憲法13条、及び憲法25条にはなんと書かれているか?(大飯原発とともに民主主義が死ぬ その4)

 大飯原発3、4号機を巡る運転差し止め訴訟での福井地裁の樋口英明裁判長は判決要旨の「はじめに」でこう述べます。

≪ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には、その被害の大きさ、程度に応じた安全性と高度の信頼性が求められて然るべきである。このことは、当然の社会的要請であるとともに、生存を基礎とする人格権が公法、私法を間わず、すべての法分野において、最高の価値を持つとされている以上、本件訴訟においてもよって立つべき解釈上の指針である。≫

 続き人格権を憲法に規定されているという趣旨でこう続けます。

≪個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、各人の人格に本質的なものであって、その総体が人格権であるということができる。人格権は憲法上の権利であり(13条、25条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない。したがって、この人格権とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは、人格権そのものに基づいて侵害行為の差止めを請求できることになる。人格権は各個人に由来するものであるが、その侵害形態が多数人の人格権を同時に侵害する性質を有するとき、その差止めの要請が強く働くのは理の当然である。≫

 最後は「理の当然」とまで言い切ります。憲法13条とは、

“すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 ”

 とあります。樋口英明が唱える憲法上の権利とありますが、最初の一文まではその通りとしても、続く一文において個人の幸福権は制約される旨も記されています。

 一般的なルールにおいて、先に書かれている条文が優先されます。直前の憲法12条はこうです。

“この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。”

 素人の解釈で申し訳ないのですが、裁判長とやらの樋口英明が

『生存を基礎とする人格権が公法、私法を間わず、すべての法分野において、最高の価値を持つとされている』

 としていますが、彼の引用する13条と、その前にある12条を見る限り「公共の福祉」のほうが優先されるべきでしょう。マイケル・サンデルの屁理屈、もとい「限定された異常な状況設定における机上の空論」ならともかく、多数の命を守るために少数が犠牲になるのは生物界の基本原則であり、民主主義などその最たるものです。

 多数決の結果、人類が自滅しても、それが集団の意志である以上従うことになるのは、本件の大本である、東日本大震災においてペテン師菅直人をリーダーに戴いていた日本国民がすでに経験したことです。

 だから憲法でも「公共の福祉」が繰り返し述べられている・・と、普通の読解力があれば解釈できます。

 原発停止の判決を下した樋口英明裁判長は、さらに不思議な憲法観を開陳します。憲法25条です。

“第二十五条  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
○2  国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。 ”

 これをもって、原発が稼働すれば事故が起きるという前提で、健康で文化的な生活ができなくなると結論へ導くわけですが、同2項では「福祉」においての国の努力を促しています。

 また樋口が指摘する

『また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない。』

 しかし、憲法12条で公共の福祉のための利用を定めており、彼の挙げる13条でも制限を加えており、これらの制限をみれば、超える価値があることは自明です。

 都合良く憲法を解釈しているとしか思えません。
 裁判官の裁量により憲法を解釈できるということです。

 裁判所の常識は非常識とはよくいったモノです。
 問題を指摘されながらも、裁判員制度が導入された理由は裁判官の異常さによります。

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