AKB48「総選挙」における7万人の興行と報道

 豪雨のなか、AKB48総選挙の発表のために、味スタに終結したファンの数は約7万人・・・と報じられました。

 さて、本当はどれだけの人数が集まったのでしょうか。
 そしてAKB48の影響力とはどの程度のものか。

 こき下ろすことが目的ではありません。公開されている情報を集めるだけで、マスコミの嘘を見破れるちょうど良いケーススタディとして取り上げます。

 基本的にはヤワネタですが、喧伝される情報に覚えた違和感を解説します。

 はじめに断っておきますが、オジサンのわたしは、若い女性がはしゃぐ姿に不快感を覚えることはありません。“トウ”がたった、いわば淑女の入口に達した女性の素足に、眉根を寄せることはあっても、目くじら立てるほど了見は狭くありません。

 また“素足”と明記するのは、女性の脚は「生肉」「生魚」「生野菜」といった食べ物という認識ではないからです。最近ではアナウンサーという言葉を操る職業の連中まで、女性の脚を食べ物と勘違いしているようで嘆かわしい限りです。田嶋陽子先生は、こういう所にこそ噛みついて欲しいものです。

 余談ついでに言えば、総選挙で1位に輝いた渡辺麻友(わたなべまゆ)さんをみて目を細めるのは、キャンディーズの蘭ちゃんに似ているからですが、わたしはピンクレディー派で、ミーちゃんファンでした。

 スポーツ紙やワイドショーが、AKB48の総選挙を騒ぐのは仕方がありません。そういう層を相手にしており、先日の「日本ダービー」を予想した某スポーツ新聞の一面は、大人AKBの誰それというご婦人の予想が飾っていました。

 本業に近い、競馬予想ですら、素人の意見を尋ね、それで一面を飾るスポーツ紙読者の層がわかるというものです。新聞は購入したものではなく、読売新聞の代わりに「誤配」され、返品を申し出るとお読みくださいと、進呈されたものですから文句はいいません。

 いうなれば、日経新聞がその年のトレンドを「今宮えびす」で1位に輝いた「福男」に占わせるようなもので、一般の新聞が国政選挙の勝敗予測を、政治の素人に尋ねるようなもの・・・って、こちらは読売新聞が、以前、漫画家の「倉田真由美」に訊ねていたことを思い出したので、もはやそういうレベルなのでしょう。

 それでは本題。AKB48の総選挙とやらの発表会場に集まった

「約7万人」

 です。読売新聞は主筆とメンバーが対談し、巨人軍をAKB48が応援するなど「親密」な両者。さらに地上波でテレビ中継を垂れ流したフジテレビと関係深い産経新聞も同様に「約7万人」と報じます。それどころか産経新聞は、翌日の一面を割いて報じていました(電子版)。

 そしてそこまでの興味も執着もないので、ネット情報を転載しますが、「総選挙」の翌日の、

「まゆゆ(渡辺麻友のあだ名)、1位」

 を一面で報じたスポーツ紙はなかったのこと。

 前年に、指原莉乃さんが1位と報じられたときは、各紙が報じたことの対極というより、時代に敏感なスポーツ紙の機動性は、AKB48総選挙というイベントのニュースバリューを、昨年より低く見積もっているか、昨年の一面掲載を反省しているかのどちらか、その両方です。

 各所で報じられる7万人を不信に思ったのは「味スタ」と聞いたからです。味の素スタジアムを、東京FCのホームグラウンドと連想するサッカーファンにとって、7万人とは違和感をもつ数字です。

 というのは、ワールドカップの準決勝クラスになると、スタジアムのレギュレーションは6万人となり、首都圏でこれを満たすのは7万人の日産スタジアム(横浜)と、6万人の埼玉スタジアム(浦和美園)です。

 これがサッカーの聖地とされた「国立」が2002年大会で会場に選ばれなかった理由のひとつといわれていました。ウィキペディアによれば、屋根の問題だけが挙げられていますが、首都圏で3箇所の会場をもてば、「日本全国津々浦々」で開催する試合数が減ることから、自動的に候補から外されたと、当時の報道ベースでは伝えられていました。

 2002年当時、サッカーはいまほど「メジャー」ではなく、日本サッカー協会は、ワールドカップを期に、全国に芽吹いたサッカーの芽を、しっかり根付かせるために「全国」にこだわったことは、特筆しておくべきでしょう。・・・と、本旨からずれてまで明記するのは、ワールドカップを目前にしてアドレナリンが高まっているからです。

 ついでにいえば、2002年の熱狂が醒めた翌年から翌々年と、日本代表の親善試合は空席が目立ち、危機的とも言える状況だったと添えておきます。わたしは間もなく20年来となる「にわかサッカーファン」ですが、弱くても強くても、批判しながら応援し続けております。もちろん、今回も。やや批判強めで。

