ポケモンGOが話題沸騰ながら、生みの親の任天堂株がストップ安。わずかな期間に倍になった株価に、高値警戒感がでており、任天堂が公式に発表した業績への影響軽微というアナウンスが引き金を引いたとは言え、同時に各所で報じられる「騒動」も投資家心理を冷やしています。投資家は不確定要素をとにかく嫌います。
ポケモンGOはGoogleから独立したナイアンティックと、任天堂が31%出資する株式会社ポケモンの共同開発で、その収益配分は明らかにされていませんが、折半としても、諸経費を差し引き、任天堂が受け取れる利益はそれほど多くありません。
ナインアンティックにはGoogle(アルファベット)と任天堂、ポケモンが出資しており、ナイアンティックが上場でもした日には、莫大なキャピタルゲインが転がりこむことでしょうが、これは「取らぬ狸の皮算用」。しばらくは任天堂他、ポケモンGO関連株は乱高下が続くことでしょう。
そしてその方向に力を与えるのが「騒動」です。
「新しいものが始まるときは相応の軋轢があるのは仕方がない。古い我々がとやかく言うのは間違い(発言要旨)」
とはテレビ朝日「モーニングショー」でポケモンGOについてコメントを述べる同社社員 玉川徹氏。
一般論としては本当。でもGoogleは前科持ちというより、確信的に軋轢を起こしている常習者。
なによりその「Google」の創業期、ネット上に転がるWebサイトの情報を「無断収集」して騒動を巻き起こします。当時、「リンク」でさえ「無断引用」ではないかという議論があった時代、次々とネットの情報を無断収集し、自社サーバに貯め込み、それを商用サービスに利用したのです。
その上で、引用されたくなければ、収集を拒否するタグを貼れと主張。泥棒されたくなければカギを掛けろとは、その通りですが、それを泥棒が言えば文字通り「盗人猛々しい」となります。文字通りの賛否両論。
Googleがデファクトスタンダードとなり公共性を帯びてからは、議論も沈静化していきましたが、こうした「前科」を持っており確信犯というか、すでにGoogleのやり方は「新しい」ではないのです。手口というべきでしょう。
あらかじめ立場を明らかにしておきますが、私はGoogleを憎からず思っています。技術ですべてを解決しようという姿勢は、元技術者として尊敬すらしています。ただ、日本人的感覚から見る彼らの「厚かましさ」だけは鼻につき、ことある毎に苦言を呈しています。
それは「古い我々」、すなわち歴史的経緯を知っているものとしての苦言です。若者が楽しんでいる、というだけの理由での無条件な賛成は、大人の責任を放棄した若者への迎合。
ネット世界でGoogleが無敵を誇った時代、先の無断引用を公然とやってのける、つまりそれが傍若無人とも受け取れる「自分ルール」の押しつけであっても、次第に受け入れられたのは、その頃のネット界にはGoogleの行為を否定も肯定もするルールが無かったからです。
未踏の荒野を切り開いたGoogleの後に道が出来たのは当然のことです。ところが、リアルに進出したから軋轢は国際問題レベルに発展することもしばしば。無断で世界中の書籍をスキャニングし、著作権を好き勝手に取り扱おうとした「Google図書館」に、個人情報を疎かにした「Googleマップ」。Googleマップでは無断でWI-Fiの情報まで収集していたと暴露されます。
ルールの無かったネットの中はともかく、すでに既存のルールがあり、デジタル情報ではない人間が住んでいるリアルにおいて、新しいルールを持ち込もうとすれば軋轢が起きるのは当然のことで、ポケモンGOを巡る騒動もこの延長にあります。
ゲーム性の有無はともかく、Googleの技術・・・を背景に持つナイアンティックが、歩きスマホを禁じられない訳がありません。自転車に乗りながらのスマホ操作「チャリスマ」にしても同じです。端末の傾きと移動速度、振動から、自転車に乗りながらの操作は検知できます。
あるいは端末によっては、画面の方向に設置されたカメラの映像から、目線を割り出し「ながら」に警告を与える機能だって可能でしょう。それぐらいの技術力をもっている、とは買いかぶりではないでしょう。
ましてや北米からサービスを開始し、各種の騒動を耳にしながら、特段の改良をいれることなくリリースされたポケモンGOにおける騒動は「確信犯」なのです。そして問題が起これば、その相手により妥協のレベルが変わるのもGoogleの特徴。
いまは一時的に撤退していますが、中国市場で当局の要請にGoogleが従ったのは有名な事件です。また、個人レベルからの「忘れられる権利」については無視し、EUからの締め出しを匂わせられると現実的な交渉のテーブルにつきます。相手によって態度を変えるのは現実的ながらも、等しく平等であるはずのテクノロジー至上主義の齟齬には目をつぶります。
分かりやすい言葉に置き換えれば、「対応するのはうるさい相手だけ」。ただし、これを単体で批判はしません。なぜなら、Googleはずっとこうだから。
熊本市が立ち入り禁止の被災地に設定してあったポケモン出現スポットを、任天堂に削除依頼して応じたのはその一例。そして熊本市はGJ(グッジョブ)。想像に過ぎませんが、ナイアンティックだったら応じたかどうか。
ナイアンティックはできたてほやほやのベンチャーながら、背後にいるのはGoogleであり任天堂です。どちらも「知らなかった」では済まない大企業。ところが、日頃は大企業に厳しいマスコミが、ポケモンGOの騒動は伝えても、これらの「企業責任」は問いません。ここが最大の問題と考えます。
そもそも論で、出現場所は、開発会社の「任意」。先輩ゲームの「イングレス」のデータを引き継ぎ、そこから半自動で設定していると思われますが、あらかじめ立ち入り禁止の地域や、「皇居」や「出雲大社」、さらに「東京拘置所」のように、ゲームの場所に相応しくない場所はあらかじめ除外できたのにしていなかったのがその証拠。
テレビにとってはどちらも「スポンサーさま」。またポケモンGOの利用者が増えれば、スマホの通信量は激増し、回線会社様の懐も潤い、同じく端末の買い換えもあるのであれば、大切なスポンサーさまに不利な情報は可能な限り流しません。
また、報道機関は事件や騒動が起きれば、すなわちそれは商売道具であるネタ。語弊を怖れずにいえば、事件が起きるのを待っているのがマスコミで、放置するのは一石二鳥。こちらも確信犯として、事件が起きるのを、よだれを垂らしながら待っています。
今日の夕方になり、騒動が頻発している事実が明らかになると、それを報じながら企業責任を問いません。鳥取県は「砂丘」でのポケモンGOを解放すると宣言。まっとうな観光客を遠ざけることになるのでゲラゲラ。風光明媚を楽しむ人々と、デジタルデータに興じる層はミスマッチ。
株式市場は自腹でGO。マスコミはいつ手のひらを返すかわからず、そうなったときの関連株の今日以上の大暴落は避けられない。ならばここで逃げるが一手という図式です。ストップ安までいきましたので、反発もあり得ますが、完全な博打株です。