お世話になりました。というと生々しいかも知れませんが、
見聞きした名前の女優さんが沢山登場しました。
といっても初出が91年から96年までですので、大半は知らない
のですが。
永沢光雄さんの名を世に出した一冊の文庫版。
650頁を越える読みでのある作品です。
AV女優へのインタビュー集です。
濃密な人生がさらっと綴られているのが永沢さんの持ち味なの
ですが、同時に彼の文章からふっと取材者の人生が映像となって
体の中を通過していきます。
透明なガラス瓶に水を入れ、桜色の水性絵の具を垂らすと、
すぅっと落ちて水はさほど濁らず、溶けだしてわずかな分だけ濁
り、しばらくするともとの透明の瓶に感じるようになります。
次は水色。
子供が水たまりを描くときに使うような水色を垂らします。
黄色。
足腰が立たなくなるまでヤルと本当に太陽は黄色くなるのでしょ
うか。
肌色、浅黄、橙、萌葱。
透明だったガラス瓶は、向こうが見えなくなるほど濁り、
瓶の底にはシュールレアリスムの出来損ないが誕生します。
さらっと、軽やかに描かれる「女の子」たちの人生を読み
すすめているうちにそんな錯覚に襲われました。
性的虐待。家庭不和、出生の秘密などなど。
普通に書けば重くて辛すぎます。そして遠ざけて蓋をして、
「AV女優」
というレッテルを貼り、間抜けな男たちは彼女たちの痴態と
裸体で一時の快楽を疑似体験してやり過ごすことでしょう。
しかし、そこに人がいて生きていて、選んだ人生もあれば
選べない人生がここにあります。
■AV女優
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