 話を戻せば「味スタに7万人ははいらない」という直感です。

 そして調べ、先週ブログに書きましたので、一部加筆して紹介します。

“公式ホームページにある味スタの収容人数は49,970席。ちらっとみたAKB48の設営状況からみて、観客席の裏側までは使わないかと思いきや、「音席」というのがあるとは、彼女らのパチンコ台から得た情報。

「音席」とはステージを見ることができないが、臨場感だけ味わいたいというファン向けの席。彼女らのステージって、口パクのCD再生なので・・・ま、少しでも側にいたいというファン心理をついた阿漕な商売です。

 グラウンドをアリーナ席として収容するとします。グーグルショッピングにみつけた折りたたみ椅子のサイズが、W42.5cm×D45.9cmでした。奥行きに立ち位置スペースをギリギリ30.0cmと取ると75.9cm。これで味スタの天然芝(107×71m)部分の約7,600㎡を割ると23595席。

 単純計算で73565席。フジテレビがラテ欄で伝える

「天候不順最悪中止も危ぶまれる中、少女たちの人生が変わる瞬間を見届ける7万人の会場」

 という数字は達成できます。ただし、これはサッカーのピッチ上に、一切の隙間なく、非常時の通路も設置せずにの数字で、もちろんステージ設営スペースは含んでいません。”

 その後、繰り返される当日の映像を見ると、ステージ裏の観客席はどうやら使われていないようです。セキュリティを考えれば当然です。会場内に確実な「安全圏」を作り、外部に接続=避難路を用意させるということです。

 ブログで記した試算は机上の空論です。サッカーのピッチ上に隙間なく観客席を配置すれば、消防法にひっかかることでしょう。

 などという計算が虚しくなりますが、やはり事件は現場で起きているということを「ネット検索」で確認します。

「入場予想者は52,000人です」

 2ちゃんねるのまとめサイトに見つけた写真で、京王線の駅長名義で張りだされた臨時便の時刻表に添えられていました。

■【悲報】AKBの動員捏造が公共機関にばらされるwwwwwwwwwwwww【5万→7万】
http://bakankokunews.blog.fc2.com/blog-entry-2623.html

 2012年に首相官邸前(民主党政権)で、行われた脱原発において警察発表1万7千人を、「20万人」という主催者発表を垂れ流したことに比べれば可愛いものですが、5万人を7万人とは20%の割増しは、虚偽どころか詐欺のレベルです。

 先の読売新聞も産経新聞も、そしてワイドショーも「約7万人」と「約」をつけたからと免罪される誤差ではありません。

 5万人でも立派な動員数ですし、京王線が臨時便を出すほどのイベントなので、水増しする必要もないのですが、いや、その水増しにちらりと真実が見えてくるのを怖れているのかもしれません。

 ちなみに脱原発のデモに20万人が本当にいたとすれば、駒沢大学あたりまで更新の列は続き、「報道特番」がなされても不思議ではないと指摘したブログはこちら。

デモ 20万人という数字

 ワイドショーのダイジェストを、ザッピングしながら見ただけなので、雑な確認にはなりますが、先の「AKB48ノコギリ殺人未遂事件(哲学者 適菜収 命名)」での被害者がふたりは、入場行進の際に「欠席」と会場でアナウンスされます。

 そのうちのひとりは、順位が発表されると「電話」で出演しました。たしか「欠席」ではあります。ところが、もうひとり、「選抜」と呼ばれる、いわば「一軍」の最下位に選出されると、

「な、なんと」

 本人が怪我を押して登場するではありませんか(笑)。

 いったいAKB48所属タレントのスケジュール管理はどうなっているのでしょうか。その女の子の、自宅がどこにあるか存じませんし、興味もありませんが、暴漢に襲われたタレントの行動を放置しているとは、なんと残酷な事務所でしょうか。ウィキペディアではAKS所属とあり、AKSとはAKBグループの運営会社です。

 ま、茶番と言えば茶番。同じく「男遊びばれちゃって丸坊主謝罪事件」で、スキャンダルを報じられ、失意のタレントが、結果的には髪を切るためとはいえ、刃物を持っても止めないのがAKB48流と考えれば、というより「恋愛禁止」と設定しながら、その管理もできないのですからさもありなん。

 むしろ、欠席を貫いた、もうひとりのお嬢さんの心の傷の深さが気になるところです。親戚のオジサンのような感覚で。

 しかし、別の報道によれば、この「選抜」に選ばれた16人中、けが人と、「公式ライバル」から選ばれたひとりを除いた、14人で、その日のリハーサルで群舞の練習をしていとあり、順位の発表はその瞬間まで、誰も知らないという設定も破綻しています。

