産経新聞が報じましたが、版元のワック出版から「WiLL編集部」がごっそり飛鳥新社に移籍するとのこと。出版方針の違いから袂を分かつそうですが、編集部一同とは驚きます。
WiLLの編集長 花田紀凱(かずよし)は週刊文春を日本一の週刊誌に育て上げた伝説の人物で、テレビ出演など活躍幅が広く、西原理恵子氏の漫画にもたびたび登場しています。
その「チーム花田」がごっそり移籍。WiLLの編集さんに確認したので間違いありません。新天地で「WiLL」創刊の基本に戻った雑誌作りをするとのこと。
男だね。そしてその団結力、感動すら覚えます。編集部には女性もいますし昭和時代の比喩表現と、面倒ですが断っておきます。
今月号の出色はやはり花田編集長。
テレビでも大活躍の嵐山光三郎氏と、元週刊プレイボーイ編集長の島地勝彦氏の対談となっていますが、花田編集長を加えた事実上の鼎談です。
彼らが若手編集者だったころ、いまや文豪として歴史の教科書に載る作家らが現役であったり、その薫陶を受けたいわば生き証人の担当になったりと、笑ってしまうほどの名前がさらっとでてきます。
太宰治の名作『走れメロス』が檀一雄へのいやがらせから生まれた。このエピソードは是非、本誌にて。太宰という人間性に触れには充分かと。
また、すべての編集者、出版業界の必読であるのは嵐山光三郎氏の
《「クラスマガジン」が雑誌業界を駄目にした》
という指摘。Web業界風に言うと「セグメント」。年代、性別、ジャンルを細分化することで、企画書レベルの説得力は増しますが、実際の読者の好みは、年代で区切られることはありません。中学一年生から竹村健一の本を買っていた私が言うのですから間違いありません。
青山繁晴氏の連載に涙します。北朝鮮の飛翔体(笑)の発射のタイミングで訊ねた石垣島での出会い、またライフワークとされている白梅の塔での八十代の少女らとの再会。そしてあらたな出会い。年を取ったので、こうした「運命」に弱いのです。
洒脱な文章を楽しんでいた津川雅彦氏の『人生は遊んでナンボ』が最終回。勝新太郎とのエピソードは濃い。たまたま、BSか何かで放送していた『悪名』を見たこともあり、まるでいまも勝新がそこにいるかのようでした。
また、夏目雅子の輝きが生来のものだった、まさに伝説になるだけの女優だったと知るのが、ゴミ箱からコーラを漁って飲んだエピソード。他に森繁久弥、山城新伍、竹脇無我。
等しく訪れる死への、その死すら楽しむかの津川を確認し、有終の美に触れるなら、連載の終わりもまた作品の一部であれば惜しむのは野暮というもの。
なお、花田編集長の責任編集による「WiLL」は次号まで、つまりはあと2回。
■月刊WiLL 2016年4月号「『週刊文春』に負けてる大メディア」
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