傑作です。と、ライバル誌「正論」に寄稿する身ながらも唸りました。惜しむらくは宮脇睦大先生の『ネットバスターズ』がない・・・コホン。
年末進行ということから、通常より6日早い発売ながら、そのハンデを感じさせないどころか、むしろスピード感に転嫁したかの紙面作りは脱帽です。
《希代の戦略 安倍晋三》
とは、「WiLL」時代からの安倍晋三応援団ではなく、安倍首相にもっとも深く食い込んでいると自他共に認める元TBS 山口敬之氏と、民進党キラーの産経新聞 阿比留瑠比論説委員の対談。
この二人の対談というだけで、いまの政治、安倍晋三を理解するには必読なのですが、なにより両者だから語れる「マスコミ」が生々しい。
山口敬之氏といえば、TBSワシントン支局時代の2015年。韓国軍がベトナム戦争時に慰安所を作っていたことを、米国の公文書から発掘し、それを報じようとしたら潰され、週刊文春にリポートを寄稿したら、記者職を解かれた人物。
事実を報じようという記者魂とはともかく、TBSを退社してから1年も経たずに安倍番としての頭角を現したことに、恥ずかしながら理由を存じなかったのですが、本誌で納得。
順序が逆。もとより安倍首相に近く、第2次政権発足で、出番かと勇んでいたらワシントンに「国外追放」にされたとのこと。さらに、いまもっとも安倍首相のコメントがとれる一人が、朝日新聞の曽我豪政治部長なのだが、日々の記事を書かせて貰えていないと暴露。
いわゆる「偏向」で、安倍憎しの色しか報道は出せず、一旦その方向が決まると、それに沿って報道されるので、あの
「あなたとは違うんです」
で晩節を汚し、立つ鳥を汚し、ある意味、自民党下野の決定打を放った福田康夫氏を官房長官時代に持ち上げたのは、安倍晋三氏との比較のためだったと両氏。
だから、エグい、質問をする阿比留瑠比記者を五度にわたり「阿比留を外せ」と新聞社に「圧力」をかけたとのこと。これらの「態度」は報道各社の知るところながら、一切報じなかったのは、安倍首相との「対比」のネタとして。なんだよ、ファクトすら報じていないじゃん。
是非、本書を手にして全文をお読みいただきたいのですが、これは安倍総理の人物像を理解する上で、なるほどの項なので引用します。
総理のスピーチライターを務めている谷口智彦内閣参与の言葉として阿比留瑠比氏が紹介します。
《「日本の近現代史は安倍総理にとっては他人事ではなく、自分の家族の歴史でもある」》
トランプ現象の決定版といっても過言ではないのが西尾幹二氏の
《世界の「韓国化」とトランプの逆襲》
韓国のメンタリティ「恨(ハン)」が世界に拡散されていることこそ、「世界トランプ化」を読み解くカギだとの論考に唸ります。
大づかみしている西尾論考を、さらに要約する無謀に挑むなら、「ホワイトギルド=恨」と重ねることで、韓国の主張にシンパシーを感じる白人が多く、それは建設的とは正反対の方向に進む。といった感じ。
ホワイトギルドとは「白人の罪」で、ポリティカル・コレクトネスのベースになる白人であることが罪という考え方。かつての黒人奴隷や植民地支配といった、白人の犯した罪の上に白人があるという逆差別ですが、「進歩的」な人は自らすすんで罪を受け入れなければならないという、キリスト教の一部をつまみ食いしたかの発想で、これまた中国や韓国が、日本に永遠に謝罪を求める精神性と見事に合致します。
「過去」しか見ない社会に「未来」は訪れないのですが、それがいま白人社会、欧米に訪れている現象であり、未来を求める健全な精神の消去法的選択肢が「トランプ」だったとみることもできます。
論考のなかでも紹介されている江崎道朗氏の書籍など、より深く知るためのヒントも散りばめられており、なにより驚いたのは各所で私が引用した、週刊新潮に寄せた山口真由氏のレポートを、西尾先生が読んでいたこと。読むんだ、新潮。
朴槿恵大統領を引きずりおろそうと続く「デモ」を称揚するのは、ジャーナリストの青木理氏ですが、彼曰く、日本の司法より韓国の方がすすんでいて、民意が直接反映されるデモが素晴らしい。とは、彼の発言を率直に解釈した意訳です。
そんな馬鹿なことはない。民主主義を理解していないのでしょう。街角での抗議活動で政治が動くなら、議会など不要ですし、Newsweekなど見ていると「失笑」レベルの記事が並びます。
主観が事実を上書きするのは小説家か漫画家か、いずれでもなければパヨクです。
《なぜ韓国人はああなのか》
で韓国人の気質をバッサリと切り取ってみせるのが筋金入りの韓国ウォッチャー黒田勝弘氏。「憲法でデモを奨励している」との指摘に目を疑います。
ギャンブル学の権威谷岡一郎氏の《嘘で塗り固めた「カジノ法案」反対論》は、紙幅の足り無さを歯噛みするかの熱量で必読。
最後に西村幸祐氏の《「百田尚樹」を排除するメディアの全体主義》も読み物。V6岡田准一主演「海賊と呼ばれた男」が、各所で取りあげられるなか、原作者で、なかばタレント化している百田尚樹氏が「封殺」されている事実を指摘。
危なくて使えないとは、それもまた偏向報道の賜。社会人ですから、TPOを踏まえて発言できることは、以前、バラエティ番組に出演したとき、ちゃんと「役割」を踏まえているところからも明らか。だって元は放送作家さんですからね。
■月刊Hanada 2017年2月号「2017年 日本の大問題」
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