基本的にはリバタリアンなのでTPPは概念的には賛成です。
ただし、新聞全紙が「賛成」を論じるのは大政翼賛体制のように
不気味で、雑誌はもとより、ようやくテレビも「問題点」をあ
げはじめているのとは対照的です。
そして「今回」の「この状況」での、ましてや「TPP」には
反対・・・というか恐ろしくて賛成できないというのが私の立場です。
まず、そもそもこれがいけません。
「TPP=自由貿易」
幻想です。TPPとはTrans Pacific Partnershipの略称で
漢字を並べるとこう「環太平洋戦略的経済連携協定」。
かみ砕くと太平洋に面した国々での「戦略的な」経済に関する
取り決めで、もともとは
シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド
の4カ国。それぞれに申し訳ありませんが、いわゆる「小国」が
結束することで規模の経済=グローバル経済に抗する力を入手しよ
うというのが狙いです。そこに米国が旨そうだと絡んできて、
幾つか名乗りを上げた国もありましたが、現時点で
米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシア
と米国以外は小国が並びます。
まぁ分かりやすく言えば、米国を除いたTPPとは、零細企業の
協同組合や零細農家のあつまった農協のイメージ、あるいは地域で
共同購入する生協のようなものです。
小国でも肩を寄せ合うことで、一定以上の経済規模を持つのが
本旨でした。だから「戦略的な」と日本語訳され、
Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement
という表記もあります。
つまり、事の本質は「関税」ではないということです。
関税はその技術のひとつで、事実を矮小化させます。
だからTPP反対派が農業だけでなく、医療や法曹、そして
放送、労働者の受け入れなど、多くの問題があるとするのはあ
る意味本質的な警鐘ではあります。いささか感情的なのが気に
なりますが。
一方、賛成派は・・・これは妄想。あるいはファンタジー。
日経新聞に至っては洗脳と煽動です。酷い記事を見つけたの
紹介します。10月26日の朝刊「春秋(コラム)」。
東京裁判で日本の戦争責任は日清・日露にまでさかのぼると
迫る検事に、関東軍の参謀だった石原莞爾は
「それならペリーを呼べ」。
幕末の開国こそすべての始まりだというわけだ。※筆者要約
喝采をあげたい反撃です。そもそも東京裁判とは・・・とは
ここで拡げませんが、コラムでも石原莞爾を「昭和陸軍の鬼才」
と一定の評価をあげる・・・というか帝国陸軍だろうと、いう
突っ込みもここではすまい。つうか、戦後史感には突っ込みど
ころが満載です・・・のですが、ここから手のひらを返して
本音が垂れ流されます。曰く
「外からの圧力を陰謀のごとく受け止め、被害者意識にとらわ
るのは日本人の習い性かもしれない」
として、TPP警戒論を批判というより批難します。
この記者は脳内のお花畑が満開なのか、TPP推進派の
企業の札束が積み上げられているのかは存じませんが、この
程度の人間が日本を代表する経済誌の一面を飾るのですから
政治の無能を嘆いても虚しい話しかも知れません。
いいですか。これはテストにはでませんが、社会の常識です。
「外圧と陰謀は表裏一体」
なのです。陰謀という言葉が悪ければ「思惑」「利益」。
外国が思惑もメリットもなく他国に要求するなら最悪の内政
干渉で主権国家の根本を揺るがせます。そんなことはできない
ので「陰謀」を絡めてくるのです。これを「外交」と呼びます。
陰謀と思惑はカードの表と裏で、日米同盟ですら中国から見れば
陰謀そのものですからね。対中牽制の。
どうしても切り離せないので歴史に触れれば「日露戦争」は
日本国(もちろん、大日本帝国)の存亡をかけた戦いで、これ
を否定する東京裁判の検事は、日本国の存在を否定するため
に水を向けたものであることは明白です。大東亜戦争どころか、
それ以前の日本が独立国たらんとおこなった戦争まで否定して
いるのですから。
一点、この脳内フラワーな記者の鋭い指摘があります。
“被害者意識”
です。そう、大東亜戦争に至る過程もそのままですが、外圧は
常に日本に被害をもたらしていた事実は教科書で倣った
「不平等条約」
をあげるまでもないでしょう。
一国孤立主義を掲げるつもりはありませんが、TPP賛成の
旗振り役にはこうした無茶な主張が多いのです。
TPPに陰謀がないわけがありません。一説によれば米国
国内はそれほど熱心ではなく、来年の大統領選挙に黄色信号が
灯ったオバマの保身のためだとも言われています。
そんなTPPに「今回」、無理して加盟する理由が見つかりま
せん。一番分かりやすいのは関税がゼロになっても、史上空前の
円高で、さらに円高・・・というかドル安が進むという状況で
日本経済にプラスに働くとは考えられないからです。
議論が散逸するのでさわりに留めますが、TPP締結で関税が
撤廃され、そこに円高となれば、海外で生産した自動車を日本で
販売しはじめることでしょう。となれば国内の雇用が激減するの
は当たり前で、日産がすでにマーチを水害に苦しむタイで製造し
て逆輸入しているようにです。
議論をすすめます。「この状況」。端的述べれば民主党政権
だから。自民党だったらという主張ではなく、いまの民主党に
国家100年の計を任せることが・・・あなたはできます?
そこに日本固有の事情もあり、以下の4点からTPPに
反対するのです。
・交渉力がない
・継続性がない
・国家戦略がない
・国家観がない
ないないづくしです。交渉力のなさは昭和初期からの課題で
いまに始まったことではありませんが、民主党政権でさらに
低下しております。
例えば牛肉の月齢制限の拡大、廃止などはTPPと絡めて
交渉のカードにすべきものを「お土産」とばかりに早々に捨て
ているのです。こんな馬鹿な外交はありません。TPP参加の
是非の国内議論をまとめるための時間稼ぎにも使いません。
これで老獪な国際舞台で、日本に有利な交渉ができるわけがな
く、TPP推