生活だけが苦しくなる来年からの増税

 ここ半年ほどのマイブームが

「アベノミクス来た?」

 取引先や、旧友との世間話の切り口に使っております。
 ほぼ100%の回答は「まだまだ」。

 そうだよね、と会話のキャッチボール、それも肩慣らしにはぴったりのネタで、これがわたしにとっての「アベノミクス」と言えなくもありません。

 もっとも株高による「アベノミクス」の恩恵をうけています。いまから10年後はわかりませんが、今のゲームのルールは余裕資産は投資に廻すものだからです。そして未来永劫、変わらぬゲームのルールは、年齢が若いほどリスクをとれるということ。

 例えば10万円を、これから10年後に10倍の業績に伸ばせる企業に投資すれば100万円になるというのが株式投資の概念です。これを定期預金や住宅ローンのような金融商品で実現しようとすれば、複利計算でも年利26%といったサラ金並みの金利となり、そんな商品はちょっと見当たりません。

 ここにふたつのリスクがあります。株式は会社が倒産すれば紙切れ・・・にもなりません。証券が電子化された昨今、文字通りになにもなくなります。もうひとつのリスクが、

「10年後」

 です。
 一般論において、20代、30代なら10年後の想像にリアリティがあります。しかし、40代、50代と年齢を重ねる毎に、未来を約束することが困難になります。平均寿命は平均に過ぎません。

 もちろん、10年後の10倍を期待して80代が株式投資することにより、10年後の希望が人生を支えるという考えもありますが、それは生き方の話しで、資産運用においての議論ではありません。

 また、若さとは可能性と換言できます。失敗を取り返す可能性を高める係数は「時間」です。仮に10万円を失っても、投資の失敗を学ぶことで、リベンジに活かすことができるチャンスを数多く持つのが若さです。

 これに気がついたのは10年前。もう30代になっていましたが、今日は明日より若く、余裕資金の範囲内なら、すべて失敗してもゼロになるだけだと始めたのが株式投資です。10万円を100万円にすることはできませんでしたが、定期預金にいれているよりは多くのリターン(利益)を得ています。

 そこにアベノミクスです。というより、日本の底力を信じた果実です。

 東日本大震災の直後から、日経平均に連動する金融商品(ETF)を買い増し続けました。一時的には冷え込んでも、必ずよみがえると信じて、そこから出た利益を寄付する狙いです。阪神淡路大震災を挙げるまでもなく、復興は特需を生み出すのです。ところが目論見が大きく外れます。

 クズの菅直人に愚図の野田佳彦により、復興は進まず、株価は低迷し、利益どころかマイナスが膨らむ日々でも持ち続けてのアベノミクスです。ちなみに現在、株式の売買益には復興特別所得税が課せられております。

 株式投資のメリット(デメリットもですが)自体は資本主義社会がなくならない限り存在し続けますが、「日本株」が10年後に利益を与えてくれるかとなると疑問が残ります。

 そのひとつが「消費税増税」です。

 新聞、テレビと言った大マスコミは、来年春の消費税増税を既定路線として報道を繰り返しています。日経新聞などは無惨なもので、アンケート結果の曖昧回答を「賛成」にくくりつけて、国民の大半が賛成しているかのように報じています。

 この「増税」。わたしの記憶が正しければ

「社会保障と税の一体改革」

 で決定されたもの。ところが社会保障は置き去りにされたままです。しっかりしろ自民党・・・とも言わず、増税を既定路線とマスコミが報じる理由は「財務省」です。

 増税は財務省の悲願であり本能です。財務省は大蔵省時代からのキングオブ省庁として君臨し続け、配下には国税庁、末端には税務署を抱え、民間企業にとっては「や」の字ではじめる非合法な暴力組織より怖れられる存在です。そして省庁に対しては財布を握っています。テレビ局は放送免許を総務省に抑えられ、新聞はこれを機会に「軽減税率」を新聞に適用させようと画策しているので、財務省のご機嫌を損ねることはできません。

 そして「増税」の大政翼賛会ができあがりました。

 もうひとつわたしの記憶が正しければ、増税の最終決定はこの秋、政府により決定されるもので、増税は既定路線でも、時期については余白が残されていたはずです。

 そこで今回は

「増税の1年先送り」

 がもたらすメリットについて考えてみます。これが「マスコミで言えないこと」ということに問題がそもそもあるのですが。

 伊藤隆敏 東大公共政策大学院長は、日経新聞9月1日号の企画で「上げ幅、時期予定通りに」とする見出しの論陣をはります。

 この伊藤隆敏氏。根っからの「増税論者」で、震災から半年後の2011年9月には伊藤元重(東京大学)と共同で、復興増税への呼びかけをしています。まる2年が経っても、同じことを言い続けているのは「ぶれない男」ですが、参議院議員となった山本太郎も虚言をぶれずに吐き続けたことをなぜか思い出します。

