ジャニーズ事務所はブラック企業なのか

 大山鳴動して鼠一匹。
 SMAPの解散騒動の第一幕の感想です。

「なんかガッカリ」

 フジテレビ「SMAP×SMAP」の生放送による謝罪会見を見た翌日、ジャニーズファンで香取慎吾ファン、いまも年に数回、コンサート会場まで足を運ぶアラフォー主婦のコメント。

 もちろん、無条件に解散「先送り」を喜ぶファンもいることでしょうが、

「ただ前を見て進みたい」

 というだけで、解散するともしないとも述べず、謝罪の理由も明確でなく、なにより事の真相が明らかになっていない現在、聞こえてくる芸能ニュースを総合するとこうなります。

「5人揃ってマネージャーと独立するつもりだったが、木村拓哉だけがジャニーズ残留を宣言し、残りの4人もそれに従い、それに伴ってジャニーズ事務所の社長に頭を下げた。騒がせてごめんなちゃい」

 舞台裏は分かりませんし、苦渋に耐えるというのも大人のありようですが、先の主婦ほど落胆はしないながらも、つまらんなぁとつぶやいております。なぜかといえば、結局、権力者には勝てないのね。という青臭い話し。

 そして呆れる、この国のダブルスタンダード。

 人生とはSMAPのようなものではないか、とはいささか大仰ですが、まぁそう捉えれば、今回の芸能界に珍しくもない騒動に社会的意味を見つけ出させるのではないかという話し。

 解散報道後の、各種報道を追い掛けていても「わからない」という人は、一年前の「週刊文春」を読んでいないのでしょう。電子書籍で緊急発刊したので、真相に近づきたい人にはオススメです。

 俗に週刊誌記事は、信憑性に疑問符がつくものもありますが、この週刊文春の記事は、渦中のジャニーズ副社長、メリー喜多川氏との直接インタビューを文字起こししたもので、慣例に従えばゲラという完成原稿を、ジャニーズサイドに提出しており、事実であることは相当程度に高いとみることができます。

 なお、昨日の日刊スポーツでは「藤島メリー泰子副社長」とありますが、文春の記事の表記を採用しております。

 スマップを育てた飯島三智マネジャーと、事務所の対立で、一連の記事をすりあわせるなら、次期社長を約束された、メリー氏のご令嬢、藤島ジュリー景子氏に潰されたと見ることができます。

 こちらも昨今の報道ではマネジャー、あるいはI氏とありますが、メリー氏に揃える形で飯島氏とします。

 この記事については、先週のメルマガ「編集後記」で紹介しましたが、参考までに週刊文春からの引用箇所を再掲しておきます。

《(2015年)1月13日、東京・乃木坂のジャニーズ事務所。メリー氏は30年ぶりにインタビューに応じた。娘・藤島ジュリー景子氏とSMAPの育ての親、飯島三智氏の“後継争い”について聞くと、
「失礼な。私に刃を向けているのと同じ。飯島を呼んで!》

 取材場所に飯島氏を呼びつけ

《ジュリー以外に(誰かが)派閥を作っているという話しは耳に入っていません。もし、うちの事務所に派閥があるなら、それは私の管理不足です。事実なら許せないことですし、あなたがにそう思わせたとしたら、飯島を注意します。今日(飯島氏を)辞めさせますよ》

 記者がSMAPと嵐の共演がないことなどを訊ねると、飯島氏の答えを遮る形で

《だってSMAPは踊れじゃないじゃないですか。あなた、タレント見ていて踊りの違いってわからないんですか?(略)(SMAPは)踊れる子たちから見れば、踊れません》

 公表を前提とする取材中、つまりは公衆の面前で、自分はともかく、手塩にかけて育てたタレントを罵倒されたマネージャーが、心穏やかでいるのは困難でしょう。

 騒動の原点は文春の取材と記事にあるとみれば、その後の流れはすんなりと見えてきます。と、いってもあくまで各種芸能ニュースをまとめての推測で、酒場のつまみ程度の話しに過ぎないことをあらかじめお断りしておきます。