 もちろん、茶番も興行。それを望む客がいて、需要と供給が満たされることに異論はありません。しかし、やらせなし、本気というニュアンスで繰り返される「ガチ」という設定は、端からボロがでているのであれば、「報道」はそれを間引いて報じなければ、虚偽報道と同レベルです。

 あえて「AKB問題」とするなら、その本質は報道する側の姿勢にあります。

 総選挙に投票するには、対象のCDを購入しなければなりません。お気に入りのタレント(推しメン)を上位に押し上げるために、ファンの間で複数枚購入は当たり前で、週刊文春によれば、ひとりのタレントのために年間予算900万円使うファンもいると言います。

 今回の対象CDは、入荷日初日だけで146.2万枚が売れたと大々的に報じられました。オリコン発表によれば、初週の売上が166.2万枚で、一週間の残り6日間が20万枚で、スタートダッシュのすさまじさを物語ります。

 同じくオリコンによる翌週の売上は、推定値として62802枚。ニュースとして報じる際には「確報」のように触れ、データとしての発表は「推定値」と注釈をつけるあたり、

「オリコンらしさ」

 といえますが、千枚単位で集計した合計は172.4万枚です。

 気になるのは投票総数ですが、「クラウドWatch」というネット系の情報サイトですぐに見つかりました。投票はネットで行われ、CDに添付されたシリアルナンバーを入力します。百万単位の投票を支えるシステムとなれば、宣伝効果は爆発的で、嬉々として手柄を公開していました。

「268万9427票」

 ・・・CDの売上総数は172.4万枚です。
 96.5万票の開きがあります。

 調べてみると、AKB48グループには数多くの「ファンクラブ」があり、その会員も投票できるとのことです。この会員の総数は、調べても見つからなかったのですが、「年会費が480円」と破格値だという記事を、2012年の日経新聞に見つけました。月額40円です。

 1票を投じるだけなら、CDを購入する必要がないということです。AKB48の音楽のファンで、純粋にCDが欲しければ、発売からしばらくもせず、ヤフオクやアマゾンのマーケットプレイスで「1円」で出品されるのは常識ですが、これは余談。

 さて、そのファンクラブの他にも「投票権」はありました。以下、面倒なのでコピペを雑に貼ります。

AKB48公式ファンクラブ「二本柱の会」会員
AKB48 Mobile会員
AKB48 公式スマートフォンアプリ会員
AKB48 LIVE!! ON DEMAND月額見放題会員
AKB OFFICIAL NET会員
SKE48 Mobile会員
SKE48 LIVE!! ON DEMAND月額見放題会員
NMB48 Mobile会員
NMB48 LIVE!! ON DEMAND月額見放題会員
HKT48 Mobile会員
HKT48 LIVE!! ON DEMAND月額見放題会員

 数を数えるのが面倒でしょうから、添えておきますと11種類です。これにCD購入が加わります。

 商売が巧いなぁと唸ったのは、Mobile会員は月額324円で、ライブは3066円で見放題、公演あたりの単品なら540円からと集金します。

 雑だなぁと呆れたのは、

「AKB OFFICIAL NET会員」

 をクリックした先にあったバナー広告がこうだったから。

“AKB48 全国ツアー 2012 野中美里、動く。
 〜47 都道府県で会いましょう〜”

 詳細情報はこちらとあったので、クリックした先には

“AKB48全国ツアー2013”

 とあります。今年は2014年です。ワールドカップがあるので間違いありません。ここに運営側の「本気度」が透けて見えます。

 さらにこの野中美郷をウィキペディアで調べてみると、

“2014年4月22日、AKB48劇場で卒業公演を実施し、AKB48を卒業。
2014年5月31日、この日をもってプロダクション尾木との契約終了、芸能界を引退”

 とあり、引き続き、9月のイベントには出席する旨がありましたが、引退を表明したタレントを「オフィシャルネット」に放置する理由にはなりません。まるで、在庫切れまで「検索結果」に表示する「楽天市場」のようです。

 兎にも角にも、総選挙に投票できるのはCD購入者だけではないということです。

 ここに「ブラックボックス」が生まれます。

 運営側は「集計は第三者機関にて行い、弁護士が開票立会人として監視の下、不正投票がないか確認。集計結果は第三者機関のみで厳重に管理」と、動画にて発表しています。

 第三者機関とは先の投票を管理していたシステム屋のこと。

 ニヤリと言うか呆れます。

 サーバで集計したデータを処理する際、どうやって弁護士が監視するのでしょうか。それは「眺めている」に過ぎません。なぜならビット情報だからです。

 仮に確認できるとすれば、集計プログラムのアルゴリズムを頭に入れ、稼働しているプログラムをソースレベルで確認し、いくつかのサンプルデータを入力し、不正がないことを確認するしかありません。