 丁度、本日の「あまちゃん」で主人公がアキが悩んでいたころ、山本太郎はNACK5(FMラジオ)で新番組を始めています。

「脱原発を叫んだら仕事を干された」

 大嘘です。山本太郎に魅力が無かっただけのことです。

 余談ながら、山本太郎氏。昨日は隠し子が発覚。認知をし「事実婚」とのことですが、選挙期間中に隠し続けた前妻との離婚、そしてこの子供の親はこの前妻でないということ。「ぶれない」と外形的に見せる嘘つきは多くいるのは社会の常識です。本来の日本人的価値観から評せば「卑怯者」に多々見られる現象です。

 その伊藤隆俊教授が、3%から5%に税率上げた1997年の失政を問われこう答えます。

<増税がその後の不況の主因というのは明らかに間違いだ。97年4〜6月期はマイナス成長に陥ったが、7〜9月期にはいったんプラス成長に戻った。主犯は夏以降のアジア通貨危機と日本の銀行危機だろう。反論するなら数字で根拠を示してほしい>

 まず、売文家業というより、卑怯者もたくさんいるビジネスの現場にいるものとして、この一節に不信を覚えるのは「間違いだ」と断定しておきながら、「主犯」をなると「だろう」と仮説。最後は「数字」を要求することで蓋然性や客観性を演出しますが、そもそも数字を出して自身は主張していません。

 朝の3時から資料を探したものの、ブログが普及する2004年以前はネットの弱点で、グラフ化されたデータしか見つからなかったので「数字」で示すことはできませんでしたが、「時事ドットコム」の記事によると、増税後の1997年4〜6月期のGDPは年率換算で前期比3.7%減。そして7〜9月期は2.0%前後のプラスです。

■参考サイト「時事ドットコム」
http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_zeisei20130823j-02-w310

 テストの成績が37点下がった生徒が、次のテストで20点上がったからと胸を張れるものでしょうか。そして主犯とするアジア通貨危機は7月よりはじまります。主犯を脇に置きながら、7月からの3ヶ月間はGDPが上がっていたということです。

 タイムラグによるものかもしれません。しかし、伊藤隆敏氏が述べる数字とは、こうしたものではないでしょうか。

 アジア通貨危機や日本の金融危機がGDPを押し下げたことを否定はしません。その他の経済政策、金融政策の失政も沢山あります。しかし、増税だけ無関係と切り離すのは論理的ではなく、むしろ増税の影響が全くなかったという数字を示すべきでしょう。

 だって数字を示さずに、アジア通貨危機とかいいだしたら「何でもあり」になる「後講釈」です。

 また、海外要因をあげるなら、いま新興国市場はガタガタと揺れています。中国の景気減速感と、資金逃避による通貨安です。さらにシリア情勢、アラブの春に伴う資源価格への影響も見過ごせません。

 ならば1997年の増税に学ぶならこういう意見もでてくることでしょう。

「経済にマイナスを与える可能性の高い増税は様子を見るべきだ」

 激務や劣悪な労働環境での作業が予想されるときに、ダイエットと称して食事を抜くのは自殺行為であるように、外部要因が不安定なときは、国内に不安要因を増やさないというのは当たり前の施策です。

 伊藤隆敏の主張は増税ありきの論理破綻です。

 そしてビジネスシーンのおいての一般論ですが、

「数字を出せ」

 という人のもってくる数字は、自分に都合のよい数字が並ぶものです。

 さらに数字ではありませんが、事実を持って反論するなら、消費税を上げた英国の溜息が直近事例です。英国は2011年1月から付加価値税(消費税)率17.5%を20%に引き上げると、実質経済成長率は0%台にまで落ち込みました。

 一方で増税しなければ、財政破綻するという声もあります。
 これも事実の一部ではあります。問題はいつかということ。

 すでに破綻状態というのは一端、脇に置きます。事実として破綻していないからです。そして1000兆円を超える借金を抱えているのも事実です。

 先の伊藤隆敏と共同で声明を出した伊藤元重も増税派です。今朝のクズ新聞・・・もとい日経新聞で「金利暴騰リスク、より深刻」と題して国債の暴落を懸念し、増税をせよと迫ります。