 まず、文春の取材以前から、マネージャーとジュリー氏に確執があったことは、ジャニーズファンの間では有名でした。SMAPと嵐の共演が殆どないことが、様々な憶測を生み出していたのです。

 一般論ながら、創業者の姉弟、ジャニー氏もメリー氏も齢80を数えるご高齢。後継者への禅譲を考えるに充分な年令で、そのとき邪魔になったのはSMAPの飯島マネジャー。飯島氏が58才、ジュリー氏が49才となれば、下銭な民草の言葉に置き換えれば「でてけやBBA(ババア)」となりかねません。

 メリー氏の言葉遣いから察するに、ジャニー家からみた従業員は身内でありながら、そのジャンルは「使用人」。血肉を分けた家族とは線引きで、インタビュー記事で語られた序列では

「ジャニー&メリー→タレント→家族→使用人」

 ここにおける家族は娘のジュリーだけならば、舞台裏においては

「ジャニー&メリーwithジュリー と 使用人」

 との構図。

 優秀な後継者であれば、この価値観を引き継いでいる可能性は高く、一般論ながら、優秀なものほど、優秀な人間を理解でき、その優秀さに我が身の危険を嗅ぎ出すことは珍しいことではありません。

 同じ道を目指しながら、まったく別の立場とキャリアを持つ者が、同志となれば心強い限りですが、そうならないのが人生の妙味でアリ悲しみです。両雄並び立たずとはよくいったモノです。

 飯島氏からみてご令嬢メリー氏の排除など不可能であり、どちらに「追い出す」ためのインセンティブが働くかは自明。また、週刊誌報道ベースながらも、飯島氏は行動の自由を与えられているなら、物理的にも事務所と距離ができているでしょうし、片や母娘ならば、その距離は近く、大映ドラマや昼ドラ的な妄想もそう遠くないでしょう。

 片や叩き上げ、片やプリンセス。実に少女漫画的にわかりやすい構図。

 元ジャニーズジュニアの平本淳也氏のインタビュー記事によれば、飯島氏の献身的な働きぶりは印象的だったとあります。

■産経新聞「iRONNA」
http://ironna.jp/theme/475

 平本氏によれば、ジャニーズ事務所とは365日24時間拘束、それでも給料は16万円ほどで、あの居酒屋もびっくりのブラック企業。独身の飯島氏はまさに身も心も「SMAP」に人生を捧げた女性。

 少女漫画なら、飯島氏に作者は微笑むのでしょうが、これは現実。叩き上げの実力者でも、役員会議でものを言うのは株式保有数で、良くも悪くも「結束」を誇るジャニーズ事務所なれば、序列は「身内」が高いのは自明。というよりメリー副社長が明言しています。

 解散報道がでた直後、他の大手事務所が、飯島氏とSMAPを引き受けるという話があったとでていましたが、弱小事務所のタレントを引き抜いたり、提携と称して囲ったり、あるいは跳ねっ返りを面倒見たりすることはあると聞きますが、天下のジャニーズ事務所に釣り合う芸能事務所となれば限られます。

 そこには「吉本興業」の名前も挙がっていましたが、どちらの事務所も番組制作からテレビ局に喰い込んでいる上に、お笑いとアイドルと住み分けができています。

 芸人が役者となり、アイドルがバラエティ番組に出演することはあっても、基本の部分でバッティングしません。ならば、わざわざ「ジャニーズ事務所と対立する」というリスクを取るメリットがないのです。

 また、他の芸能事務所も同じくですが、所属タレントには唯々諾々と従って欲しいと願っており、揉めて事務所を離れたタレントを抱えるメリットは、それがSMAPであっても大きくはありません。

 欲望渦巻く芸能界は、分かりやすい「欲」が支配しており、いまどきの経営者なら吐けない「社員は奴隷」的な発想がまかりとおっているようです。奴隷が言い過ぎなら、先ほどより繰り返している「使用人」です。社員との違いは、現代的価値観の人格権が尊重されていないというニュアンスです。

