私が子供の頃は「明治の男」という表現が普通に流通していました。
頑固や堅物、気骨のある男などの意味で使われていたように覚え
ています。
本書は昭和53年に出版されたもので、当時はまだ明治の男達が
おり、彼らへの取材が折々に散りばめられています。
日露戦争の結末については教科書でも習ったので割愛します。
戦争活劇としての詳述も本書の評価として適切でない気がするので
やめておきます。
いくさが終わりました。日本国の命運をかけた海戦です。
秋山真之は事後の確認のために敵艦にのりこみます。ついさきほど
まで殺し合いをしていた艦上に敵兵の死骸が転がり、敵兵は水葬の
順に追われています。
真之は遺骸のまえにすすみ、ひざまずき黙祷を捧げます。
人は己の価値観からしか他人を評価できません。
真之のこの行動をパフォーマンスなどというものは、己が常に
他者の評価を気にして生きているからであり、そのものさしで
すべてを計ることの愚かさに永遠に気づきません。
これも戦争です。
これがかつての日本人の戦争観だったと私は考えます。
■坂の上の雲(文庫本8巻)
http://www.as-mode.com/check.cgi?Code=4167105837