見終わった後、思わず拍手したくなる映画です。
三丁目の夕日の「美化された昭和」に違和感を感じた方、「日常」
に退屈している方は絶対にみてください。
なによりも「スッキリ」したいなら絶対です。
それは炭坑夫の娘として生まれ、育った少女の姿と重ね合わせる
ことができるからです。
そして、昭和は混沌と絶望のなかにあっても、常にどこかに
「希望」
があったということを思い出させてくれます。
今頃どうして松雪泰子なのだろうか。
と、思い試写会が当たっていたのですが、仕事も詰まっているの
でやめておこうから思っておりました。
試写会前日の文化放送「やるマン」にて、映画評論家のおすぎお
ねぇさまが「絶賛」しておりました。自腹で鑑賞券を買いリスナー
プレゼントするほどのです。
やれやれ、そこまで絶賛するなら見るか。
おすぎさんの映画評を盲信するわけではありませんが、ここまで
誉めるのは珍しいので。ちなみ「テレビCM」での絶賛は、ご本人
も仰っているように「仕事」ですので、イワシの頭ほどの信心しか
ありません。
翌日、仕事を前倒しで片づけて銀座ヤマハホールへ。
ラストの5分は圧巻です。
作中、それまであまりオーラを感じなかった蒼井優さんが、
カット割り毎に輝きを放ち、眩いキラメキで優しく威圧します。
ストーリーは常磐ハワイアンセンター、
現在のスパリゾートハワイアンズの設立がベースになっており、
うらぶれていく炭坑の街にハワイを作るという計画が持ち上がり、
ハワイといったらフラダンスというわけでダンスチームが作られる
というものです。
そのコーチとして都落ちしたダンサー、松雪泰子さんがやってく
て紆余曲折を経て、チームとしてまとまるのですがその矢先・・・。
あえて主人公としますが、蒼井優さん演じる少女は最初乗り気で
はなく、幼なじみの熱心な誘いに仕方なくついていくのですが、
フラダンスの魅力にとりつかれ家族と決別してまで、のめり込んで
いきます。
この時、「祖父の代からの炭坑夫」として暮らしてきた家庭に
とって「ハワイ」は敵です。鬼畜米英というわけではありません
が、食い扶持である炭坑を潰して訳の分からない「ハワイ」を作
ろうというのですからね。
物語中、随所に「理不尽」が登場します。
決別を前に縁側で正座させられるなんて、平成の今の子供には
理解できないでしょうが、廊下や土間、縁側に正座させての
「放置プレイ」
は昭和の中期までよくあった光景です。
また、父親による一方的で理不尽な暴力だってありました。
そんな昭和の風景がこの映画には詰まっています。
そしてその何倍もの情熱とエネルギーが溢れています。
理不尽で矛盾を抱え、思慮が浅く、それでいて大らかで、根拠な
んかなくったって「希望」を抱きしめることができた昭和。
細部を気にすれば時代考証など若干気になる部分がありますが、
しかし、それは100点満点のテストで120点の答えを求める
ようなもの。
なにより「映画」として面白いのです。
テンポもつなぎも、フラダンスの伏線も。
9月23日公開。 是非、お子様とご覧ください。
そんなに昔じゃない日本のありのままの姿がこの映画にはあります。
ちなみに悪い話しじゃありませんが、「三丁目の夕日」は当時の
日本全国おしなべても大変珍しい
「東京という都会」
の昭和の話です。昭和30年代後半の話しで、フラガールは昭和
40年の話し。フラガールでは「モンペ」がバリバリ活躍しています。
■フラガール公式ホームページ
http://www.hula-girl.jp/top.html
しかし、富司純子さんとトヨエツさんは……見る人次第でしょうが、
富司純子さんのあの立ち居振る舞いは長刀か弓道の先生です。
炭坑節は似合いません。トヨエツさんはどうみてもトヨエツに
しかみえず……好みでしょうが、残念でした。
最後に、物語のラストスパート直前までは
「南海キャンディーズのしずちゃん」
の映画だったりもします。良い意味で。
笑えて泣けて、笑えて。
勇気を貰い、隣の客にばれないように、足の指先だけでリズムを
取り、最後はスッキリとすることでしょう。