福島県民も日本人です。テロリストではありません

 もう4年、まだ4年。東日本大震災から4年です。

 震災が近づくと騒ぎ出す、テレビメディアには呆れますが、被災地にとっては「忘れていないよ」というメッセージになるという話しもあり、ならば仕方がないかなぁとも。

 一方で原発事故を理由とする、風評被害を生み出し続けているのもメディアであり、「美味しんぼ鼻血ブー」事件は昨年のこと。

 漫画もメディアの一種です。娯楽のためのフィクションと片付けられないのは、脱原発、反原発メディアが真実であるかのような内容であり、原作者本人が事実と語り、風評を拡大再生産しています。

 原作者の雁屋哲氏は、週刊誌ベースでの当該連載が終わったら反論すると勇ましくも、連載が終わったら沈黙を守り、今年に入って「反論本」をだしましたが、連載していた小学館ではなく遊幻舎。

 当初、「嫌韓流」などを発刊している晋遊舎かと空目(空耳から転じた見間違いを意味する)していましたが、出版コードから分かった情報から、どうやら雁屋哲氏の個人出版社のようで、もともと連載していた小学館は「逃げた」のか、それとも「降りた」のか興味深いところです。

 最初からフィクションとしていれば、逃げ場などいくらでもありましたし、なにより雁屋哲氏の思想信条からの「活動」に役だったことでしょうに。フィクション(物語)に作者のメッセージを込めるのは、漫画原作でも小説でも当たり前のこと。そうならなかったのは不幸中の幸いといえます。

 とはいえ、油断も隙もありません。私のように30年以上も原発を怖がっていれば、恐怖心との折り合いのつけようもあるのですが、福島第一原発の事故で、

「はじめて知った」

 とのたまうオジサンにオバサン、ろくに原子力を学ばずに社会人となった優等生にとっては、

「目に見えない」

 というだけで怖がる様は、ラップ現象やポルターガイストを物理学的事実として語るオカルト番組の出演者と同レベルです。

 放射線や放射性物質を「見えない」と恐怖する人たちは、正反対の「安全」も「見えない」ことに言及しません。

 放射能を適切に怖がることは大切ですが、一方の見方からの感情論も、井戸端会議ならともかく、公共の電波が拡散し、それが風評被害を生み出している状況は、震災から4年が経ったいまも変わりません。

 先週末の読売テレビ「ウェイクアップぷらす」も震災特集で、原発問題取材班のキャップと紹介された小林史記者は、「トリチウム水」について、海外の原発では海に流していると語りながらも、福島については

「事故を起こした原発のトリチウム水」

 を海に放出することへ懸念を表明します。

 なんと非科学的な。しかし、これが本音であり、取材方針なのでしょう。いわゆる「馬脚」です。

 議論の対象となるべき「トリチウム水」とは、各種放射性物質を除去した後に、除去しきれず残る「トリチウム」を含んだ水=汚染水ですが、その「トリチウム水」は自然界に存在します。

 そして世界中の原発で放出し、福島でも検討されているのは、自然界に存在するレベルまで希釈した汚染水です。

 トリチウムも生物への影響がありますが、これもレントゲンやCTにおける被爆と同じく、量の問題です。

 「東電と政府の発表が信用できない」という出発点から、トリチウム水を反対するのなら論理的辻褄はあいますが、はたしてそれは公共の電波に乗せることのできる情報でしょうか。政府相手でも批判の刃は怯まない、というのなら立派ですが、その出発点に立つことを「明示」しなければアンフェアです。

 また、その方向性なら独自の水質調査や、情報公開請求など取材対象や方法が変わってきますが、そこに触れず、いわば「感覚=思いこみ」だけでの情報発信が「風評」を生み出していることへの自覚がないので反省もありません。

 ウィキペディア情報ですが、小林史記者は、私の一学年下ということは、スリーマイルやチェリノブイリは情報としては経験済みで、米ソ冷戦はものごころがついた頃なら継続中で、芸能からは忌野清志郎があり、なんでもノストラダムスに結びつけて恐怖した経験がないのでしょうか。

 後半は個人差があるとはいえ、教科書には第五福竜丸があり、8月6日と9日は『ルックルックこんにちは』でさえも、原爆特集をしていた昭和の子供・・・って、子供はワイドショー見ませんかね。

 進まぬ復興。にメディアが果たす役割、すなわち引っ張る足の割合は決して少なくありません。

 私はそんな「福島産」の農産物を見つければ購入しています。といっても美味くなければ、二度目はなく、近所の市場祭りで購入した、福島産のお米はとても美味かったのですが、オマケに付いてきたふりかけは、不味かったので、こちらは二度と買いません。

 それは当然のことで、寄付なら寄付として現金を投じますし、福島産と福岡産が並んでいれば、一字違いの福島を選ぶとは言え、漁師も農家も、おもらいさんではなくプロ。

 そして、かなりの確率で福島産は美味い! とは私見ですが。

 もちろん茨城も岩手も。そもそも不味い食材は流通にのりにくいのです。食にこだわる日本市場では。だから、そっとしておけば、被災地の農業、漁業は、手当は必要としても、必ず復興します。