 ヒドイ会社! とはいいません。結局は飯島氏が選んで務めていたのですから。ただ、他のブラックと命名された企業に対して「社会問題」と居丈高に切り捨てる既存メディアが、ジャニーズ事務所に対してこの切り口を提示しないのは、あきらかにダブルスタンダードです。

 現時点では子会社の取締役にまで登り詰め、役員に対してブラック批判はできませんが、その平社員時代は先の平本氏の365日24時間拘束の説明。その上で、ジャニーズ批判をしないという姿勢を、あえてきれい事にするなら「苦労に耐えれば咲く花もある」ということ。そしてこれも人間社会の現実のひとつです。ならば、ワタミの叩き上げ役員も同じでしょうに。

 先の主婦は「キムタク込みなら違ってた?」と5人揃ってのジャニーズ退社による商品価値を訊ねますが、もはや人気に陰りが見えるのは、主演した連ドラの視聴率からも明らかなキムタク込みでも同じです。

 なにより、一人でドームを満杯にでき、大河主演も果たした福山雅治と、キムタクの「商品価値」が並ぶのはSMAPやジャニーズ事務所というバックボーンがあるからとはネット情報より。

 残酷なようですがタレントは人気商売。
 ある程度、数字で測れてしまうのです。

 また、彼と我を入れ替えれば同じことで、どんな形式でも所属タレントを挽き抜かれば面白くはなく、もっと率直に述べれば、タレントの生殺与奪は所属事務所が握っている、握っていたいと願うのが芸能事務所で、優秀な社員を抱える社長はそう考えます。

 もちろん、すべてとは言いませんし、円満独立の話しもありますが、そうでない事務所の方がいまだに多く、最近では『あまちゃん』の主演女優「能年玲奈」が干されている事実が雄弁に物語ります。

 ヤクザな稼業とはよくいったモノです。一度交わした杯は、子供のほうから返せないとは、文字通りのヤクザの話しですが。

 かくして進退窮まったマネジャー氏は、自らの首ひとつで、木村拓哉を除く4人のメンバーの残留を請うては見たものの、真実は分からないながらも歴代ジャニーズの「卒業生」をみれば、自らを裏ぎった(と、感じた)タレントには容赦の無いジャニーズ事務所。

 追い込みをかけてみたところが、想像以上に社会の反響は高く、さらにはSMAPに好意的でした。木村拓哉が「恩義」を理由と、ジャニーズ残留を発表することで「義理がたい木村、裏切りものの4人」という絵図を描くも、世論はむしろ

「寄らば大樹の陰」

 的な木村拓哉への悪評がネット上に拡散されます。

 また、引き金をひいた「週刊文春」は、今週号で「スクープ」を用意しているという噂もあり、それが所在の掴めなくなっているという件のマネージャ氏で、それが舞台裏を絡めた悪口だったとき、発売されてからではSMAPどころかジャニーズ事務所への大ダメージは避けられません。

 居酒屋チェーンを挙げるまでもなく「ブラック企業」への批判は激しく、某ナッツ姫のように世襲の暴君(姫)のイメージは、事実の有無を問わずにマイナスイメージで、そこに家具屋の世襲騒動が重なれば、SMAPとマネージャーの救済という大義により、他の芸能事務所が、ホワイトナイトに名乗りをあげないとも限りません。

 そしていまどきの芸能界で、しかもSMAPメンバーほどの知名度に加えて、独立騒動を巡る話題性が加わったとき、彼らを「干す」ことなど困難で、仮にそれに加担するテレビ局があれば、フジテレビにおける韓流ゴリ押しを越えた視聴者離れも想定されます。

 文春記事が仮になくても、状況を考えると、ジャニーズ事務所が手を打つのは、月曜日のタイミングしかなかったとも言えます。

 タレントの格や騒動の中身は違うとは言え、ゲスなベッキー。もとい「ゲスの極み乙女。」のボーカルけんちゃんとの不倫がばれて、釈明するも説明をしないベッキーが、フジテレビ系列の生番組に騒動直後に出演し、「何も触れず」という正面突破を図り、ネットを中心に激しく叩かれ致命傷となりかけている現状は、草彅剛がやはり番宣のために情報番組に生出演しながら「何も触れず」で再現されつつありました。