 すべてをあげると切りが無いのですが、この一節を取り上げてみます。

<日本よりもはるかに低い債務比率で欧州の多くの国が財政危機に陥っている>

 ギリシャとスペインの他にはどこでしょうか。また、その危機のレベルは? ちなみに2012年3月と古いデータですが、ギリシャの国債保有者の内、ヘッジファンドも含めた海外保有率は64%で、日本は8.7%です。

 国際間取引が多数を占めれば、国債価格は乱高下しますが、国内の金融機関が大半を握っているので、ギリシャになるのは困難です。

 とにかく増税したい人たちは、我田引水も学者としての矜持も置き去りにします。

 さらにもうひとつの事実が、消費税率は最低でも17%に上げなければ財政健全化へと向かわないということ。そこから導き出される結論は、8%では焼け石に水。ということ。なにせ目標税率の半分未満なのですから。

 だから、来年の4月に8%にしなければ財政破綻するというのは論理的ではないのです。海外からの信用されなくなり、国際価格が暴落して・・・というのも、短兵急というか、過剰反応。放射脳なみのヒステリーです。

 もちろん、永遠に5%。あるいは日本共産党のように

「消費税撤廃」

 を恒久政策とするなら、それも起こるでしょうが、たかだか1年や2年の先送りで起こるなら、もうすでに大暴落していなければおかしいのです。

 仮に1年先送りするとしても、その後の増税や財政再建のプランをしっかりと立て、発表すればすむだけの話しです。っていうか、その財政再建を論じる声も聞こえてこずに増税が叫ばれるなか、来年度の概算要求は「過去最大」。どないやねんという話しでしょ。

 増税します。金をふんだんに使います。ではなく、まず、こちらに手を下すのが先でしょうに。

 そして増税先送り論の本旨はこれです。

「庶民にもアベノミクスの恩恵を」

 ボーナスなどの一時金により所得が増えた会社員もちらほらと見かけます。しかし、まだ「ベースアップ」にまで辿り着いていません。早くても来春でしょう。それもバブル期のような、ジャンプアップの昇給はなく、小幅+決算賞与のような形ではないでしょうか。

 ところが、増税が決まれば、一時的か恒久的かはともかく、景気悪化は確実です。また8%の次は10%となれば、消費の冷えこみは確実です。復興需要から土木建築は元気ですが、それ以外は消費を控え、昇給も抑えることでしょう。

 手取り収入が増えぬまま、消費税が上がります。悪循環です。

 安倍総理のブレーンのひとり浜田宏一エール大学名誉教授は、先の伊藤隆敏氏と対比する記事のなかで、1年ずつ延期して、上げ幅も1%ずつにすることを提案しています。

 同様の議論は多く聞かれますが、するとテレビでは訳知り顔のエコノミストや小金稼ぎのコメンテーターが、

「法律の変更を伴うのは容易ではない」

 と言い垂れます。そんなことをやるより、経済政策などに時間を割けと続けますが、本当でしょうか。

 増税を中止ではなく延期です。国民の生活へのショックを和らげるための提案でアリ法律改正です。日本共産党や生活の党などは、

「そもそも増税(共産党は消費税の存在そのもの)がイカン」

 と反対に回るでしょうが、増税の先送りは国民の歓心を集めるもので、大義と人気が同居する数少ない政策です。

 繰り返しますが、中止ではなく延期です。それも1年単位で、その後の増税を約束します。さらに経済界にも再び、三度の働きかけをして、従業員の所得が増えれば、駆け込み需要の「厚み」が違ってきます。また、一度でもアベノミクスの恩恵を得れば、国民の増税への不満も和らげることができることでしょう。

 我が国の国民は、受けた恩・・・それが増税の延期でも、一度、条件をのんで貰うと、途端に素直になり受け入れるのは、酒税やたばこ税などからも明らかです。

 たかが一度きり、一年ポッキリ。その延期だけで増税を甘受する国民は日本人ぐらいでしょう。

 ところが庶民には、その一度すら訪れず、生活だけが苦しくなるのが、来年からの増税です。

 国民性から暴動もデモも起きないでしょうが、勤労意欲は確実に奪われます。身分と所得が保障され、最強の官庁である財務省がバックについている学者先生に、国民の気持ちは分かりません。

 増税派の御用学者の目論見は更なる増税。

 だから一刻も早く上げたいのです。8%、10%の次は、
毎年10%ずつ上げていくのが良い。伊藤隆敏氏の言葉です。

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