白票肯定論〜東京12区による証明

 白票を投じることに批判的な意見が散見する「珍しい選挙」です。自民党の圧勝が予想されるなか、珍妙な言説がまかり通っています。

 間接民主主義の我が国の場合、苦渋の選択であっても「誰か」に託すというのは筋としては正しい指摘です。適切な候補者がいないのなら、己が立つべきだという主張も正論です。なのに「珍説」と指摘するのは、いままでの選挙においても投票率の低下が嘆かれ、そのとき、珍説の主らが主張したのが「白票」で、それは「抗議の意志の表明」とまでいっていたからです。

 今回、白票=無効票が増えれば、組織票を持つ自民党と公明党が圧勝する、だから白票がいかんというのなら、その反対なら良いということで、すなわち「アンチ自民の選挙活動」で、少なくとも公共の電波を使ってやってはならないことではないでしょうか。また、組織票なら共産党も、労組系の民主党だって同じです。

 しかし「白票」には効果があります。それは「東京12区」の有権者として断言します。

 わが「東京12区」に区分された地域は、かつては自民党と公明党で議席を争い、いまも都議選、区議選では敵味方に分かれて選挙戦に挑んでいます。ところが小選挙区では、自公連立政権の象徴的な選挙区として、公明党に議席を譲っています。

 面白くないのは自民党支持の有権者です。特に保守派は忸怩たる思いで、投票所に足を運んでいました。公明党から出馬している太田昭宏氏に関しては、自民党支持者の間からも「悪口」はあまり聞こえてきません。政治家は悪口を言われるのが常なので、これは彼の人柄を表していると評価しても良いでしょう。

 それでも公明党の支持母体を好ましく思わず、それが前回衆院選挙で、日本一白票の多い選挙区という称号へと繋がりました。自公協力という党中央からすれば、苦々しく見ていたことでしょうが、解消できない感情のしこりがあることは事実です。

 そして今回の衆院選挙では、次世代の党から田母神俊雄氏への出馬へとつながった、とは穿ちすぎではないはずです。こちらが入手した情報でも、田母神俊雄氏の情勢は厳しく、次世代の党そのものも同じです。また、右傾斜の激しい田母神俊雄氏を敬遠する人もいることでしょう。

 しかし、それでも「選択肢」ができたことを喜ぶ声は決して小さくはなく、とある飲食店の店主は

「もっと早く出馬してくれれば」

 と早くも嘆く声すらあります。

 これが「白票」の力です。消極的でも「民意」を反映させることができるのです。もちろん、「当選」することにより、直接的に有権者の声が届くことに比べれば、影響は微々たるものです。それでも東京12区の保守層が、「無投票」していたなら、田母神氏という選択肢は得られず、仮に一定程度の得票を得るなら、そうした「声」の存在を無視することはできなくなります。

 つまり、「第2、第3の田母神俊雄」が出馬する可能性で、地元に根ざし、常在戦場で有権者の声を聞いた暁には、「非公明」の代議士を国政に送り込む日がやってくるかもしれないのです。

 盤石と言われている太田昭宏氏にしても「保守の声の強さ」に接することで、ある種の影響を受けるかもしれません。それが選挙であり、政治なのです。

 実際、2009年の「政権交代選挙」で東京12区は、当時民主党から出馬した「青木愛」氏が当選したのは、民主党ブームだけではなく、彼女の陣営は、地元に接触し、ネットワークを作り、そこから「白票」を投じていた有権者の琴線をふるわせることに成功したことが勝利へと繋がりました。

 当時、公明党の党首だった太田昭宏氏は、「重複立候補」を辞退し、単騎で戦場を疾駆し、落馬ならぬ落選し、党代表も辞任し、浪人の憂き目にあいます。その意気や良し。捲土重来を見事に果たし、一方の青木愛氏が小選挙区で敗れたのは、強固の地盤を誇る太田昭宏氏だったこともありますが、何より民主党の迷走と、彼女の親分である小沢一郎氏への嫌悪感が色濃く影を落としました。ただし、ゾンビ・・・重複立候補により復活当選したのは、やはり地元に根を張った青木陣営の力で、田中角栄の流れを組む「選挙の強さ」なのかもしれません。

 突然の解散に、東京12区の保守派の有権者は、はやくも虚しさを覚えていました。太田昭宏氏への対応は、これまでと変わらぬ矛盾を秘め、青木氏への期待などとっくの昔にありません。彼女の親分は大の媚中派で、昨今の状況を鑑みるに、あの一派に議席を与えることなどできないという声を耳にしていました。

 論外ながら、今回は「幸福実現党」も出馬していません。そこに「次世代の党」の「田母神俊雄」氏が登場し、実際に投票するかはともかく「選択肢」ができ、保守派の顔が明るくなりました。

 ながながとなりましたが、これが「白票」の力です。冒頭に述べた通り、「邪道」という誹りは甘受します。しかし、「アンチ自民のための白票はOK」で、「自民党を利する白票はNG」とは論外。現行制度の問題は改善されることを期待しつつ、それでも積極的な「白票」はあり、とわたしは断言する衆院選挙前夜です。

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