 余談ながらベッキーは、収録番組での「いない」かの編集がなされており、特にファミリー視聴の多い番組に登場していたことが、見事に裏目にでているようで、タレント活動そのものへの卒論提出が噂されています。ネット情報ですが。

 SMAP解散騒動においては、昔の芸能界なら「静観」を、マスコミに箝口令を敷くことで強制できたものが、ネット上には全国津々浦々、24時間監視の目による情報を集約され続けており、大本営発表的なコントロールは不可能で、先手を打って情報をだすことは、企業不祥事などにも通じ、この1点は見事なアプローチです。

 スマップのメンバーを生出演させ、端的に言えば

「晒し者」

 にしたことへの批判もありますが、だってそれが目的なのですから仕方がありません。端的に言えば、ジャニーズ側から見た裏切り者を「公開処刑」するための会見だったのであり、その目的の半分は達成できました。

 つまり「狙い通り」であったということで、出川哲朗を崖から突き落とし悲鳴を上げさせ、ダチョウ倶楽部の上島竜兵を熱いおでんの汁をかけるようなもの。

 逆らえば懲らしめる。ただ、それだけのことです。

 先の主婦が公開処刑に怒り言いました。「なんでそんなことをするの!」。

 そこで、こう反論します。

「だってジャニーズだもん。ずっとそんなだったじゃん」

 アラフォーの彼女が、ジャニーズのどのタレントからファンになったか分かりませんが、形式上円満であっても退社後のジャニーズタレントがしばらく干されるのは繰り返されて来た、なかば芸能界の慣習で、反対に事務所に従順なタレントは、一般的な人気がほぼなくなっても面倒をみてもらえ、親子二代でお世話になっている「アイドル」もいて、極端なアメとムチが「ジャニーズ帝国」を支えていると指摘すると「ぐぅ」と音を上げます。

 公開処刑における構造は近所の世襲国家によく似ています。

 公開処刑を、わざわざ公共の電波で流すべきかという議論は残りますが、フジテレビですからさもありなん・・・というより、ジャニーズタレントを使いすぎているテレビ局に批判する言葉はないでしょう。ジャニーズの私益拡大と、テレビ局は足並みを揃えてきた共犯者で、公開処刑をなぞるなら

「ジャニーズ帝国 広報工作機関」

 がテレビ局であり、日刊スポーツで、北朝鮮の水爆実験(主催者発表)を感情豊かに伝える、あのベテラン女子アナと同じです。

 しかし、一連の騒動を追ってみて、あらためて呆れたことがあります。

 ジャニーズタレントって多すぎない?

 吉本興業と併せれば独禁法に触れることでしょう。「公共の電波」に対して。

 ブラック企業、世襲で閑職に追いやられる叩き上げ、飼い殺しにされるタレント、人権を蹂躙するかの仕打ち。

 これがSMAPでなければ、ジャニーズでなければ、真偽を確認するまでもなく袋だたきにする日本社会。ところがこちらはスルー。

 ジャニーズ批判が目的ではありません。

 飯島氏にしてもSMAPのメンバーにしても退社の自由はあるはずで、実際に飯島氏は退職が決定しており、SMAPメンバーにしても「ファン」のためのSMAP継続という大義といっても、そのファンは、先の主婦にふたたび登場願うなら香取慎吾の奴隷状態、はずかしめを喜んではお非ず、というより彼女曰く「この1月で39才のオッさんのシンゴちゃんにたいして幻滅」とのこと。

 芸能人でありたく、SMAPを名乗るために晒し者になることを甘受したのが、彼ら5人だということです。

 芸能人を大企業、有名企業に置き換えれば、よくあるブラック企業の話しにすぎないながらの「ダブルスタンダード」。

 もしもそれが本意では無く、木村拓哉氏が会見で述べた

「空中分解」

 の回避で、有終の美を望であれば、そのうち「第二幕」があがることでしょう。はてさて、そのとき、どう報じるのでしょうか。たぶん、変わらないのでしょうが。

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