 ところが風評被害が復興を妨害します。油断と隙があれば、放射能への危険性を煽ります。そして放射能の危険から、被災地産食材への不安を拡散します。

 しかし、冷静に考えてください。私たちは日本人です。これが重要なキーワード。

 東電と政府への不信感だけなら理解できますが、流通している米や野菜の放射性物質の検査は、県や農協、漁協が行っており、仮に福島県と限定しても、福島県の県職員、農家、漁師のすべてがグルになって、

「汚染食材を日本に拡散」

 しているとでもいうのでしょうか。当然すぎる話ですが、福島県民も日本人です。偏狭なナショナリズムではなく、ごく一般的な日常感覚的な「日本人」として、汚染された農産物を出荷などしない、と私は「日本人」を信じています。

 それほど多くはありませんが、人生において知り合った福島県民で、命を脅かす食材を意識的に拡散しようというタイプの人に会ったことはありませんし、それは福島に限らず、「日本人」という括りに恥じない人ならば皆、同じでしょう。

 毒餃子の国ではないのです。

 日本人でありながら風評被害の拡大に加担している連中は、こう言っているのと同じです。

「福島県民は嘘つき、人殺し」

 冗談どころの話しではありません。あるいは放射性物質入りの食材を意図的に流通させているなら

「福島県民はテロリスト」

 となります。

 雁屋哲氏のような発想の人は、福島県民は騙されている、とでもいうのかもしれませんが、それは

「福島県民はバカ」

 と言っているのと同じです。嘘つきとバカとは、クソミソの話しで、いずれにせよ福島県民を見下した発想です。それでも思想信条と表現の自由を守る立場に変わりはありませんが、だから問いかけます。

 あんた日本人か。一般的な慣用句として。

 本稿執筆に当たり、調べ物をする過程で、ある「相談」の掲示板で、こんな投稿を発見しました。

『主人の両親や兄弟から被災地産の農産物が送られてきてイライラする。せめて放射性検査をしたものを送って欲しい。もともと自然食嗜好で、無農薬有機食品を取り寄せていた。子供が生まれ、より気をつけている』

 引用元を明示せず、要約としたのは著作権侵害ではなく、風評の拡散を控えるためです。だから地域もぼかしております。

 で、結局、この女が求めたのは、義父母からの農産物を捨てるための理論武装です。

 女は「放射能についてはひととおり勉強した」と記していますが、義父母の居住地は、ほとんど影響を受けていないエリアです。それでも被災地というだけで、イコール汚染と考えるのは自由ですが、わざわざネットに拡散しているのです。

 風評被害を拡散するのは、自分にだけやさしい人、とこの女の投稿を見て確信に至ります。

 放射能を必要以上に怖れることは、個人の自由ですが、それをわざわざ拡散するのは傲慢な親切心からで、それは黙って過ごすことへの良心の呵責から、自分だけが守られるため、すなわち「自分だけへの優しさ」です。

 つまり、あえて「放射脳」としますが、放射脳に汚染された脳みそから導き出される答えはひとつしかなく、自分は知っているが、政府や東電に騙されている連中は、真実を知らない哀れな羊たち。

 知っている以上、「教えて」あげなければ、知っていて伝えない罪を背負ってしまうことになり、それはイヤだなぁ。という自分への限りない優しさからの行動です。雁屋哲氏なんかも、このパターン。

 義父母からの農産物を怖れることを責めているのではありません。

 子供のためと思うなら、自らが悪役となり、義父母に農産物を断る申し入れもしなければ、黙って捨てながらも笑顔でお礼を述べる覚悟もないのに、「みんなの意見」から、自らに都合の良い箇所のみをピックアップして、結論とするうす汚い、自分にだけ優しい性格を批判しているのです。

 その姿はすべての「放射脳」に通じ、風評を拡散させる連中と同じです。

 別の質問では、子供が生まれた当初、赤子の大小のついた「おしめ」を、そのまま洗濯機で洗うか否かを質問しています。旦那は気にしないというのですから、それ以上の回答はありません。

 ところが、やはりというか「下洗い」という回答もあり、これに対して

『なんどか試したが大変だからやめた(要約)』

 と答えます。自分にだけ、優しい証拠です。

 最初の相談が

『出会い系サイトで出会った男性と交際しているが、私について何も質問してくれない。どうしてでしょうか』

 という三十代女性。全ての面で「こじらせ」ている可能性も否定しきれませんが、そんなも妄想系に、必死に復興のために汗を流す人の邪魔をさせてはなりません。

 NHKが今朝報じた消費者庁の調査で、いまだに17%が「福島産」の食品購入をためらうと回答しています。また、食品に対して放射性物質の検査をしていること知らないとの回答は24%あまり。

 これをわざわざ、震災のあった今朝、報道する必要性を感じません。むしろ「平時」に、誤解を解く報道こそをすべきではないでしょうか。

 放射能は見えません。しかし、福島県民なら見ることができます。そして彼らは日本人です。それだけで、信頼するには充分すぎる理由になります。

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