 また、完全なる公正を期すなら、数千単位で実際のデータを抽出し、それらが正しく集計されているかを追跡調査して、立証しなければなりません。弁護士がそこまでの専門性と、時間を持っているとは思えません。

 サーバ側が不正を働いていると指摘しているわけではありません。しかし、そもそも「インプット」が不透明なら、公平性は確保されていないということで、いわば住民基本台帳の総数が公表されていない総選挙です。

 それは「公平な選挙」と呼べません。ま、興行ですが。

 昭和時代から疑惑の多い、CDの出荷数まであげれば切りがありませんが、プロダクションや関係者により「買い上げ(事務所買い、所属タレントのCDやグッズを市場から購入することで、人気があると見せかける手法)」という業界の慣習を考慮すれば、「公平な選挙」とは舞台装置や、キャッチフレーズに過ぎない可能性が浮かんで消えません。

 そしてCDをアマゾンでチェックすると「○○版」と確認できたのだけで、16パターンありました。間違い探しのようで、間違えていたらごめんなさいですが、微妙にパッケージ写真が異なります。

 CDをすべて「ファン」が購入したとして、そのファンがすべてのパターンを買えば一人当たり16枚となります。この数字を元に、172.4万枚という売上から購入人数を割れば、10万7750人となります。

 ファンの全てが16パターン買うという設定は、暴論ではありますが、先の週刊文春に登場したファンは、指原莉乃氏に4600票を投じており、また一人当たり20枚も30枚も購入するという話しは多く、あながち遠くない数字ではないでしょうか。

 するとAKBのファンは10万人規模ということになります。

 これでもすごいとは思いますが、フジテレビが喧伝するような「国民的行事」に認定するなら、いささか物足りない数字です。

 実はAKB48グループは「視聴率」をあまり持っていません。週間ランキングにはいるのは、一年を通じても、せいぜいこの「総選挙」ぐらいで、冠番組も深夜枠に集中します。

 オタクというファン層を考えれば、深夜枠のチョイスは間違いではありませんが、それはゴールデンタイムでは通じていないということの裏返しです。

 彼女たちをテレビで良く見かける、と反論するかも知れませんが、彼女たちがもっとも多く出演しているのは

「ワイドショーの芸能ニュース」

 で、内容は出演するCMやイベントの告知です。予算が削られるテレビ行かにおいて、告知によるタレントの露出は「ノーギャラ」で、放送枠を埋められる魅力的な素材なのです。むろん、テレビ局の都合だけで、視聴者の望みはそこにありませんが、AKB48グループはこの「露出」により知名度を高めました。

 そしてなにより、今年の「総選挙」の視聴率が彼女らの人気を語ります。メインの放送時間が16.2%で、昨年の20.3%はもとより、一昨年、水曜日の夜という平日に放送された総選挙の18.7%も下回っています。例のノコギリ事件がありながら、数字は伸びなかったのです。

 そもそも昨年の総選挙は、7万人が収容できる日産スタジアムで開催しています。日時も昨年が6月8日で、今年が6月7日で同じく土曜日です。

 会場はその他の都合もあるので、抑えるのは簡単ではありませんが、人気に自信があるのなら、7万人規模と同程度かそれ以上の会場を選ばなかったのはなぜでしょう。

 ちなみにその日の日産スタジアムは

“かんぽ生命 presents
第2回日産スタジアムランニング合コン
第2回日産スタジアム5時間耐久リレーマラソン”

 あの荒天の中、開催されたとすれば、本当に「耐久」となったことでしょう。

 所詮、興行ですし、舞台裏を暴露するのは下品な話しです。しかし、あえてこのネタを取り上げたのは、

「報道と興行を混濁している」

 から。

 しかもちょっと調べればすぐに「露呈」するほどの底の浅さ。テレビ離れや、新聞離れの一因はここにもあります。

 実は今に始まったことではありません。AKB48の快進撃が報じられ一昨年、彼女らがイメージキャラクターを務め、特製パッケージまで発売したお菓子「ぷっちょ」が、大量に投げ売りされている事実がありました。

 いまの「妖怪ウォッチ」とは正反対の現象です。

 神奈川県県庁が県知事を筆頭に振り付きで踊り狂うという、AKB48の「仕掛け」がありました。しかし、動画に投稿されると報じられながらも、それを身近に感じることはありませんでした。

 端的に言えば本当のブームではないからです。

 しかし、いま、お子さんがいる世帯では、いま「妖怪ウォッチ体操」がヘビーローテーションで繰り返されていることでしょう。それが本当のブームです。

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