正しいことをするために偉くなってください

 相撲とはなんぞや? これについての結論は以前の「八百長騒動」
や「薬物問題」のときにだし、以来、とりあげていません。

初めての方と、お忘れのかたむけに結論を繰り返し述べます。

「興行」

つまりはプロレスはサーカス、サルティンバンコ(シルクドソレイユ)
と同じ箱にいれています。

だから「八百長」という議論はナンセンスという立場。
現代風に述べれば「ショー」なのですから、勝敗にやかましくなる
のは野暮というもので、場所ごとの空気や客のリクエストによって
きまるのは当然だということです。

これに対して「真剣勝負」という声もありますが、それならば
「プロレス」も真剣勝負です。真剣に技を繰り出し、受けて、
肉体の限界に挑み、ファンはその「超人」ぶりを喝采します。

さらに「力士は命がけ」などという珍妙な主張もありますが、
三沢光晴選手の悲劇を挙げるまでもなく、プロレスラーも命がけで
リングに上がり、綱を渡るクラウンは死の恐怖を仮面で隠して、
陽気を演じます。

興行が真剣勝負であり命がけであるのは相撲だけではないという
ことで、軽んじるのではなく、格闘技や競技スポーツとは軸足が
異なるということです。

そして「伝統や格式」が破壊されていることは衆目認めるとこ
ろでしょう。朝青龍が「綱」を神様の証からチャンピオンベルト
にし、それを「よし」としたときに神事から連なるという建前は
終焉を迎えたのです。

だから「興行」。すると、今回の理事選挙に絡む「造反投票」は
見事な演出です。まるでプロレスです。社の方針に反旗を翻して
新団体を設立するかのようでワクワクしてみています。

造反投票とは日本相撲協会の理事選挙で安治川親方(本名 峯山賢一)
が所属する立浪一門の候補者ではなく貴乃花親方(本名 花田光司)
に投票したことです。

日本相撲協会は「一門」というグループに分かれており、それは
最盛期の自民党の派閥のようにあめとむちで統率されています。
そして一門の結束は師弟関係と同様に固くなければならず、一門の
決定を裏切った安治川親方はいわば「うらぎりもの」というわけ
です。

理事選挙は「無記名投票」で、いわば民主的手続きに則った
正当な選挙で、そして貴乃花親方は理事の一人に選ばれました。

安治川親方は「相撲界のため」を思い貴乃花親方に投じました。

選挙後、一門の反省会という名前の「犯人捜し」により、
安治川親方はゲロし、一同の激しい糾弾から辞職を申し出たのです。

正当な選挙を経ての結果に不満を持ち、裏切り者捜しをするとは
どんな発展途上の独裁国家かと・・・思うのは学級会の話しです。

だって「興行」。つまりはこういうこと。

株式会社 大日本大相撲興行では2年に一回、役員を社内選挙と
いう手続きを経て選任します。社内には「一門」と呼ばれる、
「カンパニー制度」が存在し、カンパニーの規模により暗黙の割り
当てがあり、過去4回は無投票で選任されていました。

かつては国民的注目と尊敬を集め、平成に入ってからも「ハワイ」
「若貴」「モンゴル」とヒット商品を飛ばしていましたが、その
モンゴルから不良品がでるも自主回収できず、同時に薬物混入や
品質管理を告発する記事が週刊誌賑わすなどスキャンダルが続き、
業績は下降線をみせ好みの多様化から「客離れ」も深刻です。

そこでかつて「若貴」で記録した伝説のセールスマンで今は
ひとつの課を束ねる「貴乃花親方」が改革を訴え、カンパニーを
割り役員選挙に出馬しました。

彼を支持する声もありましたが、圧倒的少数派で当選は難しいと
みられていましたが、別のカンパニーから「裏切り者」がでて奇跡が
おきました。

カンパニーから出馬する理事は、会社の利益のために働きま
すが、同時にカンパニーの利益を守ります。カンパニー側の
主張に耳を貸せば、仲間の利益を守るためにもカンパニーの結束は
何よりも守らなければならないのです。

そして「犯人捜し」を止めることはできません。なぜなら
役員会議ではなくカンパニーの「身内の会合」ですから、
これを止めることは憲法に定められた「集会の自由」に抵触する
怖れすらあります。

犯人がゲロして事実上の追放・・・自主退職へと追い込まれた。

そんな卑怯な。しかし、ある程度おおきくなった会社なら
大なり小なり耳にする話しです。大人の世界はきれい事だけで
動きません。それがイヤなら組織を離れるしかありません。

で、ここからが本題。問題は日本相撲協会が「財団法人」と
いう公益法人であること。税法上の特典を受けています。

つまり、いち民間企業がその企業内統治において「犯人捜し」
をしているのではなく、公(おおやけ)に益するための組織団体が、
私的な集団である一門の論理で動かそうとしていることです。

一門あっての大相撲。

という主張も分かります。だからいうのです。

「株式会社にしなさい」と。

公益法人でなく、民間企業ならどうぞご自由にという話し。

一門の利益とは私的利益と同義です。一門の発展が大相撲の
発展というのは論理のすり替えです。なぜなら、一門はひとつ
ではなく、他の一門が担えばよいだけのことです。

さらにここで「調和」を持ち出し、一門の共存共栄を口にす
るなら語るに落ちるとはこのことでしょう。

それを「馴れ合い」と呼び、業界の体質が取り組みにだけ
反映されないというのは・・・ファンタジーです。

親方衆(上司や幹部)が理事選挙で「出来レース」をして、
痛い思いをする現場の力士に「するな」と指導するのは間尺に
合いません。

日本相撲協会は財団法人を返上し、株式会社にします。

年寄株をリアルに「株式」にします。そうすれば理事選挙
は「プロキシーファイト」です。裏金を使おうが恫喝しようが
自由自在。

タダ問題は残ります。「朝青龍」というヒット商品について。
暴行事件は刑事犯。民間企業なら社長の責任問題になることも。

貴乃花親方に投じた安治川親方の姿にドラマ「踊る大捜査線」
で室井管理官に託した青島刑事の言葉が重なります。

「正しいことをするために偉くなってください」

残念ながら安治川親方は「借り株」のため、相撲界での
身分は不安定で、あるいは2年後に「投票権」がない可能性も
あり「正しいこと(彼が思う)」するためにはこのチャンスしか
なかったのかもしれません。
 

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