんが、前提として統計の大半は「意志(意図)」が込められています。

 調査会社の「独自調査」とは商品サンプルであり、販促ツールで、その「独自調査」に求められるのは、調査精度の高さよりも、クライアントの心を掴む、キャッチーな数字です。

 ハロウィンが盛り上がっている。という前提に立てば、来年以降、ハロウィンへの参加を検討する企業が、「市場調査」に乗りだせば、その調査をマクロミルに発注する可能性は高まります。

 さらに業界を裏側から見れば、「魚心あれば水心」で、望む結果に人は群がります。ハロウィンが盛り上がっていると認識が拡がれば儲かる人は、冷静に事実を述べるものより声高に効果を叫びたいものです。具体的には広告代理店、レジャー会社、商店街等々、むしろ商売をしていて、イベントの誕生を喜ばない人を探す方が困難です。そして利益追求の前には、事実など、いとも簡単に上書きされます。

 マクロミルの調査の実力についての述べているものではありません。営利団体である調査会社における「独自調査」に期待される役割と、発表する数字を読み解かなければならないということです。

 また、調査会社を標榜するマクロミルの良心というべきか、日本記念日協会とは異なり、細かな数字を発表しています。誤読を誘発しやすい見出しも目立ちますが、調査結果は公表しています。問題は、見出しのみを鵜呑みにするマスコミにあります。

 例えば先の

“ハロウィンにかける予算 男性7,274円、女性5,575円”

 には男女の実数が記されています。

男性110人
女性171人

 十代男子も含まれる数字で、先の85人を引いたとすれば、

110人−85人=25人

 となり、20才から49才までの成人男性の予算付き参加率は

25÷(125×3世代)=6.66%

 と、奇祭レベルにまで下がります。

 ただし、この解釈は間違っているでしょう。男性の平均予算は7千円を超えており、十代男子にとっては大金だからです。つまり

「友だちの家でのホームパーティー」

 もカウントされており、それが「0円」である可能性は相当高いと言えます。同世代の十代女子ならば、相応の気遣いにより、ケーキの1つも持参し、そこに予算は発生しますが、十代男子にそんな機能は付いていないからです。

 するとやはり「婚活」狙いのアラサーやらアラフォーが、痛々しくもフライデーナイトに出掛けてのことか、あるいは

「コスプレイヤー」

 という「趣味人」の話しで、いずれにせよ「一般論」にするには不都合な真実が見えてきます。しかし、この正体を必死になって隠しているのは、いまハロウィンを盛り上げる側が狙っているのは、

「老若男女を巻き込むイベント化」

 だからです。

 お盆からお歳暮の間に新たな消費イベントを作りたいのです。この指摘の根拠といえば「経験則」しかありませんが、来年のハロウィンにはこんな惹句が躍ることでしょう。

「ハロウィンに○○」

 ○○とは「プレゼント」。贈り物交換を、新たな文化風俗であるかのように定着させることこそ、ハロウィン礼賛の背景にあるというのが私の見立てです。なぜならハロウィンにおける実際の「市場規模」の小ささは「贈答品」の不在によるからです。

 コスプレはどれだけ普及しても限界があります。係数は常に1だからです。友人を巻き込んでも、その「頭数」しか増えません。

 ところが「贈り物」なら、贈り先の数だけ増やすことができ、理論上は1億でも10億でも可能です。バレンタインやクリスマスの本当の意味での市場規模が大きい理由は「贈り物」にあります。

 ついでにもうひとつ予言を。来年のハロウィンには「強盗」が登場するでしょう。コスプレで顔を隠せば強盗は容易く、闇夜に脱ぎ捨てれば追跡は困難。また、渋谷の狂乱を見れば、10人ぐらいの集団で店内になだれ込めば、犯行の特定が困難な状況で「盗み放題」が実現できるからです。性犯罪も増えるでしょうね。

 ともかく、ハロウィンにおいて発表されている「数字」で、統計に足るものは見つかりませんでした。しかし、既成事実のように報じられています。

 反対に渋谷でコスプレに参加していた人なら

「ハロウィン盛り上がった!」

 と、本稿に反論どころか反感を持つでしょうが、それはナイター中継が殆どなくなった「プロ野球」ながらも、東京ドームで行われる巨人戦や、甲子園の阪神戦、ヤフオクドームのホークス戦が熱狂に包まれるのと同じ、「同好の士」による「渋谷ローカル」あるいは「繁華街ローカル」に過ぎません。

 テレビがつまらなくなった、とは体感値として事実で、その1つが「ハロウィン報道」のように、皮膚感覚として盛り上がりを感じていない熱狂を、さもあるかのように報じる「大本営発表」への不信感にあります。

 ハロウィンを巡る、今年の報道は捏造レベルでした。しかし、さらに穿った見方をすれば「陰謀論」も浮かび上がってきます。

 予定通りにいけば、来年の10月には消費税が増税されます。すると来年の「ハロウィン」は消費意欲が超減退している最悪期です。そこで「ハロウィン」で景気のテコ入れ・・・と、バカバカしいようですが、「黒田バズーカ2」にGPIFの株式運用比率の倍増など、なりふり構わぬ財務省の動きを見るに、あながち遠くないという妄想を開陳しておきます。

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